「心に残る内定証書を渡す」〜KAG内定証書デザインプロセス〜
はじめに
はじめまして。
KDDIアジャイル開発センター(KAG)のデザイナー、Kまつもと、と申します。
先日(と言っても半年弱前になりますが……)2023年10月2日にKAGの虎ノ門のオフィスにて内定式が行われました。KAGとしては記念すべき第一期新卒入社社員の皆さま、ということになります。
この記事ではその内定式において内定者の皆さまに手渡された「内定証書」のデザインプロセスについてご紹介いたします。
自己紹介
KDDIアジャイル開発センターのデザイナーです。
新卒でKDDI株式会社に入社し、法人向け携帯端末開発などのプロジェクトに携わっておりましたが、その後、UX/UIデザイナーにシフト。既存サービスのUIデザインをメインとして行いつつ、新規サービスの創出・検証を行っていました。KAGには2022年7月の会社設立時から兼務出向として在籍しています。
きっかけ
人事部からご依頼をいただき、渡りに船という感じでデザイン制作が決まりました。
まず人事部への詳細ヒアリングを実施し、その際に「内定証書ケースは制作済み・印刷サイズA4/片面印刷」という制約はあるものの、使用する用紙・印刷については検討したいとデザイナー側から提案させていただきました。
ミッション策定
デザインを制作するにあたってはデザインチームのメンバーに協力を依頼し、ワークショップ形式で進めました。デザイナーチームには若手が多く、内定時の記憶もまだ残っているだろうという期待もありました。
オンラインホワイトボードツールとしてはFigJamを用いています。
「そもそも内定証書って何だっけ?」という自分自身の疑問から、各自の内定式を思い出してみるところからスタートしました。
次のステップとして、内定証書を渡す側である会社からの視点と内定証書をもらう側の内定者からの視点で理想的な内定証書について考えていきました。
会社視点での内定証書・内定式
(問いかけ)内定者に伝えたいKAGらしさはなにか?内定者視点での内定証書・内定式
(問いかけ)内定者はどんなことを当日思っている?
ここまでの議論から今回のプロジェクトにおけるミッションを以下のように決定しました。
とにかく心に残してもらおう、そしてそれがポジティブなものであってほしい、という願いをこめて、当初想定になかったsub-MISSIONを加えて設定しました。
「内定証書を作る」→「内定証書を渡す」に変更するなどの改善をプロジェクトメンバーからのフィードバックを受けて行っています。作っただけではだめで、内定者の手に渡すところまでを意識しよう!ということですね。
コンセプト制作
【コンセプトの骨組みを作る】
コンセプト策定にあたって、理想的な内定証書のワークショップから、まずはコンセプトの骨組みを考えました。こちらも会社視点/内定者視点でこのようにまとめました。
【コンセプトの種を蒔く】
コンセプトを考える上で大切にしたいものがありました。
それがこちら。
内定者の皆さまが受け取るものは内定証書と共にこのメッセージなので、このメッセージとマッチするデザインコンセプトでなくてはならない、ということです。
内定式ではこのメッセージとコーポレートサイトに掲載している"VISION"を元に社長から話をされる、とのことでした。改めてKAGという会社の"VISION"を確認します。
記念すべき第一期の新卒入社、会社としての思いをストレートに伝えるのがいいのではないか。そのように思いました。
“VISION”や「Change Leaderに求められる資質」などの資料からキーワードを抽出し、「コンセプトの骨組み」とのマッチング/「ミッション」とのマッチング、の2軸にて投票を行い、絞っていきました。
キーワードを表現するビジュアルのイメージを発散させるプロセスを経て、
の2面をビジュアルで表現することに決定しました。
判断基準として、コーポレートサイトに使用しているカラーやシェイプとの整合性、航海とのイメージのマッチングなどを考えて総合的に判断しています。
【コンセプトの文章化】
生成AI"Claude"の力を借りながら作文しました。
ビジュアル制作
まずは現状の課題「印象に残りづらい」を認識することから始めました。
世の中に存在している内定証書がどんなものかリサーチしている時に感じたのは、「よくある賞状のような見た目をしているのが一般的」ということ。もちろん伝統的なデザインでありそれ自体素晴らしいものですが、今回のミッションである「心に残る内定証書を渡す」を達成するためには、伝統的なデザインから少し離れることにし、それぞれの課題をどうクリアするかを考えていきました。
「Be a Change Leader.」のタイポグラフィをメインとしながら「水」「羅針盤」をデザインに落とし込んでいきます。今回はスケジュールがタイトであったこともあり、FigJam上で簡単なラフを描いて人事部と認識合わせを行ったり、数回のやり取りを経てデザインを決定していきました。
本文の書体については、伝統的なデザインである筆文字・セリフ体(明朝体)ではなく、サンセリフ体(ゴシック体)から選定を行いました。
しかしながら、証書の「重み」も感じてもらえたらなと思い、モダンすぎるデザインではなくクラシカルな印象を残す書体を中心に選んでいき、日本語については「秀英角ゴシック銀」、英文・数字については「Univers Next」を採用しました。
デザインがFIXに近づいた段階で数種類のテスト印刷を行い人事部と相談の上「きらびき・白」という用紙に決めました。「渡す」ところまで考える、というのが今回やりたかったことなので手渡されたあとにじっくり眺めているときの気持ちを想像しながら紙の質感を見極めていました。
完成
内定式当日にはデザイン意図を内定者のみなさんに説明する機会をご提案いただき、時間を設けていただけたので直接お話しすることができました。
終わりに
内定者のみなさんから嬉しいコメントを多くいただくことができ大変光栄でした。
また、新卒入社の内定式は一生に一度ですので、このような機会に関わることができたことも本当に貴重でした。
周りのサポートも大変ありがたかったです。
今回の内定証書制作では、最後まで良いものを作りたいという気持ちを持ち続けることができ、無事完成にたどり着けたのはとても良い経験だったと思います。
KAGとしては毎年オリジナルのデザインを新たに制作するという伝統を作っていきたいと密かに思っております。
以上が内定証書の制作プロセスでした。ここまで読んでくださったみなさま本当にありがとうございました。
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