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くりきんとんがゆく vol.41「工作機械業界の革命家・金井之広」
「くりきんとんがゆく」は、毎月第一金曜日、FM川口が午後7時からお送りしているラジオ番組「メタリックフライデー」で、DJおやっさんが担当するコーナーです。ここには、そこでお話した内容を記録していきます。
2025年2月7日放送分より。。。
BGMは、Waiting On a Friend/Hugh J.です。オリジナルは、ローリングストーンズの「友を待つ」、1981年発表のアルバム『刺青の男』収録されています。
今日のテーマは「工作機械業界の革命家・金井之広」です
正月の仕事はじめの日に、訃報が届いたんですが。以前、番組にゲストとして来てくれた、イータクスの金井社長が亡くなったと。。。
金井さんといえば、2021年の8月にメタフラに来てくれたとき(ちょうど、くりきんとんがゆくの第一回目のタイミングだったんですが)、ご自身のこと、いろいろと語られていました。
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金井さんのイータクスという会社は、我々、機械加工工場が仕事をするための機械を販売する、いわゆる機械商社さん。ただ単に、機械を売る機械メーカーの代理店という立場ではなく、我々ユーザー、工場側の立場に立ってアドバイス、コンサルティングをするというビジネスをしていた、いってみれば、業界の常識を打ち破る動きをしていた革命家だったと思うんです。
番組では、世界的な板金機械メーカー、アマダでセールスチャンピオンになって、そのご褒美としてヨーロッパを訪れる経験をされて、当時の日本経済は絶頂期で、その時代に海外経験を積み、特にドイツの製造業に深い理解を持つようになったとおっしゃってました。海外の最新技術や思想に触れたことをきっかけに開眼、イータクス創業につながっていきます。機械メーカーの代理店にはなりたくないという強い意志を持ち、自らの言葉で世界を見て、顧客に提案することを重視、3年かけて一つの顧客との関係を構築することを目指していたとも。
金井社長はヨーロッパに、30回以上も視察に赴きました。とくに、2年に一度ドイツのハノーファー、イタリアのミラノで開催される、世界最大規模の金属加工技術に特化した国際的な展示会エモ。金井社長は、このEMOを非常に重視しており、日本の工場経営者たちをEMOに連れて行って最新技術を紹介していました。イータクスの企業活動にとって、EMOは重要な情報収集と人脈形成の場だったのだと思います。このツアーを企画することで、最新の加工技術を学び、日本にその情報を届けることを重要視、それがイータクスの使命だと考えていました。
また、金井さんは、機械商社の経営者としては異例のファッションセンスでも有名でしたね。単におしゃれを楽しむだけでなく、会う人に印象を与えることも考えていたのだと思います。その考えに触発され、私もファッションに対する関心が高まって、かなり意識的に服選びをするようになりました。
実は50台で心筋梗塞を経験した後、運動や食事管理に取り組んだというお話もされてました。そのさなかで、サルサダンスにも挑戦。60歳からの新たな挑戦として、半年間の集中練習でレジェンドになることを目指したなんてことも。大病を経験したことも、その後の人生観に大きな変化があったのだと思います。
金井社長との出会い
そもそも、金井社長との出会いは、私が機械要素技術展に出展していた際、金井社長がうちのブースに足を止めてくださったがきっかけでした。私の小さなブースは黒を基調としたデザインで、その独特のスタイルが金井社長の目に留まったのだと思います。工業系の展示会では黒を使ったデザインは珍しく、そのセンスに共感していただけたのかもしれません。
その後、栗原精機を訪ねてくださった折に、一冊の本を勧められたのですが、それがクリス・アンダーソン著『MAKERS』でした。この本を読み、ものづくりに対する新たな視点を得た私は、その刺激を受けてコミュニティを立ち上げることを決意し、Facebookグループ『MAKERS LINK』が誕生しました。
ただひとつ心残りが
金井さんは公私にわたって、なにかにつけて気をとめてくださっていて、とくに私が病に伏していたときはすごく心配してくれて、ご自身の経験からのアドバイスもしてくださいました。ただ、私の中でひとつ心残りなことがあって。
金井さんは、熱心に私たち夫婦に横浜観光のプランを考えてくれとことがあって、ランチはこのレストラン、あそことここをめぐって、ホテルはニューグランドでディナーの予約をして、翌日は元町でショッピングみたいな。全部、自分がアテンドするから、日程もしかり決めていたのに、残念なことに自分の病気でいったん延期になっていたんですよ。それが実現できないまま。。。
先日、社葬に参列させてもらったのですが、息子の知基さんがしっかりと取り仕切っておられていて、イータクスの会社の今後も安心だなって思いました。知基さんからは、父のパソコンからは横浜観光プランの資料が見つかって、それ見たら、夫婦の旅行に自分もしっかり同行するプランになっていて、ほんとにおせっかいが過ぎると笑っていられたんですけど、こっちはまた涙がこぼれちゃいましたよ。
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