渋谷に大量投棄されたK-POPアルバムとミン・ヒジン代表の会見について考えたこと
JTBCニュース 2024/05/02
4月30日、渋谷公園通りにセブンティーンのCDが投棄されるという衝撃的なニュースが流れてきました。
韓国では、その数日前にハイブ社へ異を唱える会見を行ったミン・ヒジン代表の言葉を添えて報道。環境にも影響を与える販売戦略ではないかと批判されています。
この件について少し考えてみたいと思います。
ニュージーンズの母、ミン・ヒジン
ミン・ヒジン代表とは、元々はSMエンターテインメント時代に少女時代、EXOなどのアートディレクターを務め、その手腕を買われてハイブ社(BTS生みの親であるパン・シヒョク氏が代表を務める韓国の巨大エンタメ企業)に移籍しました。
ハイブ社はミン・ヒジンがガールズグループを育成するための傘下レーベルとしてアドア社を設立(2021年11月)、彼女は代表に就任、2022年7月にニュージーンズをデビューさせました。
ニュージーンズはデビューわずか5か月でビルボードTOP100にランクイン、それにより親会社ハイブの株価も上昇、芸能ニュースによれば、160億ウォンの投資に対して2000億ウォンもの莫大な利益を生み出したともいわれています。
さて、そのミン・ヒジン代表がハイブ社から背任(ニュージーンズを連れて独立しようとした等)で告発されることになる。彼女が4月25日に開いた記者会見は、それらが事実無根であることを訴えたもので、2時間にわたってハイブ社(やパン・シヒョク氏)から受けた不当な扱いを訴えたのです。
韓国芸能史に残る歴史的な記者会見
K-POP産業の中核企業であるハイブ社内の騒動なだけに注目度は高く、この会見を韓国芸能史上に残るものだと記者たちは捉えているようです。(ちなみに、それまでは歌手のナフナが開いた釈明会見が有名で、記者たちの間ではキャリアを語る際に、ナフナ会見前か後かなんて話もあるらしい。)
会見動画や芸能記者のYouTubeを見た感じでは、ミン・ヒジンはひどく感情的だったし、好き嫌いの分かれるキャラクターだなと思ったけれど、嘘をついているわけではないな、という印象を持ちました。
2時間にわたる彼女の訴えをざ~っくりまとめれば、
「真面目に働いたら、パン・シヒョクよりも成果を出してしまい、不当に疎外された、許せない、悔しい」
ということで、社会人ならば、同情を禁じ得ない話です。
パン・シヒョク氏の印象といえば、JYPのパク・ジニョン氏と若かりし頃アメリカで苦労した話など、見た目の柔和な印象もあるし「純粋に音楽が好きなんだなぁ、大企業にしては良い人?」と思っていたけれど、会見を聞いてからは「あれ?ハイブ大丈夫?」と思うようになっていたところ。。。
倫理的な企業経営とは
そして、今回のCD大量投棄があって、ミン・ヒジンの会見が再び注目されています。
ESGとは「Environment=環境」「Social=社会」「Governance=企業統治」の頭文字をとったもの。
倫理的な企業経営が株価を安定、上昇させ、投資を促進する。一方、その逆は企業価値を落とし、長期的な成長を望めなくしてしまう、というものです。
ミン・ヒジンが言う、「オイル、溶ける紙」はおそらく、アルバムに使用する印刷インクやら紙が環境適合しているか、という話。
ハイブ社(セブンティーンは傘下レーベルのプレディス社)は、そうした(上辺だけ)環境に配慮している体をとりながら、実際には一人が何枚も同じアルバムを買うように仕向ける戦略を取っていて、それはESGではないと批判しているわけです。
本気で環境や社会のことを考えるならば、無駄に作らない、無駄に売らない。そして「アルバムをより少なくプレスしないと、少なくプレスできるように作らないと」と言っているのは、販売戦略ではなくコンテンツで勝負しましょう、コンテンツの文化的な価値を守り高めるのが音楽業界としての矜持でしょう、と言いたいんだろうと思いました。
欲しいカードが出るまでファンに購入させる、購買欲をあおる商法によって得た売上は本当に健全な競争なんでしょうか。若者たちのお金がそうやって大企業に吸い取られていくことは搾取でなはいのか?と思わざるを得ません。
若者搾取といえば、所属アーティストにも言えることではないでしょうか。 今回の件で、セブンティーンを知った人は、彼らの人気は不当な方法で作られたものだと思うかもしれません。彼らの努力や実力が正当に評価される機会を奪っているかもしれないのです。渋谷のことは直接的にはCDを捨てた人が悪いのですが、このような商法を取っていれば、予測可能な結果であり、やはり企業にも責任があるのではと私は思っています。
私は、逐一動きを追うほどではないけれど、セブンティーンが好きで「NANAツアー」で彼らの正直な姿を見てはまりました(すごい最近だね。。)。こんな友達がいたらいいな、と思うし、外の世界を知らないほど音楽制作に没頭するウジをはじめとして、一生懸命なメンバーたちを応援しています。そんな彼らの大切な名前をこのような形で世間を騒がせてしまった会社の責任は大きいと思う。
経済的な目的のためになりふり構わぬ大人たちが、環境を破壊し、文化を破壊し、若者の夢にも傷をつけ、ファンからは不要にお金を搾取する。
音楽だけでなく、あらゆる業界においてこうした無意味な販売競争が繰り広げられているように思います。不健全な競争によって獲得した数字が結果として社会的な評価を得てしまう。
そうやって、不透明な工程で生み出された数が意味を持つようになれば、売るための手法に必死になり、より良い文化の担い手(アーティストや業界関係者)は減っていくのではないでしょうか。
最後に、、、
ミン・ヒジンは会見でこの様な主旨のことも言っていました。「自分はゴルフもしないし、飲みにも行かないで仕事に邁進してきた」。いわゆるホモソーシャル(男たちの絆)に染まっていない人なんでしょうね(女であっても名誉男性として男たちの絆に染まることはできます)。
この狂った商業主義の中心で、正気を保っている人物がいるということ自体、奇跡のような出来事だし、まだ大丈夫なんじゃないかという希望も感じたのです。
そして、ミン・ヒジンが女性であることが「今までの当たり前がこれからの正解であるとは限らない」ということの一つの証しでありスタートであってほしい、と心から願うのです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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