会計士短答試験の受験体験記

0、はじめに
この受験記は、2020年第2回短答式試験に合格した時の経験を書いたものです。Twitterでnoteを書いてほしいとの声を何回かいただき、やっと書きました。遅くなってすみません。

社会人で、独学受験だったということもあり、イレギュラーな内容も含まれていますが、参考になる部分だけ読んでもらえればと思います。書いていることはだいたい正確かと思いますが、結構前のことなので間違っていたらご容赦ください。。

1、勉強時間と期間

短答試験:767時間
開始時期:2020年1月に勉強を開始
→コロナで5月から8月に試験が延期
→2020年8月に短答合格

2、得点

財務会計108点
管理会計72(67)点
監査論80点
企業法65点
合計 325(320)点
ボーダー 320点
※管理会計は出題ミスで一問全員合格でした。サーベイの段階では320点。

3、総評

予定では2020年12月に短答合格を目指していましたが、コロナの延期で3ヶ月延期となった結果、ギリギリ滑り込み合格できました。なお、そのせいで8月→11月という地獄の論文受験を強いられることになりました。。。

得点の総評としては、財務会計のカスっぷりが目立ちますね。財務会計の失点を管理会計がカバーしたという感じ。監査・企業法はボーダーくらい。企業法はもう少し取れても良かった。

論文試験はまあまあ余裕をもって合格できましたが、短答式試験はボーダーぎりぎり。純粋な難易度に関しては短答試験のほうが上だと思います。

4、模試

TAC模試を一回だけ受けました
財務会計論…128点(偏差値60.2)
管理会計論…54点(偏差値55.0)
監査論…70点(偏差値60.8)
企業法…40点(偏差値43.1)
合計…292点(偏差値56.5)
判定…C

5、各科目について

①財務会計(理論)  32/80点
・独学最難関科目
・ちゃんと知識をアップデートしましょう

【主なテキスト】
過去問

独学受験生は体系的なインプットができてないので、基礎的な理解を問われるとすぐに死ぬということを体現した科目。監査論や企業法が過去問と同じような形式で出てくるのに対し、財務会計理論は過去問どおりにでることが少ないです。なので、過去問をやり込んだところで点数はあまり伸びません。きちんと時間をかけて体系的に勉強したほうがよいです。しかし、まともな市販のテキストがないので、いずれにしても独学最難関。
あと、監査論もそうですが、基準の改正の影響を受けやすい。自分は収益認識は触れずに短答試験に臨みましたが、本試では当たり前のように出題されました(そして死にました)。こういうところも独学生には厳しい。

②財務会計(計算)  76/120点
・簿記1級相当
・ありがとう、コントレ
・連結を捨てても合格はできるが…

【主なテキスト】
ALPHA(簿記1級の神参考書)
コントレ
過去問

簿記1級相当の地力があれば6割は取れます。簿記1級で太刀打ちできないようなレベルの問題は周りもできてないので、捨てても何とかなってしまいます。ただ、ここで妥協してしまうと論文式試験で大きなビハインドを負うことになります。論文式試験は会計学で5割、租税法で3割決まるといっても過言でなく、後々のことを考えるなら、簿記1級だけでなく、もっと先まで勉強しておいたほうがよいです。

さて、自分は簿記1級レベルの問題が解けるようになってから、コントレ周回を始めました。一問一問は非常に重いですが、問われるエッセンスがすべて含まれているので、これだけで事足りると思います。自分は見ての通り、財務会計は最底辺層なので偉そうなことは言えませんが、丹念に仕上げれば8割近く得点できるだけの実力が身につきます。

短答試験は個別論点偏重なので、連結会計や組織再編を捨ててもボーダーには届くと思います。実際、自分は勉強が間に合わず、連結はのれんだけ出して残りは捨てる方針を取らざるをえませんでしたが、個別論点が取れたので持ちこたえました。ですが、論文試験では連結は避けては通れない、というより最重要科目になるので、後々のことを考えると捨てるべきではないです。

