【セミナー記録】こども向けのデザインってなんだろう?
こんにちは。たかやまです。
今回は2024年7月に開催されたCASESTUDY「こどもとデザイン」の参加記録です。
CASE STUDYって?
CASE STUDYは大阪にあるSTARRYWORKS inc.さんと京都の株式会社MEFILASさんが共同で運営されている不定期のデザインのイベントです。
こちらからアーカイブもご覧いただけます。ぜひ!
第五回目の今回のテーマは「こどもとデザイン」
子供向けのデザインって、カラフル?まるみのあるフォルム?単純で分かりやすいイラスト?
そんなイメージでしたが、見た目のかわいいデザインだけではない、面白い仕掛けがたくさんありました。
01:アナログの体験をデジタルに
「かみなしばい」はデジタルになった紙芝居の遊びです。
「読み手」「聞き手」が一緒に楽しめる仕組みを使用して、それぞれを2つのデバイスに分け、あとは従来の紙芝居と同じ要領で読み聞かせをします。
かみなしばいの面白さは、「デジタル(効果音、イラストを動かす)」と「アナログ(声の読み聞かせ)」で今までの紙芝居よりもぐんと楽しみ方が広がるところ。
例えば「シンデレラ」のガラスの靴の持ち主を探すシーンでは、聞き手が複数端末の場合はそのうちの一台とだけぴったりと靴がはまるそう。
なんと素敵な仕組み、、!これはデジタルでしかできない面白さ。
今までにない新しい遊びをつくり出すのではなく、今まで長年親しまれてきたこども遊びとデジタルの力を掛け合わせることで楽しさの可能性が広がり、また新しい体験を生み出すことができるのだと思いました。
また、デジタルのコンテンツはどうしても画面を見ながらのひとり遊びになってしまいがちなイメージでしたが、親子で一緒に楽しめる時間ができるのもいいですね。
かみなしばいは戸田さんがお子様と図書館で待ち合わせをしたときにたまたま紙芝居をしていて、絵本は一人でも楽しめるけど、紙芝居は二人以上で楽しむことに気づいたところから着想を得たそうです。「誰と、どう楽しむか」まで設計されているところがポイントだと思いました。
02: 「ことば」から考えるデザイン
お次はイベントの少し前に自社サイトのリニューアルがXで大反響を呼んだMONBRANの竹田さん。
「うおみえん」という保育園のサイトを事例に、制作の裏側をお話いただきました。
私が一番心に残った点は、「まずは”ことば”から、そして”絵”へ」というモンブランさんが大切にしている制作のプロセスです。
「ことば」= 伝えたい中心の軸や言葉のこと。
「絵」= 見た目、デザインのことです。
今回の事例では、園長さんの「保育園ぽい、淡い、優しい感じは嫌。変わったサイトにしたい。」という思いと、モンブランさんが感じた「いい意味で普通な、まじめで素敵な保育園だった」という雰囲気をすり合わせ、サイトを通して何を伝えるのか、軸となる「ことば」を探っていきます。
そこで生まれた「ことば(表現テーマ)」が「ちょっと変。それは、愛だ」
ここから「絵」となるデザインを考え、「切り抜き写真」「イラスト」「変なポーズをこども達にとってもらう」というキーワードがまず見えてきました。
そして、「ことば」を伝えるためにHPだけではなく、盆踊りのオリジナルダンスや園の「ちょっと変」を集めたカードの作成をご提案。
このカードの制作からかわいいおばけのイラストがチューニングを経て「やっぱりかわいい」とメインキャラになったり、イラストを活かし、かつ「ちょっと変」を表現するために黒色がキーカラーになっていきます。
このファーストビューにあるかわいいおばけ、ユニークなポーズをとるこども達、そして真っ黒な背景、どれもが「ちょっと変。それは、愛だ」を表すデザインになっています。
