173. ホラと架空
師走。
オミクロンをうっかりオロナミンと言ってしまいそうになっていたら夫が「尾身さんのオミと覚えると間違えないらしい」と教えてくれた。
なるほど。
霜月の末、長男が「明日から冬です」と宣言し「晴れなくなる」と予言した。
彼の中では季節は3か月ごとにきちんと区切られていて、秋は9月〜11月で明日から12月なので2月まで冬、冬は寒い=太陽が出ない=晴れではない、という思考の流れ。
実際は太平洋側の冬はおおむね晴れでありがたいんだけど、まぁそのうちわかるだろう。
晩秋や初冬や春先などの曖昧な時候の挨拶が身に沁みて3ヶ月タームで言い切れない感じも、そのうちわかる。
「金太郎ガチャの日も終わったしね」というのでゲームか何かの話かな?とその日どんな日?お母さん知らないと教えを乞うと、なぜ知らないんだという口調で「この前の休みだった火曜」と言うので勤労感謝の日な、と。
「キンロウカンシャの日」
「キンタロウガチャの日」
意外に似てる。
キンロウもカンシャも彼に馴染みのない言葉だから、身近な言葉で解釈し作ったのであればなかなかいい出来。
そんな日「にゃんこ大戦争(次男お気に入りのゲーム)」とかにありそうやもん。
長男のオリジナル言語感覚は想像電車ごっこの駅名によく生かされていて、これまでに「本郷馬喰町」や「高輪ゲート学園」といった架空駅名に感心している。
声に出して言いたい駅名、ほんごうばくろちょう、たかなわゲートがくえん。
夫は月を跨いで出張へ行き、東京に猛烈に雨が降った日の夜は大阪なんばの繁華街にあるホテルに泊まっていた。
あんな繁華街にあるホテルに泊まるの緊張するなぁと言っていて、わかる、と思った。なんばで寝るなんてカタギのすることじゃなさそう。
行きたかったお店でご飯を食べられたという嬉しそうなメッセージのあとに「カウンターのお客さんみんな落語家かな」と来た。
大阪の飲食店、時折隣の客の話が面白すぎて食べたものがかすむことあるよね。
よく働いたと551の豚まんを買って帰ってきた。
次男がおへそのゴマを気にしている。
お腹痛くなるから触ったらダメよ、と制するも「だって気になるんだよ!」とでんぐり返りしそうな勢いで覗き込んだりしている。
お風呂で石鹸で優しく洗うんや、お父さんはきれいで、などと言っていた夫が真顔で「お父さんストローをおへそに刺されてチューと吸われたことがある」などと言い出し、次男はじっと顔を見て「嘘でしょ」と言ったので私が「九州の方だったっけ?そんな風習あるの」と嘘に乗っかり「ウンガロン」という名の他所から来た人を歓迎する意味の奇習がでっち上げられた。
嘘でしょ?ねぇ嘘でしょ?とその後も何度も聞くので「お母さんも知らん。けど、嘘みたいなことでも自分の知らんことがこの世には山ほどあるから」と真顔で言っておいた。
数日後になっても次男は「お父さんおへそをストローで吸われたことあるんだって」と言っていた。
いやほんまに、どっかにあるかもしれんしな。(でも九州ではないだろう)