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花は散る幹は大樹となりにけり

本業の傍ら知性と教養に裏打ちされた優雅な句を作る江戸の旦那衆や、如才なく門下を従える商売上手な俳人たちに、羨望をつのらせながら、何者でもなく終わってしまうかも知れない自分自身への不安に苛まされていた…

田辺聖子さんの「ひねくれ一茶」を読むと、好好爺なイメージだった一茶の印象が随分変わります。子供や小動物、庶民の生活を題材にした、当時でもちょっと風変わりだと思われていた一茶の句。財産相続、子供の死、自らの病など、不幸ごとが重なるほどに、句への執着、江戸への憧れが痛いほどわかります。

美しい花のような旦那衆の句は今は目にすることもなく、生々しい生を生きた一茶の句が現代にまで受け継がれている…というのもなかなか面白いですね。

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