[想像2030]〈2030年〉の舞台芸術に必要なこと No.3西尾佳織
日本・台湾の現代舞台芸術交流プログラムでは、困難が予想される未来を想像していくために、日本・台湾それぞれで活動する舞台芸術やアートに携わっているプロデューサーやアーティスト、研究者、教育者、批評家などに「〈2030年〉の舞台芸術に必要なこと(日本)」「2030年台湾演劇(台湾)」についてコメントをいただき日本語、中国語で共有します。
――来るべき〈2030年〉の舞台芸術にあなたは何が必要だと思いますか?
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2007年から鳥公園を主宰する西尾佳織氏は東京と拠点とし、地方都市で滞在制作をしたりとさまざまな場で作品を発表している。2019年には自身が劇作と演出を兼ねる体制を終わりにし、複数演出家体制での活動を開始をするなど作品創造のみにとどまらない積極的な活動を続けている。
西尾佳織(劇作家、演出家、鳥公園主宰)
2030年にはコロナ禍が落ち着いていることを願うけれど、一度当たり前になったオンラインコミュニケーションや舞台作品の配信がゼロになることはないだろう。その上で。舞台芸術は編集できない。たとえ演出家が後からどんなに「ダメ出し」したところで、その日俳優とスタッフによって生み出された上演が作品になるし、上演が観客込みで生成されるという意味でも、舞台芸術はきわめて不安定な芸術である。
視覚偏重のオンラインコミュニケーションと数値化され可視化されたSNSのインプレッション表示に慣らされた私たちは、イメージを加工・編集する欲望とプレッシャーに曝され、自己と世界に対する操作可能性を考えずにいられない。そんな監視とコントロールの時代に、作品の最終的な存立を他者に委ねるしかない舞台芸術は、あっけらかんと暢気に見える。その伸びやかさは、決して支配できない他者への信頼に立脚している。
信頼、と言葉で言うのは簡単だ。だがそれを本当に実現するには、「一人の天才アーティストと彼/彼女を支える大勢」という構図とは異なる、相互性・複数性の創作プロセスの発明が必要だろう。
舞台芸術の編集できなさを受け入れることは、人が一人ひとり持っている固有の呼吸や思考、身体や心のありようを認めながら、互いに思い通りにならない他者同士が、それでも一つの作品をつくることだ。複数の人間の〈あいだ〉に生まれては消える舞台芸術において、作品とは誰のもので、その評価は誰に与えられるべきか? 私たちの思考の枠組みそのものの更新から、2030年の舞台芸術が生まれる。
*撮影:引地信彦
西尾佳織(劇作家、導演、劇團鳥公園團長)
雖然我期望2030年肺炎疫情已經趨向穩定,但已被視為理所當然的線上溝通與表演藝術作品的網路播放也不會完全消失吧?更何況,表演藝術是無法被後製的,無論導演在那之後如何打槍,作品都建立在那一天的演員與工作人員的表現之上,並且演出也是與觀眾所一同產生的,可以說表演藝術是一種極為不穩定的藝術形式。
已經習慣強調視覺的線上溝通,與可量化、圖像化網路社群符號的我們,暴露在圖像處理、編輯的慾望與壓力中,不得不去思考操作自己與世界的可能性。在這個充斥監視與控制的時代,將作品的成立建構在他人身上的表演藝術,看起來似乎是舒適的。那樣的柔韌性,就奠基於對那些絕對無法控制的他人的信賴之上。
信賴說起來很容易。但要真正實現所需要的並不是「一位天才與支持他/她的眾人」這樣的構圖,而應該是要發明更具相互性、複數性的創作過程。
接納表演藝術無法被後製這件事,就如同認同每個人都具有各自的呼吸、思考、身體與心理,而這些無法如自己預料行動的他者們,卻能夠共同完成一件作品。對於在複數人(之間)所產生又消逝的表演藝術作品,作品是屬於誰的?又或者對作品的評價應該賦予誰?唯有透過我們更新自己思考的框架,才能夠誕生出2030年的表演藝術。
*攝影:引地信彦
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