あなたには居てほしくて……

あなたには居てほしくて、居てほしくない。

「今日の休みは……」

あ、彼は今日は休みだ。

どうしたのかな。
大丈夫かな。
風邪かな。
咳かな。
頭痛かな。
ずる休みかな。

心配になる。

でも、安心した。

今日は私がどんな間違いをしても、彼は見ていない。
どんなに髪が崩れていても、彼は見ていない。
どんなに間違ったことを言っても、彼は見ていない。
どんなに変な顔をしていても、彼は見ていない。
どんなに、どんなに、変でも、汚くても、間違っていても彼は見ていない。

「今日は全員出席です」

あ、彼がいる。

嬉しいな。
カッコいいな。
楽しいな。
ドキドキするな。
ワクワクするな。
素敵だな。
会えてよかったな。

とっても嬉しい。

でも、緊張する。

今日の私は間違えてはいけない、彼が見ているから。
絶対に髪は整っていなくてはいけない、彼が見ているから。
絶対に間違えてはいけない、彼が見ているから。
絶対に変な顔をしてはいけない、彼が見ているから。
絶対に、絶対に、まじめで、綺麗で、正しくないといけない。

彼が見ているから。

他人は自分のことを案外見てはいない。
誰かがそう言っていた。
でも、どうにかしたら、彼は私のほうを一瞬でも見るかもしれない。
その一瞬は私は完璧な状態でいたい。

少し抜けていた方が可愛げがある。
誰かがそう言っていた。
でも、私にはそうではできない。彼が頼ってくれるかもしれない。
その時は私は完璧な状態でいたい。

彼には居てほしい。でも居てほしくない。

こんなに疲れるのは、彼が居るからだ。

でも、こんなにトキメクのは、彼が居るからだ。

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