愛別離苦
日中、雲でドンヨリの空。
降るかな、とひとり言。「米を買わねば」と朝五時からユル~っとしていたが、「ヨシっと」と立ち上がり、産直へ。
玄米を七分づきにしてもらう。
合間に店を一廻り。
オッ。おいしそうなマグロの切り出しだ。
長イモもある。
今夜は山かけにして、明日の朝はイワシの丸干し。ここの丸干しは大きく食べ応えがあり、他にはない。
時季のものらしく、いつもあるわけではない。
米も買ったし、会計を済ませて車に。
トントンと窓をたたく人がいる。
「はい?」
「お米持ってってください」
駐車場まで追いかけてくださった。
「ア~っ、イヤダ」と戻ると、レジの側にいた方がニコニコと「わたしもよ」と。
「ボケチャッタ」「だいじょうぶ」「ダメデス・・・」
ガックリだ。
ポツポツ落ちてきた雨の中、10kgのお米を抱えて、「ア~、はずかしい」注意力散漫を通り越している。
ユル~っと暮らすと心身ともに緩くなり、脳もゆる~っと緩むらしい。
夕方義弟夫婦が来て夕飯(五時だけど)
相当高価高級な原酒が知人から長女宛てに送られてきたので、飲もうということらしい。
増沢塗のおちょこで一口。「ウン。マンズイイガ」とあまり好みでなかったらしい。
「どれどれ」と私も馬上杯で一口。「わかる。ちょっと口に合わない」
「うん。もうもったいない。滅多に飲めない酒なのに。もう飲ませない」とうわばみの娘。
今日はビールとワインだな。
義妹の作ったあんかけ焼きそばが〆だ。
「酢くれ。ここん家のはうまぐない酢だったな」と言いながら黒酢をかけて「マッ、いいか」とその上にナンプラーをかけて「これはいい」
誠にあるがまま、言いたい放題の義弟だ。
ナンプラーだって。わたしもかけてみよ。シャーっとかけると「そんなにかけて!」と義弟。
成程、しょっぱい。
う~む、またカタカナだ。これはなんだと瓶の裏を見るといわし。要するに「しょっつる」だね。ウンダ、ウンダ、と一同。
もう、カタカナ恐怖症になってるらしい。
今日は亭主のTシャツを着たせいか、チラッと亭主の顔が浮かんだが日常の幸せな後半の人生だ、とつくづく有難い。
テレビでは、梅雨の大雨による災害を報じている。悲しむ人がまた増える。人知の及ばないことを自然は起こす。環境に良い、と言われる太陽光発電も山の保水能力を保っている木を切ってしまう。人災と言えなくもない。
と思っていたら、案の定宅地造成が原因らしい、と。
自然からはしっぺ返しも恩恵もある。
庭のアジサイは、雨の恵みで周りの木々まで自然の青に染めている。
その青を見つめていると、ここ数カ月前の友人の電話を思い出した。
連れ合いが人生の後半で難病を抱えた。言葉もない。
医者に告知されたとき、帰宅途中に本人から「辛いことを聞かせたね。子供たちに知らせてくれ」とメールがあったと話されていた。
泣くだけ泣いたから、あとは覚悟して頑張る、と。
わが亭主も数年前、淡々と病を受け入れて逝ったが、友は「旦那さんに、まだもう少し呼ばないでね、と言ってね」私に言づけた。
生きるとは愛別離苦。
色鮮やかに咲いて散る紫陽花に重なった。
夜、雨音が強くなってきた。
12時過ぎ。
眠れないなあ。