『金沢プライドパレード2021』前夜祭スペシャル企画 八方不美人と学ぶ ~地方とLGBTQ+とHIVの最新事情
この記事は、2021年10月17日にはてなブログで書いた記事です。
noteにアップしなおすということで、加筆修正をしています。
2021年10月9日(土)に金沢プライドパレードの前夜祭スペシャル企画に参加してきた。
HIVの最新事情ということで、HIV陽性者当事者やアライではない、陰性者でなおかつHIVにかかわることのない人たち向けの内容となっていた。
今回の目玉
北陸3県(福井、石川、富山)在住のMSM(男性とセックスをする男性)のためのHIV検査機会の提供に関するプロジェクト
の報告だ。
このプロジェクトの趣旨は、2019年、2020年に保健所での相談件数が減少したことによるものだ。また、県立中央病院も関係する研究プロジェクトとなっていということだった。
この研究プロジェクトでは、ゲイアプリやゲイメディアなども協力してはいるが、北陸地区の特殊な地域性があったこともあり、ゲイバーが重要な役割を果たしていたようだ。
今回のプロジェクトは、HIVの郵送検査となっている。そして、この郵送検査キットは、本来4,000円程かかるものらしい。それが匿名、無料で行ってもらえるのはありがたいことだ。
何よりもHIVの郵送検査が行えるようになることは、HIV検査の幅が広がり、検査機会が増えることが期待されるので良いことだと思う。
僕はHIV陽性者なので、僕のHIV感染が判明した22年前にHIVの郵送検査があったら、利用しただろうなって思った。
ぷれいす東京がプロジェクトのために行ったこと
今回、ぷれいす東京ではこのプロジェクトために
WEB、専用のSNS(Twitter、Facebook、YouTube)を立ち上げ
厚生労働科学研究事業補助金エイズ対策政策研究事業「HIV検査体制の改善と効果的な受動推奨の為の研究」(研究代表者:今村顕史/東京都立駒込病院)からの委託で、認定NPOぷれいす東京が管理・運営バーへの依頼(全店に書面依頼し、Twitterでも連絡をしている)
金沢のバーでは説明会を実施している(自粛のため、1店舗のみとなっている)
金沢ではNGOへの説明も行っている(個別2団体、グループ、個別メール)
石川県立中央病院スタッフとオンラインで情報交換
を行っている。
広告協力をお願いした団体等
ELLY福井
ダイバーシティラウンジ富山
レインボー金沢
レインボーハート富山
ちょっと地下室 ~北陸ゲイnet
9monsters
new TOKYO
となっている
また、検査結果の受け取り可能な店舗・団体は
area RAINBOW
スナック峠
ポテト
こうじ
POWERBOMB
RMX(リミック)
grandoa
pant hera
にじ♡はぐ石川 ひだまりの会
真珠貝
Bar ぷにぷに
まきの助産院(にじ♡はぐ石川)
併せて、協力店舗、団体がtwitterで情報を拡散してくれている。
広告協力をお願いした、『ちょい地下室~北陸ゲイnet』さんは、最初反応がなかったそうだ。それが、 地元ゲイバーが間に入ることで、無償広告の掲載も申し出てくれたようだ。また、ちょい地下室さんでは、北陸3県の各エリアボード内にバナー広告を設置することで呼びかけを行っていたと、ぷれいす東京の生島さんから報告があった。
どのメディアを見て郵送検査を知り、研究参加協力に至ったかを調べたところ、
9monsters
ちょい地下室~北陸ゲイnet
newTOKYO
が上位に挙がっていた。
この研究プロジェクトでは、東京都立駒込病院の今村先生もQ&A動画コーナーで説明を行ってくれていた。そして、HIVに関する相談は全てぷれいす東京で受けることにしていたということも報告されていた。
プロジェクトの結果
〇 広報
9monsters
→ 広告掲載期間:2021年3月1日~3月21日ゲイバー、団体にフライヤー配布
Twitter
ちょい地下室~北陸netでのバナー広告掲載
〇 WEB閲覧
ユーザー数 :10,182
アクセス回数:13,806
北陸3県のユーザー数
石川県 :169
富山県 :138
福井県 :128
〇 事前check(事前アンケート20問)
属性と背景のチェック
研究の説明と参加の同意
事前の確認事項
回答者:206人
〇 郵送検査KIT
送付申込 :173件
内訳は、
