2021年4月に読んだ本
2021年4月に読んだ本
1 ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』
新品で買おうと思っていたところ吉祥寺の古書防波堤で見つけたので購入。
主人公は『ダロウェイ夫人』に似ているなという印象。私は正直ヴァ―ジニア・ウルフのよさがあんまり分かっていない。
2 ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』
西荻窪・今野書店で購入。
長編小説。ミランダ・ジュライ、クソ面白い。今年一番かもしれない。自分の箱庭的妄想の世界から暴力的な現実へ、現実は妄想より奇なり。もう立ち直れないかもしれないのに傷つくこと覚悟で飛び込む愛は美しい。綺麗ごとやごまかしを排した赤裸々な表現が凄い。
3 ミランダ・ジュライ『いちばんここに似合う人』
西荻窪・今野書店で購入。
短編集。出てくる主人公、みんな孤独で不器用。面白い。
4 ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』
西荻窪・今野書店で購入。
フォト・ドキュメンタリー。映画の脚本執筆に行き詰った著者がフリーペーパーに売買広告を出している人にインタビューしていく話。インタビューを通して映画の脚本もできていく。この本自体はいつもどおりのミランダ・ジュライ節が効いていて面白いのだが、アマゾンプライムで観た映画の方が全然面白くなかった。
5 岸田将幸『風の領分』
紀伊國屋書店新宿本店で購入。
非常に恣意的な読み方だが、どうしても「風が吹いた それがどうした」と書いて死んだ詩人の影を読み取ろうとしてしまう。岸田将幸の詩はどんどん乾いてきている気がする。生と死の間の詩。動物と植物の間の詩。死に行く人の詩というか、死にかけている人の詩というか、詩は若い人のものなのかもしれないと思ってしまった。
6 アントニオ・タブッキ『レクイエム』
吉祥寺・古書防波堤で購入。
勧められたので読んだが、私はあんまりよさが分からなかった。ヴァージニア・ウルフの良さが分からないのと同じ感じで分からない。面白くないとか読んでて苦痛とかそういうことはないのだけど何か特に引っ掛かるものがない。私がまだ未成熟なのかもしれない。
7 高橋桐矢『副業占い師ブギ』
副業で占い師をやっている人のインタビュー集のような体裁。Twitterで読んでいる人がいて気になったのでAmazonで購入。
今まで占い師の人に一人も会ったことがないので面白かった。割と紆余曲折あった人が多い。副題が「普通のわたしが普通でいられなくなった日」なのも納得。そういえば去年年間ベストにも選んでいる意志強ナツ子の『アマゾネス・キス』も占い師の話で、主人公は副業占い師だったな。
8 海猫沢めろん『明日、機械がヒトになる』
吉祥寺・古書防波堤で購入。
『闇の自己啓発』で課題図書になっていた本。視覚を騙すだけで幽体離脱や触覚の幻覚などかなりのことができる、とか、幸せを感じる能力は半分くらい遺伝子で決まっている、とか興味深いことがたくさん書いてあった。面白い。新書で読みやすいので、こういうのに興味がある人は読んでみるといいと思う。
9 セス・フリード『大いなる不満』
吉祥寺・古書防波堤で購入。
設定は馬鹿馬鹿しいものも多いのだが、人間の本質を突いたような作品が多い短編集。私は筒井康隆を連想した。めちゃめちゃ好みというわけではないが、面白い。
10 尾崎世界観『祐介・字慰』
吉祥寺・古書防波堤で購入。
クリープハイプは割とちゃんと聴きこんでいるのに小説の方は一作も読んだことなかったのでデビュー作を読んでみた。半自叙伝。音楽はやるのにお金がかかって大変だなと思った。文章を書くのは基本的にお金はかからないので何かを犠牲にしなくても続けられる。
11 岸本佐知子編『楽しい夜』
翻訳者・岸本佐知子が訳した短編が集められた本。紀伊國屋書店新宿本店にて購入。
ルシア・ベルリンとミランダ・ジュライが載っていたので買った。全11編のなかでミランダ・ジュライの短編が一番面白かった。岸本佐知子が訳している作家は好みの作家がとても多いことが分かったのでこれからもっと優先的に読んでいきたいと思う。
12 川上和人『鳥類学は、あなたのお役に立てますか?』
西荻窪・今野書店にて購入。
以前読んだ『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』が面白かったので買った。この人は文体が面白い。変な人。やっぱり人と違うことをしている人は面白い。
13 牧野圭太『広告がなくなる日』
青山ブックセンターで購入。
たまには広告の本も読むかと思って買った。自分は普段長文を書くプロではないから文章はヘタだとか、編集者の誰々さんに感謝だとか、読者にとってどうでもいいことを本文で書くな。書いてあることは確かにそうねと思ったが、特に新しい知識や考え方などはなかった。ただ本当にやりたい世のため人のためになる仕事だけで金を稼ぐのは広告に限らず難しいだろう、でもやっぱり仕事をしていく上で理想を忘れないようにすることは大事かもしれないと思った。曲がりなりにも広告に関わる人として。
今月の収穫は何といってもミランダ・ジュライ。破壊的に面白いのでぜひ読んでみてほしい。現在邦訳が出ている作品は今月読んだ3冊だけなので早く新刊が読みたい。岸本佐知子の翻訳書はこれからも積極的に読んでいきたいと思う。