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供託金制度よりも良い制度を考える

日本の選挙では売名や泡沫候補の乱立を阻止するために供託金制度が行われている。金額は出馬する選挙によって異なり、供託金没収点に達しない得票率の場合は全額没収となる。ただし、落選したとしても一定の票を得ていた場合は全額が返還される。

今年の都知事選でも供託金制度が実施され、56人中53人が供託金没収となった。

都知事選の供託金没収、総額1億5900万円 上位3人除く53人が対象で過去最高額に - 産経ニュース (sankei.com)


今回の選挙では、選挙ポスターに女性専用風俗の広告を載せていたような連中などが現れ、立候補者のモラルが問題視された。
このような候補者は最初から当選しようと思っていないのだろうし、彼らが供託金没収となるのは当然のことなのかもしれない。


だが、資本主義社会である日本は個人の財力に大きな差がある。
都知事選の場合、有効投票総数の10%を超えられなかった候補者は供託金の300万円が没収されてしまう。
ワーキングプアにとっての300万円と、数億円を自由に使えるような資産家にとっての300万円は金額の重みが全然違う。
現行の制度では、300万円などといった金額を余裕で払えるような資産家が売名目的で立候補したときに対応が出来ない。


そもそも、真面目に政治活動をしていて数万人や数十万人から支持を得ている候補者が供託金没収となってしまうのは民主主義として問題があるように思う。

自民党などといった有力政党がバックについていたり、政治家の経歴を既に有していたりする立候補者とかは兎も角、地盤(後援会組織)・看板(知名度)・鞄(資金)の三バンをまだ持っていない者にとって、選挙は基本的に地獄である。

大手メディアが選挙特番で重点的にとりあげるのは得てして有力政党がバックにいたり既に知名度があったりする候補者である。

三バンをまだ持っていない候補者こそ知名度や、自身の公約を知ってもらう機会をアップするために、大手メディアの露出を必要としているにもかかわらず、その大手メディアの力を利用しやすいのは「有力政党がバックにいたり既に知名度があったりする候補者」のほうであることが多い。

そのような逆境のなかで数万人や数十万人もの支持者を得るのは決して容易なことではない。


また、いわゆる泡沫候補が存在せず、どの立候補者も支持者が同程度だった選挙区があったとする。たとえば今回の都知事選で56人全員が同じ得票数だったと仮定すると一人当たり1.7857%しか得られない計算となる。
56人中36人が泡沫候補で0票と見なした場合でも、一人当たり5%しか得られない計算となり、泡沫でない所謂「まともな候補者」全員が有効投票総数の10%を下回る計算となる。

つまり、どの立候補者も支持者が同程度いて泡沫候補が皆無であるといった非常に理想的な選挙区があったとしても、立候補者が一定の数を超えると供託金制度が正常に機能しなくなってしまう。


以上の理由から、筆者は今の日本で実施されている供託金制度に懐疑的である。
選挙ポスターに女性専用風俗の広告を載せていたような輩などは確かになくしていかねばならないが、雑草という名前の植物が存在しないように、泡沫候補という名前の立候補者は存在しない。

売名目的の立候補者の規制は、諸外国で実施されているように「立候補にあたっては選挙区内に住む有権者による署名を一定人数以上、集めること」などを求めればよいのではないだろうか。





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