個人指定:83.2%
郵便局留め:14.5%
協力団体/バー:2.3%
検体返送者:135件
〇 事後アンケート(21問)
回答者:99人
ということになった。
配布資料を確認して興味深く感じこと
福井県の受検者数が富山県、石川県に比べて低い
富山県の40-44歳の受検者:9.2%
石川県の20-24歳の受検者:4.3%
福井県の30-34歳の受検者:4.7%
40-44歳の受検者:9.3%
福井県の受検者の中にFtMの方、性別を決めたくない人がいたがいたこと
受検者にレズビアン、異性愛者がいなかったこと
石川県の受検者にセクシュアリティを決めたくない人、富山県と石川県の受検者にセクシュアリティがわからない人がいたこと
福井県の受検者ではその他に該当する受験者がいたこと
北陸の人にも東京、仙台、名古屋、大阪、福岡、那覇のHIV関連のコニュニティセンーを利用していること
HIVマップ(HIVの情報サイト)、HIV検査・相談マップの利用があったこと
今回の「check72」の郵送検査の情報を9monstersやTwitterで知った人が大多数であること
MSM(男性とセックスする男性)の方々は、実名登録が基本となるFacebookからHIVの情報を知ることがないという事実
特にびっくりしたのが・・・
なんと、北陸で有料ハッテン場を利用した人がいることだ(おそらくは、ほぼ東京などの都会での利用がほとんどだと思われるが・・・)
事前アンケートの中で郵送検査についての質問した項目があるが次のような点に不安があることが判明した。
自分で採血すること
検査の精度
HIV陽性だったときどうすればいいか
確かに、自分の血液をろ紙に染み込ませるとき、適切な量の血液が染み込ませられているかが不安になることがある。また、判定が擬陽性(要請の可能性がある)と出たとき、どう対処すればよいかもわからないし、検査結果についてすぐに相談できるわけではない。そして、再検査はどこで受けたらよいのかの情報もすぐには入手しづらい状況がある。
検査結果が陽性だった場合、不安な気持ちの解消ができるかどうか
ぷれいす東京の連絡先を知らなかった場合、どこに相談してよいかもわからないので不安になることもある。それに対し 保健所や病院、クリニックであれば、検査後のフォロー体制もしっかりしているが、郵送検査だとどうなっているかが不安だってのもうなづける。
不安なまま、どうしたらいいのかがわからなずにってことも往々にしてあるだろう。
この「check72」の郵送検査は、報告を聞く限りでは、検査を受ける人が増えることが目的なので今回の結果は良かったのかもしれない。
事前アンケートでは、
これまでにHIVの検査を受けた経験があるか?
過去1年以内に、HIV検査を受けようと思ったのに、保健所や医療機関の都合で受けられなかった経験があるか?
の質問もしている。
一定数、「check72」が人生初のHIV検査になった人がいたことは、過去1年以内にコロナ禍の影響もあってHIVの検査を受けられなかった人がいたことが判明している。
HIVの検査に関して言えることは、
検査場所が少ない
検査に行く時間が合わない
検査の際のセクシュアリティの説明が面倒
知り合いに会うかもしれない
といったプライベートとの兼ね合いも出てくるようだ。
「検査場所」の問題について
無料匿名ということでいうと、保健所に限定されるが、保健所によってはHIVの検査を実施していないところもあるので少なく感じるのかもしれない。
「検査に行く時間が合わない」について
HIVの検査を実施している保健所、医療機関のほとんどが、平日のみの実施になってしまうので
検査を受ける
検査結果を聞く
ということが、平日に仕事を休んでいくことになってしまうので、時間が取れない状況がうまれるということだ。
今回の「check72」から見えてきたのは、
検査に行く時間が合わない
検査の精度に不安がある
HIV陽性だったときどうすればよいか不安がある
この3点を天秤にかけたとき、郵送検査という手もあることはわかったが、フォロー体制、自分の気持ちに寄り添う形にはならないのではないだろうか。
ましてや、検査結果がHIV陽性となった場合における不安な気持ちというのは、当事者である僕はすごくわかる。
なので、出来るならばリアルに検査に行くことをオススメする。
