六道慧の花暦 2021年6月(2)
今日は父の日。亡くなってから、すでに28年経つけれど、やはり、時々逢いたいなあ、と思ったりする。
以前、読んだ新聞に「愛(いと)しい」は「愛(かな)しい」とも言うのだと出ていた。だから、かなしいのは、たくさん、いとしいからなのだと。だから、泣いてもいいのだと。
母が亡くなったのは、かれこれ半世紀前。私は気落ちしてしまい、服装や履き物などにも気がまわらなくなっていた。
甲を覆うタイプのサンダルを履いていたのだけれど、穴が空いていたのにかまわず履いていた。
ある日、玄関先に新しいサンダルが!
父だった。娘の足のサイズなどは露知らず、Lサイズの大きすぎるサンダルだったが、思わず涙があふれた。
気にかけてくれていたんだ、と。
サイズが合わなかったサンダルは、父に断りを入れて取り替えに行ったが、買い求めた下駄屋さん(当時は下駄屋さんで、サンダルや学校の上履きなども売っていた)の店先で、おそらく畳んだ何枚かの千円札を小銭入れから出して買ったんだろうなー、などという風景が浮かび、ふっと笑った。自転車に乗って下駄屋さんに行ってね。どんな顔して、娘用のサンダルを買ったのかしら……。
新しいサンダルを買うとき、いつも決まってあのときの風景を思い出す。今日はお酒が好きだった父と、一献かわしましょうか。
乾杯。
#父の日 #思い出 #サンダル #下町の下駄屋さん #六道慧
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