観点を変えるだけで意見がコロコロ変わる人々
ちかごろツイッターでは「教師のバトン」がトレンド入りすることが多い。
日本の学校で働く教師は勤務時間外の労働を強いられるケースが多いようで、その過労への不満がSNSで続出しているという。
或る日、筆者は複数の知人にこんな質問をしてみた。
「勤務時間外に教え子の保護者から担任教師に相談があったとします。相談といっても、学校内での出来事だけではなく、休日などにクラスメートからインターネットを介したいじめを受けているといった話なども相談内容に含まれているとします。あなたはこの相談に関してどう思いますか?」
筆者はこの質問をする前に「教師のバトン」というトレンドの話をしていた。
すると多くの知人は「相談といっても学校外のことは先生たちもわかんないよ。先生たちだってプライベートの時間を大切にしたいだろうし保護者が学校に頼りきりなのは良くないよ」などといった趣旨の回答をした。
数週間後、筆者は旭川いじめ凍死事件にまつわる会話を複数の知人としていた。そのうえで数週間前に行った質問と同じ内容の質問を彼らにしてみた。
彼らの大半は数週間前に筆者が同様の質問をしたことを忘れているようであった。彼らの回答は概ね以下のようなものであった。
「十代前半の生徒らにとって学校の先生って生死に直結するほど重要な人物であることも多い訳じゃん。デートがしたいからといって担任の女性教師が保護者からのいじめ相談を蔑ろにするだなんて有り得ない」
旭川いじめ凍死事件の被害者である廣瀬さんの担任だった教師はデートを理由に廣瀬さんの保護者からの相談を拒んでいた。この教師は自分のプライベートの時間を大切にしたかったがゆえに相談を拒んだと言える。
大多数の現代人は同様の構造を抱えた問題に向き合う際に、どの側面を提示されるかによって、受け取る印象ががらりと変わってしまいがちなのだと思う。
※「旭川いじめ凍死事件」に関連するサイト
(3ページ目)「ママ、死にたい」自慰行為強要、わいせつ画像拡散……氷点下の旭川で凍死した14歳女子中学生への“壮絶イジメ”《親族告発》 | 文春オンライン (bunshun.jp)
菅野未里(旭川イジメ事件)の担任教師の罪!デート優先の教員経歴 | あっぷあっぷ (mikano-kaiji.com)
「どうすれば助けてあげられたか わからない」 “旭川中学生凍死事件” 母の苦しみ - クローズアップ現代 - NHK
旭川女子中学生凍死事件 ~それでも「いじめはない」というのか~ (nhk.or.jp)
ネットの声を見ると学校でのトラブルは警察に相談すればよいという意見が増えているが、警察官の中には少しでも民事に絡みそうな要素があると民事不介入を理由に対応しない者もいる。この場合は民事訴訟や弁護士への相談などを検討することになるが、時間や経済的なゆとりがないと弁護士に相談するハードルは当然高い。
また「旭川いじめ凍死事件」のケースでは、いじめ加害者の一人であるC男の犯罪行為に対して警察が動いたもののC男が14歳未満であったことなどから刑事罰が科されなかったという事態も起こっている。
このように現制度では警察に相談すれば万事解決するという訳ではない。
我々、一般庶民ができることとしては、一つの問題に対して可能な限り多数の側面から向き合うこと、そして条件反射的に物事を考えないように努めることなどが挙げられるのではないだろうか。