「、」

僕は泣きながら向こうに走っていく弟を追いかけている。

こういうときの弟の脚はやたらと速い。
こんなのいったい何回目だよまったく。
だけどホントいい加減にしてもらいたい。
ビュンビュン遠ざかる背中をにらみつけた。

お父さん、お母さん、親戚のおじさん、学校の先生たち、まわりの大人からは「お兄ちゃんだから」「いつもしっかりしてるね」と言われる。
だからちゃんとしなくちゃ、っていつも思ってきた。

でも、少し早くうまれただけで、僕はずっと我慢しなきゃいけないのか?これからも。我がまま言い放題のあいつに。いろんなものを譲ってあげなきゃいけないのか?

弟の背中まであと少し。
さすがに今日という今日はこっちも限界だ。

息を切らせながら、肩を掴んだ。
振り返った弟は僕の顔を見ると大きく目を見開いた。

「兄ちゃ、」

…………

いつもと違う僕の様子に、弟はきまり悪そうに言葉を探していた。

「ごめん」

ほんの数秒、僕らは黙ったままだった。
あがった息を少しずつ整えていく。

ややあって、弟が口を開いた。

「兄ちゃんのぶんのプリンアラモード生クリームドカ盛りミックス改・サマースペシャル食べちゃって、ホントごめん。お、お母さんに頼んで買いなおしてもらうから」

「兄ちゃんがそんなに泣くとは思わなかったんだ、……あ、これ。」

僕とは対照的に1ミリも泣いていない弟からあわあわと渡されたティッシュで僕は思いっきりハナをかんだ。


※一文目、頭の中で無意識のうちに打った句読点の位置によって「普通の話」になる人と「そっちかw」となる人が分かれる、だまし絵みたいなショート話を目指した

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