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腐敗が臭いのはなぜ?

食品中に含まれる糖質、脂質、タンパク質などの栄養成分は、熱や光などの物理的な刺激や酵素、微生物の働きによって変化する。腐敗は、この変化の一種である。

腐敗とは、微生物の繁殖によってタンパク質が分解され、不快臭が生じる現象であり、不快臭の原因はタンパク質の変質にある。

どのようにタンパク質は変化し、不快臭を発するようになるのだろうか。ここでは、腐敗によって生じる物質について説明する。

腐敗アミン

アミノ酸がアミノ酸脱炭素酵素の作用によって生成される。例として、以下が挙げられる。

  • アルギニン → アグマチン

  • チロシン → チラミン

  • リシン → カダベリン

  • ヒスチジン → ヒスタミン

  • トリプトファン → トリプタミン

  • フェニルアラニン → フェネチルアミン

ヒスタミン、カダベリン、チラミンは腐敗の判定指標になる。
(一言メモ)
アグマチンは清酒や鮮魚に比較的多く含まれる。
チラミンは血圧上昇作用があり、醤油に含まれる。
カダベリンは精液特有の匂いの原因物質でもある。
ヒスタミンはアレルギー様食中毒の原因となることがある。
フェネチルアミンはチョコレートなどにも見られる。

揮発性塩基窒素(VBN)

揮発性で不快臭を持つ塩基性物質の総称。食品100gあたり約30mgに達すると一般に初期腐敗とされる。トリメチルアミンオキシドから、アミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、アンモニア、ホルムアルデヒドが生じる。この中でホルムアルデヒド以外はVBNである。トリメチルアミンは海産物の腐敗臭の原因物質であり、食品100gあたり4~5mgを目安に腐敗の指標として使われている。
(一言メモ)
ジメチルアミンは魚介類の生臭さの原因物質である。
ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因物質としても有名であり、タンパク質変性作用を持つ。

その他

  1. 硫化水素やエチルメルカプタン(エタンチオール)はシステインから生成される。どちらも悪臭の原因物質である。硫化水素は濃度が高くなると臭わなくなる特徴がある。

  2. スカトールやインドールは、トリプトファンが脱アミノ反応、脱炭酸反応などを通じて生成された悪臭物質である。(一言メモ)エチルメルカプタンは世界一臭い物質としてギネスに登録されたことがある。

腐敗を引き起こす腐敗細菌として、シュードモナス属、ビブリオ属、プロテウス属、バシラス属、クロストリジウム属、マイクロコッカス属がある。食品1gあたり10^8個ほどの生菌が存在すると初期腐敗として判定される。
(一言メモ)
シュードモナス属は好気性菌であり、低温に強い特徴から冷蔵庫で保存している食品の腐敗の主要原因菌となっている。
ビブリオ属の多くは耐塩性または好塩性である。
バシラス属は耐熱性の芽胞を形成するため、加熱食品の腐敗の原因として見られる。
クロストリジウム属は耐久性の高い芽胞を形成できる。

まとめ

腐敗細菌に分類される微生物によって、タンパク質が腐敗アミンやVBN、硫化水素、エチルメルカプタン、スカトール、インドールなどに変質することで不快な臭いが生まれるため、腐敗した食品は臭くなる。


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