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あの時のレモンは未だあざやかに
2013年の11月。箱いっぱいのレモンが届いた。お礼だった。いま思い出しても、レモンの色彩はあざやかによみがえる。たとえ目の前にレモンそのものがなくても。
深夜のNHK。AIで蘇る美空ひばりを見た。見終わって、無性に大滝さんの曲が聴きたくなった。何曲か大滝さんの声を聞いたあとに思ったのは、思い出はもっと違った形で残すべきだ、ということだ。
AIの技術自体は否定しない。たった1回の“奇跡”ということでひばりさんが蘇るのならば意味があるかもしれない。しかし、一度作り上げたデータは何度でも再生可能だ。下手をすれば、さらにこれから何曲でも新しい歌を歌わせることができる。しかし、そうなったとき、それまでずっと大切に持っていた思いは、返って失われてしまうような気がする。
大滝さんが亡くなったのは、このレモンが届いた翌月だったんだなぁ。