「スマホを落としただけなのに」シンプルなステージで引き込まれる展開!舞台を“動かす”のはあの俳優

島田薫です。


先日、舞台「スマホを落としただけなのに」(東京・日本青年館ホール)を観劇してきました。

原作は志駕晃さんのミステリー小説。2018年公開の北川景子さんの主演映画で知った方もいらっしゃると思います。


舞台版は横内謙介さんが脚本・演出を担当し、ジャニーズの「ふぉ~ゆ~」辰巳雄大さん、浜中文一さんらが出演しています。

本来なら昨年3月から4月にかけて上演予定でしたが、コロナの影響により途中で中止に。今年再演が決まったのはよかったものの、結局、大阪公演は中止。東京公演は何とか幕が開きました。


さて、この作品のカギとなるのは、ずばり、スマホ。今や誰もが持っているそのスマホを落としてしまうと、どんなことになるのか。個人情報や秘密が簡単に暴かれ、犯罪につながり、命までも落としてしまうという展開は、いつ自分に降りかかってきてもおかしくないとゾッとしてしまいます。


“落としただけ”というシンプルなきっかけから始まるストーリーのように、ステージは白一色。要所要所に机や椅子は置かれていますが、その真っ白な空間が、警察の取り調べ室になったり、犯行現場になったり、キャストの演技でどんどん変わっていくのです。 

サイバー犯罪に強い若手刑事を辰巳さん、美しい黒髪の女性ばかりを狙った連続殺人犯を浜中さんが演じていますが、全く違うタイプでありながら、根底でつながるものがあると思わせる展開に引き込まれます。

浜中さんの、本名さえ明かさず飄々(ひょうひょう)とした態度で取り調べに応じる様子、執着の強さ、危険度合いは、静かな演技から伝わってきます。屈折した人間性や狂気の表現が本当にうまい人だと思います。

一方の辰巳さんは、抑えた演技で迫ります。特化した能力を持ちつつどこかずれた様子も、辰巳さんが演じることで丁寧さが感じられます。


被害者役には「乃木坂46」の早川聖来(せいら)さんが扮していますが、非常に重要な役をドラマティックに好演。

そして、ベテラン刑事役の原田龍二さんが“昭和のデカ”感満載で舞台を動かします。派手な動きに大きな声、サイバー犯罪という目に見えない題材の中、“アナログとデジタル”、“昭和のオヤジと令和の若者”の対比が明確で、ストーリーが誰にでも受け入れやすくなっています。


私は初日に観劇しましたが、関係者の姿もチラホラお見受けしまして、原作の志駕さんも客席にいらっしゃいました。実は過去に舞台プロデューサーだった経歴をお持ちで、初プロデュース作品がふぉ~ゆ~の初舞台だったというご縁があるそうです。


カーテンコールでは、辰巳さんがしっかり長めにごあいさつ。舞台ができる喜び、現状、感謝の気持ちなど、今、皆が聞きたいことを話してくれるのは、下積みの長い苦労人だからこそ。場にあった空気感で包んでくれます。浜中さんは自由奔放。周りの方に肩を組まれたり突っつかれたり、愛されているのが伝わってきました。


ちなみに、声を大にして言いたいのは…とにかくスマホは落としてはいけません!帰りに何度もチェックしてしまいました(苦笑)。

※写真は舞台「スマホを落としただけなのに」より

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