僕はガンと共に生きるために医者になった
#今日のコーヒー
グアテマラ ヴィジャウレ農園 ブルボン、カトゥーラ・ナチュラル(浅煎り)
産地のみならず農園も追跡できるのがスペシャリティコーヒーの特徴の一つですが、これ迄飲んできたのと同じヴィジャウレ農園から、その年に収穫されたコーヒーの中から最高品質のものに贈られる賞「Cup of Excellence」で25位に入賞した豆です。淹れたての熱いタイミングでは深みがあり、冷めるとともに酸味が感じられ、味がほどけて来るとまた異なる味わいになります。味の変化が楽しめるので、もう少し楽しんでみよう。
#今日の1冊
僕はガンと共に生きるために医者になった
肺がん医師のホームページ(稲月明、光文社新書)
〈最初に浮かんだのは、日航ジャンボ機墜落事故で、家族に走り書きのメモを残した父親のことを伝えるテレビ番組だった。
「あの人に比べたら、自分にはまだ時間がある」そう自分に言い聞かせた。〉
著者の稲月明さんは、愛媛県にある喜多医師会病院に勤務する血液内科医でした。2001年1月に肺癌が見つかってから一年間の記録が本書です。元々「人生最後の目標」として作成したホームページの日記でしたが、評判を呼び、スポーツライターである二宮清純の目に留まって書籍化されました。
藁にもすがる思いの患者や家族を食い物にする代替医療に憤り、保険診療の問題点も現役医師の立場から鋭く指摘するなど、時に筆鋒鋭く迫りながらも、怒りにまかせるのではない、どこか根底にユーモアを感じさせます。自らを「まじめだけが取り柄で全く面白みのない人物」と評しますが、医師として自身の病状を冷徹な迄に受け止め、淡々とした筆遣いながら患者の幸せを第一に置く治療方針を提案する姿は、自らが病を得て初めて気づいたものではなく、「職員や職員の家族が患者になった時に主治医になってほしい、とのぞまれる医師であろうとした」蓄積の上にしか到達し得ないものでもあります。
自分に残された時間がわかるからこそ、やるべきことが見えてくる。そんな一段高みに登ったような患者の姿を目の当たりにして来た、東京大学医学部附属病院放射線科医の中川恵一さんは「僕もがんで死にたいと思います」と繰り返し述べてきましたが、いざ自分にがんが見つかると「なんで僕ががんになるんだ? 煙草も吸わない、酒も適量で人一倍健康に留意してきたのに」と狼狽えたと言います。SNSだと過去の発言との整合性を論う人達から炎上を焚きつけられそうですが、僕はそんな人間の揺らぎを愛おしいとさえ思います。だからツイッターやめたの。
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