「ことばから絵へ」という順番があるように、まずは何を伝えたいのか軸を決め、そこからデザインへとつなぎ、進めていく中で都度振り返りチューニングをすることで、ブレのないアウトプットができるのだと思いました。
「絵(デザイン)」を優先しすぎて「ことば」が削られてしまうようでは、どれだけすばらしいデザインでも「良いデザイン」とは言えないのかもしれません。
03:こどもの「不完全さ」理解する
最後は株式会社BUTTON 浦谷 和生さん。
普段からこどもを中心としたデザインをされているクリエイティブプロダクションさんで、今回はみっけ展という「発見」をテーマとした親子で楽しめるデジタル体験型イベントの事例をお話いただきました。
イベントの事例はもちろん、デザインを考える思考がとても面白かったので、みっけ展の事例紹介、というよりは「こどもとデザイン」に対する思考メインでご紹介します。
浦谷さんから、こどもにはこどもならではの「不完全さ」がある。不完全さを言語化し、理解して向き合えば、それを超えるためのアプローチも必ず見つかる、とのお話をお伺いしました。
この「不完全さ」の2つのポイントについてこれからまとめていきます。
遊び方の「余白」を考える
不完全さの1つ目は、こども達一人ひとりの「身体的、知能的な違いや差」のこと。
こどもは成長スピードが早い分、一才年齢が違うだけでできることや考え方に大きな差が出てしまいます。しかし、デザインするときは年齢の違う兄弟も、同い年のお友達同士も、ひとくくりにしてみんなが楽しめるコンテンツを作っていかないといけません。
そのため、特定の対象年齢を狙うのではなく、遊び方の余白のある「遊具」のようなコンテンツを提供することを大切にされているそうです。
「ゲーム的につくるか、遊具的につくるか」というお言葉があったのですが、例えばゲームにはルールがあり、それだけの知能レベルやハイスコアを狙える能力が必要とされるため、つい上下の差や勝ち負けがついてしまい、楽しめない子も出てきてしまいます。
しかし、「遊具」であればこども達が自分の年次にあわせて遊び方を見つけられる「余白」があり、その中でそれぞれが工夫していろいろな楽しみ方ができるので、ひとりひとりの「不完全さ」に対応することができます。
確かに、ゲーム的な遊びだと「できる/できない」の基準になってしまいますが、遊具的な遊びだと「どう楽しむか」という基準になるので、参加したみんなで楽しさを共有することができますね。
とにかく、「遊び方の余白」という考え方が、目からうろこでした。
「保護される存在」であることの制限
不完全さの2つ目は、こどもは一人では行動や意思決定ができないこと。体験、閲覧、購入、時間などにおいて、必ず保護者の制約が存在します。
そのため、こどもと一緒にいる保護者にも楽しんでもらえるようにターゲットを広げていく必要があります。
こどもとのお出かけは、大人同士ではないような手間がどうしても増えたり、自由が利かないことも出てきます。
だからこそ、こどもと保護者がしんどくならないようにコンテンツ数と密度を考え、一つの場所で最低2~3時間は長く楽しめて、適度に保護者が休めるような仕組みづくりが必要になります。
こどものデザインはこどもだけのものではない、必ず一緒にいる保護者のことも一緒に考えて、みんなで楽しめるコンテンツをつくる視点が必要なのだと感じました。
まとめ
今回のセミナーに参加して、「こどもとデザイン」はこども達だけではなく、保護者の存在も考えて、みんなが一緒に楽しめるような行動の流れや楽しみ方まで考えることが大切なのだと学びました。
また、最後に「こどもをこども扱いしない」というお言葉が印象的でした。
こども達にとってただ分かりやすい、かわいいものを作るだけではなく、また「こども」をひとくくりにせず、今のこども達がどうやったら楽しんでもらえるかを考えながら制作していくことが大切なのだと感じました。
とっても楽しいセミナーでした~!次回も楽しみです!!