特定の属性だけ助ける公的制度は辞めない?
2023年11月21日、産経新聞から<立民・塩村文夏氏 、悪質ホスト「どう考えてもだます方が悪い」法整備の必要性に言及㊤>というニュースが発表された。
そのニュースに対して、おぎの稔議員は以下のようにコメントした。
彼の議員には多くの引用ツイートがついたが、Kanjiさんは以下のような引用ツイートを行った。
この呟きにも引用ツイートがついていたので紹介する。
パパ活の市場はママ活の市場よりも大きく、若い女性はそうでない属性よりも短時間で大金を稼ぐことが出来るという点で強い立場にある。若い女性が立ちんぼ行為で手っ取り早く大金を稼いでいる光景を見ることはあっても中年男性が立ちんぼ行為で手っ取り早く大金を稼いでいる光景を見ることはまずありえない。
「若い女性が社会経験がある男性と比べ弱者扱いされるのは、状況によっては仕方ない」という主張に違和感を覚えた筆者はKanjiさんの意見を深掘りしていくことにした。(※2)
Kanjiさんのリプライは衝撃的なものであった。
確かに一千万円超のツケ遊びを客に許すキャバクラは余りないだろう。だが、「キャバクラが一千万円超のツケ遊びを客に許すことはありません」という主張は「キャバクラ等の水商売で恋愛感情を利用されて多額の借金を背負ってしまう男性が今も昔も沢山いること」への反論には全然なっていない。
『ナニワ金融道』は勿論フィクション作品だが、アニータ事件などと同様の事件は現実世界で多数おこっている。
Kanjiさんという方はアニータ事件などをご存じでないのかもしれないが、それ以上に愕然としたのは「キャバクラで一千万円超の借金を背負い、風俗で働かされる男性が存在しない以上、平等ではないです」という一文だった。
「風俗で働かされる」とあるが、ホストで散財したくてパパ活や風俗に走る女たちは犯罪組織のメンバーに拉致されて水商売を強要されている訳ではない。「風俗で働くくらいならホストに通うのを辞める」という選択をしなかったのは女性客のほうである。
「ホストクラブではそのような正常な判断がしづらくなるような心理学的テクニックが用いられている!」と言いたくなってしまうかもしれないが、そういった「恋愛感情を利用したテクニック」は水商売全般で行われていることであり、ホスクラに限った話ではない。
ただでさえ短時間で大金を稼ぐことが出来るという点で強い立場にある者を更に支援(・優遇・保護)するような法制度は法の平等性に反している疑いがあるが、Kanjiさんは不平等を是認する態度を示している。(※3)
「別に大金を稼げるかどうかだけで弱者かどうかの話をしているわけでもないし、女性の稼ぐ能力もピンキリなんで」「複雑なことが理解できない単細胞向けに説明すると、頭が弱いのは弱者なんですよ」ともKanjiさんは主張しているが、「女性の稼ぐ能力もピンキリ」と言っても若ければ容姿レベルが平均以下の女性であっても男性よりは稼げてしまうのが実態だったりもする。さらに言えば木嶋佳苗のように若くはない年齢で多くの男性から大金をむしり取っていたような「つわもの」すら存在する。
「頭が弱いのは弱者なんですよ」というのは「ホスト狂いの中には頭が悪すぎてイケメンホストからの目先のチヤホヤほしさに散財してしまう者がいる」ということを指しているのだろう。これは確かに正しい。しかし、このことは「それくらい頭が悪くても若ければ尚更スピーディーに大金を稼げてしまう」という身も蓋もない事実を示してもいる。
「大金を短時間で稼ぐことは出来るけど頭が悪いから弱者」という主張は、「一部の特殊な職業を除き、最低限の知能がないと大金を短時間で稼ぐことは中々できないという今の資本主義社会の実態」を直視するたびに虚しく感じられる。
「複雑なことが理解できない単細胞」とあるが、複雑なことを理解する行為は、少なくとも、単純な事実から目を背けることではない。「Kanjiさんの目には私が単細胞に見えているのかもなあ」と苦笑いしたくなるのを抑えながらKanjiさんの別のリプライを追っていくと、「何度も言いますが、どうすべきかの話は一切していません」というリプライがあった。
