『川村かおり・憧れと同族嫌悪・ディソシエーション(オートエスノグラフィックな何か2)』
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このシリーズは、要解説であることを承知で投稿しております。解説は後日配信いたします。
1988年に川村かおりがデビューした際、見た目が、英語では今でいうジェンダー・ノンコンフォーミング、日本語ではノンホルノンパス系ボイだったのはご存知?
当時、中学生だった私は毎週土曜夜中に起きて、深夜2時から川村がやっていたオールナイトニッポンを聞き、手紙を書いて、名前を読まれて、クラスメートに指摘されて、冷や汗かいた。Rちゃんっていう超かわいいクラスメートに、川村かおりが好きって言ったら、なんでかわからないけど、突然家にCD届けてくれて、私は居なかったから母が預かってくれてた。
川村は、母親がロシア人のため、強烈にいじめられた。ベルリンの壁の前で「国境線を越えて今すぐ会いに行く」とライダースにブラックジーンで歌う。めちゃくちゃ見目麗しいのに、ずっこけるくらい歌が下手。国のボーダーもジェンダーのボーダーも、同時に越えてた。
ラブソングを歌っても、一人称は僕、相手は君。相手は女で、川村は何かはわからないけど、女ではない何か、だと私は思ってた、と思う。私には、なり得ない何か。そして諦めざるを得ない何か。川村になるのを諦めて、山田詠美になるしかない、って思ったかな。女でも性的自己決定権の主張のできる存在であるために。
80年代に、一人称が「ぼく」か「川村」で、ベリーショートで少年のような、田舎の少女にも発見可能なトランスみたいな存在は、川村かおりしかいなかった。
1999年、映画『ボーイズドントクライ』を渋谷の映画館に見に行き、ヒラリー・スワンクのへらへらした感じが川村にしか見えん、と思った。そして、どうして、こういうチャラい軽薄な感じは国境を越えて存在するのか、と思った。今思うと、ものすごい同族嫌悪。
私は、今回、トランジションを開始して、どうしても、東京レズビアン&ゲイパレードのレズビアンフロートを踊りながら歩いてた、ジェンダー・ノンコンフィーミング・パーティピープルのような見た目になってしまうのに、やっぱり同族嫌悪を覚えてた。かわいい子を見つけると、すかさずチャラいことを言って口説こうとするのも、ずっとだけど、もはやこの外見では、どうしてもヒラリー・スワンクみたいになってしまう。
AFABのジェンダー・ノンコンフィーミングは、ここを乗り越えるのに男性ホルモンを打ってるとしか思えないし、何故か好きになる相手がノンケで振られ続けるので、自分が男じゃないせいだと思って、反動で振り切れるからだとしか思えない。第一、みんな男性化する理由として女に振られた話ばっかりしてるし、私も最近、またしても振られて、同じようなことを、ついに思ってしまい、自分でも引いた。そうして、いずれ自分もホルモン投与するんだろうか、やばって感じ。
多分、ジェンダー・アイデンティティを聞いた時に、間髪おかずにマンって言う身体改造をいとわないタイプと、そこまではいかないけど、ある程度ジェンダー・ノンコンフィーミングで居るけど、結局男性ホルモンを投与して男性化するタイプは、連続しててるとはいえ、若干違うように思う。でも、ディソシエーションという考え方をここで導入すると、自分の身体をダイレクトに嫌だ!と感じられるか、なんとなく誤魔かしながら長い間踏み止まるかは、ディソシエーションがどれだけあるかによっていて、嫌悪感の強さの問題ではない、と分析可能。
仮にですが、相手のセクシュアリティを確認して恋に落ちたりセックスしたりするレズビアンやゲイとは違う存在として、MSMを位置づけるなら、WSWっていうのも明らかにいるし、節操のなさはレズビアンの想像を超えてるって思う。
この7月のパレードを歩いていた際、途中で何かが振り切れて、隊列の進行が滞ってたタイミングだったのもあり、突然本気で踊ったら、勉強やアクティビズムはしてるけど夜遊びしてないタイプは、あっけにとられて引いてた。しかし、ナイトクラビングしまくってたのに、猫を被っていたであろうやつらの、目の色が変わって、目が爛々と輝き、私の周囲2メートルかが、突然クラブと化しました。
夜もゲイバーでクラブイベントやってたので、行くしかないと思ったら、突然、ナイトグラビング用の衣装を持ってないのに気がついた。でも、小さくなった乳房にバンドエードを貼り、その上から直接、日本で着るにはVが深すぎるイタリアもののTシャツを着て行き、そうだったわ、私はさんざん踊りに行ってたんだったわって、やっと思い出した。山田詠美かよって感じでクラブに通ったり、二丁目に行くようになってからも、ゲイの友だちに誘われて、踊りに行ったりしてたんだった。
自分がアイヌ(/エミシ)であることも、この正月まで忘れていたし、自分がレイシズムについて学びたくて大学に入ったことすら、忘れていた。日本語と英語と中国語で経験できること、言えることも、言語能力とは別の理由で、違う。ディソシエーションって、ホントにすごい。
(日本のXジェンダーだった友人に宛てて)
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