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【連載小説】クマムシモビルスーツ③

一瞬の沈黙が流れた…
参列していた人たちが、その日初めて会ったであろう人たちが、動揺を浮かべたままアイコンタクトをしたのちパラパラと拍手が沸き起こり、次第に拍手は大きくなった。
この拍手に名前を付けるなら『社交辞令拍手』だろうな…。そんなくだらないことを僕は考えていた。

覚悟はしていた。
このスーツ、確かに機能性は抜群だ。
雨にも負けず、風にも負けず、雪にも、夏の暑さにも負けない丈夫なスーツだ。宮沢賢治先生もビックリするぐらいの出来だ。
だがしかし、このスーツには致命的な欠点がある。
ダサいのだ。とにかくダサいのだ。
完成披露と言ったら、見目麗しいモデルがかっこよく着こなして登場するだろうに、「お金を払ってでも着たくない」と何人ものモデルに断られてしまったのだ。
モデルまで話が通ったならまだマシなほうで、「うちのモデルに、こんなもの着させられるわけないだろう」と何度も門残払いされた。
こんな事があったから、僕も月野も不安だった。
このまま発表する事が果たして正しいのかと。
10名いるクマビルチームの精鋭たちも見た目に関しては最大の努力をしてきた。
むしろ、後半の年月はそれに費やしてきたと言っても過言ではない。
でも我々の能力では無理だったのだ。

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