コロナのPCR検査と同様で、HIVの検査も誰にも知られたくないという気持ちもあると思う。また、HIVの情報は沢山発信されているが、コミュニティ内で浸透しているとは思わないし、男性とセックスをする人の中であってもコミュニティに属している意識のない人もいるので、どう検査に結びつけていくかが課題なのではないかと思う。
日本でHIVは男女間よりも男性同士での感染率が大きな割合を占めている。男性とセックスをする男性だからと言って必ずしもゲイだとは限らない。恋愛対象が女性の場合でも、男性との性交渉経験がある人が少なからずいる。また、ゲイ、バイセクシュアル男性、MSM(男性とセックスをする男性)の中には既婚者の方がいることも知っておいて欲しい。
特に、北陸の地域性を考えたときに
結婚して一人前
家族を持って、持ち家を持って一人前
といったところがある
なので、今回の検査では一定数の既婚男性もいたことが報告されている。
「check72」の郵送検査からHIV陽性の当事者が考えさせられたのは、
検査の重要性
HIV及び性感染症の予防
MSMとセックスについて
ということかもしれない。
最新のHIV予防は、コンドームを使用することだけではなくなった。
HIV治療薬の
ツルバダ
デシコビ
の服用によるPrEP、オンデマンドPrEP(セックス前後のみの服用)の予防法も世界中で浸透してきた。ただ、このPrEP予防の研究で判明していることは、パートナーとのHIV感染をしないことは確認されている。しかし、パートナー以外からHIV感染が起こっているという事実もあるのだ。と、いうことは、HIV以外の性感染症に感染している可能性があるし、パートナーにHIV以外の性感染症をうつしている可能性があるということだ。
HIVはPrEPによって予防出来るが、それ以外の性感染症はクスリによる予防は出来ない。なので、気付かないうちにHIV以外の性感染症に感染していた場合は、HIVに感染しないことは0ではないのだ。
そういった意味でもHIV予防の最新情報としては、コンドームとPrEPの両方を併用することだ。
ただ、『コンドーム』『PrEP』の費用対効果を考えなければならない。
そして、感染予防をするのはHIVだけで良いのかということだ。
HIVの予防にコンドームを使うことは、HIVだけでなく、HIV以外の性感染症も同時に予防出来るのだ。
どうしてもコンドームを使わずにPrEPによってHIVの予防を行いたい場合は、必ず梅毒などの性感染症の検査を定期的に受ける必要がある。
あくまでもPrEPを実施している病院やクリニックだと検査がセットになっているので問題はない。でも、個人輸入でPrEPを行っている場合は、性感染症の検査については自分で定期的に行う以外方法はない。また、HIV治療薬である『ツルバダ』『デシコビ』は、腎機能に問題がある場合は使用できないのだ。
いろいろな条件をクリアして、初めてPrEPが実施できるようになる。
このPrEPはHIV予防の最新の方法になるが、声を大にしていいたことがある。
PrEPはHIVのみの予防法である
毎日服用のPrEPの場合、飲み忘れは許されない
現在は保険適用外なので自費になっている
費用は病院やクリニック毎に違う
このことは必ず押さえておいて欲しい。
最後に
最新情報として今回のイベントを通してお伝えしたいことは、
HIVの予防はHIV以外の性感染症を予防する必要がある
HIVの予防とセットで『HIVの検査』『HIV以外の性感染症の検査』を受ける
HIVの予防は『コンドーム』『PrEP』があるが『PrEP』はHIVのみの予防法である
HIVの検査は自分の都合がつく時間に手間にならない方法で行う
※郵送検査については研究段階なので、各地のコミュニティセンター、ぷれいす東京、ゲイ向けアプリ9monstersの情報をチェックする必要があるHIV、性感染症問わず、地方であったとしても予防情報は最新情報にアップデートしておく
ワクチンのあるものはワクチン接種をしておく
だ。
皆さんが、HIVなどの性感染症を予防すること、検査を受けることによってあなた自身の性の健康だけでなく、あなたの大切な人の性の健康をまもれることにもつながっていることを忘れないで欲しい。
HIVの最新事情ということで、ぷれいす東京のHP、各PrEP実施クリニック、各地のコミュニティーセンタなどのHPをご紹介しますので、ご参考にして下さい。