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言葉の影響を受けた存在が、一線を退いた。

物心ついた時からお笑いが好きで、コテコテな大阪の漫才や新喜劇を見て育った。現在の仕事につながったのは、芸人さんたちが紡ぐ「言葉」への興味が根源なのかもしれない。

そんな僕に、「衝撃的な笑い」を見せてくれた存在が、先日表舞台から身を引いた。

「彼」を最初に見たのは、小学生のころに始まった「爆笑オンエアバトル」。
それまでほとんど触れたことが無かった、関東の笑い。
関西以外の芸人さんをしっかり見たのは、この番組が初めてだったと思う。

曲に合わせた動きで笑いを生み出す「底ぬけ AIR-LINE」や「テツ and トモ」、1度の出番でいくつものショートコントを見せる「江戸むらさき」、関東弁での漫才の形を見せてくれた「号泣」。
大阪では見なかった笑いを、何組もの芸人さんが見せてくれた番組だった。

その中で最も衝撃を受けたのが、
「彼」=「小林賢太郎」のいたコンビ「ラーメンズ」だ。
正直、第一印象としては面白さが理解できず、なぜオンエアされているのか分からなかった。
本人曰く「お客さんにも頭を使わせる」ネタは、小学生の僕には早すぎたのだと思う。

そこから10年ほどが経過し、20歳を超えたある日。

何気なく見ていたYouTubeに、オススメとしてラーメンズが表示される。
彼らの単独ライブでの1ネタ。「同音異義の交錯」というタイトルだった。

大人になった僕は、このネタを見て大きな衝撃を受けた。

「言葉遊びってこんなに面白いのか」

”ボケてツッコむ”というスタンダードなお笑い文化とは一線を画す笑いに、あっという間に虜になった。

そこからはとにかくラーメンズを漁る日々。

1回のライブでやるネタが、それぞれでリンクしていく構成にも痺れる。
独立していたはずの時間全てがつながっていき、伏線回収される瞬間は、ものすごくワクワクした。

その他にもネタには言葉遊びがふんだんに盛り込まれていて、

【50 on 5】では50音を…

【ドラマチックカウント】では数字を…

取り入れている。

ラーメンズを知れば知るほど、「言葉」でできることの幅広さ・奥深さ・面白さを知った。

そこから彼は「劇作家・パフォーミングアーティスト」という肩書で、舞台を中心にソロ活動とグループ活動を並行し、ありとあらゆる方面で「表現」を追求していくことになる。

全てを追うことはできなかったが、そのセンス(という言葉はあまりに陳腐すぎるが…)に触れるたび、僕は新たな世界を見たような感覚になった。
そんな稀有な喜びを提供してくれた存在だったと思う。


ラーメンズとしての活動は2009年が最後。
そこから今日に至るまで活動休止状態にあり、その間に僕もすっかり大人になった。

いつかラーメンズが全国ツアーをするのを待ちわびていたが、今回の小林賢太郎引退で完全に活動終了。その夢はもう、叶わない。

数年前に見た「コント集団 カジャラ」の舞台が、彼を生で観た最初で最後の機会になった。
たった1回の、この舞台での姿は、いつまでも脳裏に焼き付けておこう。

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