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2023年9月に読んだ本

1 ダニイル・ハルムス『ハルムスの世界』増本浩子、ヴァレリー・グレチュコ訳★★☆☆☆

ハルムスは20世紀前半のロシアの作家で、スターリン政権下において弾圧を受け、獄中死、ソ連時代は当局によって長らく禁止されており、アメリカ、ドイツなどに遅れて、ペレストロイカ後に再発見された。一篇一篇は非常に短く、一言で言うとナンセンスな作風。非常に風刺的であるのは分かるし、解説が合間に複数挟まれているのもよい構成だと思うが、私は面白いと思えなかった。ウラジミール・ソローキンが好きな人は結構好きなのかな。私は木下古栗は好きなんだが、ウラジミール・ソローキンはかなり読むのがキツく、一冊買ったが通読できていない。

2 文月悠光『わたしたちの猫』★★★☆☆

第一詩集、第二詩集は好きなのだが、第三詩集から好きじゃなくなっていく文月悠光の第三詩集。たしかに明らかに素人の詩ではないのだが、第一第二がよすぎるゆえに中弛み感を覚えてしまう。

3 湊圭伍『そら耳のつづきを』★★★☆☆

川柳。いや、川柳面白い。短歌の私性が湿っていて重く感じるとき、川柳の乾いた意味の抜け殻が気持ちいい。ちょっとこれから川柳読んでみたいなと思った。

4 藤本徹『青葱を切る』★★★☆☆

決して上手くはない。新しくもない。でも心を掠めていく温かさと切なさがある、そんな詩集だった。独立系書店が好きそう。

5 『フォビア1・2』原作:原克玄 作画:ゴトウユキコ★★★☆☆

タイトル通り、恐怖症をテーマにした短編漫画集。思った以上にフィクション性が強い、つまり物語がリアリティ志向ではない。ゴトウユキコの絵が可愛いため怖さとか悍ましさとかはない。

6 藤本徹『あまいへだたり』★★★☆☆

これこそめちゃくちゃ独立系書店が好きなやつだろ。文壇では普通すぎて評価されなさそうだが、好きな人は一定数いて、売りやすそう。雑に言うと丁寧な生活系。『青葱を切る』より粒が揃っている感じ。悪くはないけど自分とは関係ないなと思う。

7 坂口菊恵『進化が同性愛を用意した ジェンダーの生物学』★★★★★

Twitterで見かけて気になってはいたんだが、分厚くて字小さくて難しい専門書かなと思ったので一旦スルー、しかし本屋で見かけ全然そんなことない一般書だったことが分かり購入。
この本では、「ジェンダー」という概念を生物学の枠組みに取り込むと言う提案をしているのだが、これがとても面白い。帯にある「同性愛が観察された種は1500以上!」というのも、かなりインパクトのある数字だ。ボノボとかイルカとかは有名なので知っていたが、そんなにいるのか。一番なるほどへーと印象に残ったのは以下。

男性では異性愛の性的指向は思春期から成人期にかけて確立していくが、女性では成人後むしろ確信度は下がっていき、両性愛・同性愛に変わる余地を残している。

非常に勉強になる。現代人の必読書だと思う。

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