『男はそれなりにメンチを切る(研究ネタ帳2)』
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最近、なんだか精神的にキツイと思った理由の一つ、についてのお話。
私はこちらにいても春くらいまでは、まだボーイッシュな女性の外見だったので、カミングアウトしないとゲイバーでも微妙な扱いをされていた。こちらのプライドの時から振り切って、あからさまにジェンダーノンコンフォーミングになった。私が勝手に名づけて皆んなに紹介しまくっている「金田くんのバレバレ論文」的な外見である。いわば、見てクイアだとわかる、見た目でカミングアウトしている外見。
ジェンダーノンコフォーミングなうちは、かなり生活しやすかった。もともとそうなんだけれど、私はホームレスの人たちに優しくされがちで、挨拶を交わしてお喋りして、薬でイッてしまってる時は近寄らないけれど、むしろ彼らのたまっているところの方が安全だと感じていた。それに拍車がかかっていた。
加えて、車に乗ってる男性に手を振られたり、声をかけられたりし始めた。「自分もゲイだ」と言いながらオフェンシブに振舞われて逃げたり、しつこく着いてこられて巻いて逃げたり、というのには最初はビビった。同胞に、そういう時は威嚇せよ、と言われて、女性的には追い払えないことを知った。
女性的な追い払い方を、私は3段階にしていて、1 いなす、2 たしなめる、3 ひっぱたく。パシっと平手で頬を引っ叩いてもどうにもならない奴は、かなりヤバいので逃げるしかない。高校の時、グーで殴ろうとして、あり得ない展開になったので、それからはニ度としていない。(また後日、これについては書きます。)
しかし、レズビアンにもそれなりにモテた。クラッシュするのは、大概レズビアンだった。その段階で、ヘイトクライムにはいかにもあいそうだし、実際に、前よりも高確率でシスヘテ男性であろう人に嫌な態度を取られたり、何か言われたりするようになってはいた。これは、アジア系なのが理由で、もともとやられていたので、ジェンダーノンコンフォーミングなことで割り増しになってるように思う。
そうして、次のステージに進んだ。ここのところ、より男性的な見た目に寄せているし、前に書いたように、精神的にもトランジションが進んだ。女性ものから男性ものに、かなりの洋服を入れ替えてあった。明らかに視線のやり取りが変化したのは、そういう外見で、いわゆるハットを被るようになってから。
こちらの人は大概、キャップをかぶっている。日本語では野球帽。冬はトゥークと呼ばれる毛糸の帽子を寒いからみんなかぶる。キャップは、基本的にジェンダーニュートラルにできているけれど、そうでもないやつも沢山ある。あんまり気にしてない人は気がついてないかも。
ついこの間、ストリートマーケットで、ジェンダーノンコンフォーミングと男性の2人組が、手作りのハットを売っていた。
うさぎでできていて、内側の額などが当たるところには、ぐるっと皮が張ってある。びっくりするほど沢山の鉢のサイズや形があり、ちょうど良いのを被っているうちに、革靴のように頭の形に馴染むという。ぐるっと張ってある皮のせいで、強風でも飛ばない。雨の時にはむしろ被るのを推奨。雨が溜まっても乾きやすいように、糸が貼ってあり、その穴で呼吸できるようになっている。脱着の時のつまみ方で、好みの形に作り込める。被り方も指導され、眉上、耳上、それぞれと帽子の間を1.5センチくらいあけるのがジャストだし、上向きにかぶると女性的なので、下向き加減にかぶる。若干斜めった感じにかぶる方がなじむ。以上、その場で売っていた、いつでもメンテナンスしてくれるという同胞の説明と指導による。
ちょうど帽子を探していたし、何しろ、ショーで使えそうだし、ちょっと考えてまた今度にしよう、と思うと2度と見つからない不思議の国に住んでるので、即買った。私は買い物が嫌いなので、衝動買い以外の買物はほとんどしない。
で、明らかに男性的な帽子を男性的なかぶり方でかぶっているのに加えて、アジア系が被ってるのは見たことないかも。
そのハットをかぶりだしてから、シスゲイにも、バーカウンターで睨まれるようになり、???となった。道を歩くと、多くのシス男性であろう人が睨んでくる。直感的に、同じような顔つきを一瞬するけれど無視する、以外に安全が確保できそうにない、のでそうしている。
また、妙齢の女性にクラッシュされるようになり、特に夫と一緒なのに熱心に話しかけたり、酔って口説いてきて、隣の夫にあからさまに嫌がられるようになった。やめてほしい。
私は、結構くにゃくにゃ動いてるタイプだけど、微動だにしない身体動作にしないと、明らかに付け込まれそうに感じて、なるべく常に体幹に力を入れるようになった。
険しい顔をして体幹に力を入れて生活するのは、めちゃ疲れる。しんどい。身体にかかるストレスも半端ない。前提が、殺し合いの世界、みたいな焦点の定まらない相互行為の世界なんだもん。勘弁して、である。同胞に、以上のことを話したら「メンチ」と指摘されて、これが「メンチなん?」と驚いたけれど、そしたら、なんだか面白くなっちゃった。
女性の外見だった時に経験したCat Callと、自分の体験で比較研究できそう。しかも、自分のトランジション具合で、グラデーションな経験の記述もできそう。
さらに、思い出した。前に同胞が紹介してくれたビデオ。
Trans guy realizes how it’s hard to be a man.
ものすごい再生数の回ったショート。トランス男性が、白人男性の自殺率が高いのがなぜかよくわかった、孤独だからだと、泣くビデオ。
アジア系の私が、それにどこまで共感できるかはともかく、基本が睨みながら視線を交わす相互行為、だと、確かにしんど過ぎるわ。
男性学スカラーのみなさん。ぜひ、研究しませんか? またジェンダーを教えるみなさんは、ぜひ授業のネタにしてくださいね。
お後がよろしいようで。
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