③管理会計  72/100点
・タイムマネジメント=難易度のマネジメント
・管理理論で事故死を防ぐ

【主なテキスト】
過去問
とおるテキスト(簿記1級で有名なやつ)
大原の一問一答

短答管理は会計士試験の中でも最も時間が少ない科目で、タイムマネジメントが大事になります。個人的にはタイムマネジメント=難易度のマネジメントだと思っています。つまり、簡単な問題から確実に解くのが大事。そして、そのためには、問題を読んだときに問題の難易度をざっと把握できる能力を磨く必要がある。

管理理論については範囲が狭く、得点しやすいです。個人的には最もコスパの良い分野。理論である程度取れると、計算が多少コケても即死は免れるので、苦手な人こそ管理理論に力を入れるべきです。

あと、なるべく早い段階で自分が管理会計得意人間か不得意人間かを把握しておくと、受験戦略を考える上で役に立つと思います。つまり、70点を目指すか、50点を目指すか、早いうちに決めておくべき。管理会計が苦手という人は50点でも合格できるように他の科目で稼ぐ必要があるが、そこから目を背けてしまうと、短答合格はかなり遠のいてしまいます。

④監査論 80/100点
・過去問が全て
・消去法が最も有効に機能する

【主なテキスト】
過去問
大原のテキスト・一問一答
TACの個別問題集

自分が受験した回は過去問からの出題が多く、過去問をマスターしていれば7~8割取れてしまうような回でした。今後も同じ傾向が続くかわかりませんが、最も過去問演習が重要な科目といえます。もちろん、過去問を丸暗記しても意味はないです。解くときは必ず全ての肢の正誤を判断した上で答えを出すようにすべき。

ただ、回答をする上では、肢が1個~2個わからなくても消去法的に答えが出せてしまいます。D論点にこだわるより頻出のA・B論点をきちんとやったほうが効率が良いです(どの科目にも言えることですが・・・)

5、企業法 65/100点
・細かい知識のオンパレード
・論文試験とは別物と考えたほうが良い

【主なテキスト】
過去問
大原のテキスト・一問一答
TAC答練1~5回

見てのとおり、出来は良くないです。敗因は財務理論と同じく、体系的な理解が足りていなかったから。模試があまりにも出来なすぎたため、メルカリで答練を購入してます(論文試験を通じて、唯一の答練でした)。自分が短答試験をやり直すなら、企業法と財務理論だけはテキストをちゃんと読み込むと思います。

なお、論文試験は全く別物だと感じました。細かい知識勝負の短答試験と違って、条文が全て与えられている論文試験は細かい暗記は求められません(※)。

ちなみに司法試験の参考書が役に立つかもと思ってブックオフに行ってみましたが、傾向があまりに違いすぎたので諦めました。ちなみに論文試験では司法試験のテキストは役に立ちました。

※たしかに論証(趣旨・規範定立)の暗記は必要ですが、理屈が分かっていれば記述できるので性格が違います

6、最後に

つらつらと偉そうなことを書いてきましたが、ギリギリ合格(ほぼボーダー)だし、財務会計は悲惨だし、無謀な短答受験だったと思います。しかし、1月に勉強を初めて5月(8月)に合格するためには極端な戦略を取らざるをえなかったのも確かです。その意味では、ギリギリ合格した人間のリアルな体験記かもしれません。

しかし、最近、受験者が増えている傾向を考えると、自分がもう一回受けたら受からないだろうな、とも思います。

この前、「社会人は会計士試験には受からない」とか「独学で受験は無謀」とか見かけましたが、いくらでも例外はあるので、とにかく頑張るのみだと思います。短答試験の前日に投稿してしまいましたが、みなさんのご武運を祈ります。

7、おまけ

下記の受験体験記のほうがよっぽど具体的で役に立つので、こんな雑文を読む時間があるなら、こっちを読んでおいたほうがよいです。(みなさん、ほぼ独学なのに超余裕で合格してて本当にすごい。。。)

kakyuさん:
https://note.com/kakyu_cpa/n/ncab6af338328

ayumuさん:
https://note.com/aspiring/n/nbfbb988125d2

親子さん:
https://kaikeijin-course.jp/2022/02/25/48744/


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