<因みに「裏で風俗業者と繋がっているホスト」を規制すべきという意見であればKanjiさんに賛同>とあるように、筆者は「裏で風俗業者と繋がっているホスト」への規制に肯定的である。
ホスト産業は「死に金」のビジネスであり、エッセンシャルワークの対極にある業種であるとすら思っている。「死に金」のビジネスであり、エッセンシャルワークの対極にあるというのはギャバやホステスと共通しており、大半の水商売に言えることだとも思っている。
筆者はホスト狂いへの公的支援を全否定しようとも思っていない。有権者の大半がホスト狂いへの公的支援に賛同しているのであれば公的支援の実施も全然かまわないと考えている。
だが、日本は立憲主義国家であり、日本における法制度は日本国憲法14条が定める「法の下の平等」を遵守する必要がある。
恋愛感情を利用されて大金を巻き上げられている女性は、売春を強要されれば苦しさを感じ、売春を強要されなければ苦しさを感じないという訳ではない。
恋愛感情を利用されて大金を巻き上げられている者は売春を強要されようがされなかろうが、恋している相手との時間以外は慢性的に苦しさを感じるはずである。
このように、売春の強要の有無に関係なく、恋愛感情を利用され大金を巻き上げられて苦しい思いをしている「水商売の客」は存在しており、そのような客を公的に救済する制度を構築するならば、特定の属性だけを助ける制度ではなく、全ての属性を助けうる制度のほうが望ましいのではないだろうか。
立民・塩村文夏氏 、悪質ホスト「どう考えてもだます方が悪い」法整備の必要性に言及㊤
配信源:産経ニュース (sankei.com)
立民・塩村文夏氏、悪質ホストは裏組織が「売春させるビジネス」被害防止法案を準備㊦
配信源:産経ニュース (sankei.com)
(※1)一部のshoukoさんの投稿に「このアカウントの所有者はポストを表示できるアカウントを制限しているため、このポストを表示できません」という文言が見られるのは、Kanjiさんがshoukoさんをブロックしているからだと思われる。なおKanjiさんはshoukoさんに「頭がおかしい人」と言い放っているが、Kanjiさんとshoukoさんのやり取りで「*紅水晶*」さんや「夜桜酔龍」さんはKanjiさんに呆れている。
(※2)筆者は「若い女性が社会経験がある男性と比べ弱者扱いされるような状況」が皆無であるとは考えていない。ただ、本件に関してはそうすべき状況ではないと感じたためKanjiさんの意見を深掘りしていくことにした。
(※3)「水商売で困っている若い女性しか救済できない制度」と「水商売で困っている全ての属性を救済できる制度」だったら後者の方が理想的なはずなのに何故Kanjiさんや塩村議員は前者に固執しているのだろうかと疑問に感じる読者の方は多いかもしれない。可能性の一つとしては或る論理に流されるがあまり、その論理がカバーしていない事柄を見落としてしまっていることなどが挙げられる。
分かりやすい例として藤原正彦の『国家の品格』の或る記述を紹介する。数学者の藤原正彦は米国で教職に就いた。その際、現地の学生に数学を教えるはずだったのに、現地の学生の英語力が低すぎて学生に英文法を指導する事態になってしまった。「なぜ君たちは米国の教育を受けてきたのに英語がこんなにも苦手なのか」と藤原に問われた学生は「英語の授業中にタイプライターを習っていた」と答えた。つまり当時の米国の教育制度は「学生は社会に出たらタイプライターを使うことになるのだから高校で沢山タイプライターの練習をさせよう」という論理に流され、タイプライターで打つのに必要となる英語力を軽視してしまったと考えられる。
Kanjiさんや塩村議員は「ホストで恋愛感情を利用されている若い女性客は売春を強要されるかもしれないが、キャバクラで恋愛感情を利用されている男性客は売春のリスクがない。だから若い女性客は助けて、男性客は助けない」という論理に流され、「売春の強要の有無に関係なく恋愛感情を利用され大金を巻き上げられて苦しい思いをしている客は存在している」という事実を見落としているのかもしれない。
サムネイル:平成を騒がせたチリ人妻・アニータさん、現在は母国の人気者|NEWSポストセブン (news-postseven.com)