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『チリンの鈴』→ダークサイドアンパンマン

チリンの鈴

アンパンマンが報われなかった世界線。
チリン。

アンパンマンもともすれば
そちらに落ちる可能性があったように思える。

“復讐の終ったチリンは、これからどうしようかと考えた。
「ぼくはもとの羊にかえろう。緑色の牧場へいって仲間とくらそう」
しかし、どの牧場へいってもチリンをいれてくれるところはなかった。
チリンをみると、いっせいに犬はほえ、羊たちはにげていった。
「ぼくが君たちを救ったんだぞ、なぜぼくをこわがるんだ、ぼくはウオーをたおした、ぼくは自分の生命をかけて君たちをまもったんだ」
羊の群れの中から年老いた羊がでてきてチリンにいった。
「かえりなさい、ここはおまえのような血のにおいのするヤクザもののくるところではない、私たちは平和にしずかにくらしたいのだ」
「くそ、なにが平和だ、なにがヤクザだ、自分でたたかうこともしないで、人間や犬にまもってもらっている卑怯者のくせに」”

P53 十二の真珠 チリンの鈴

牧歌から始まるものの、
物語の佳境にさしかかり
ある一線を越えてしまう。

それよりのち
本来の性質から
異質なものへと変わってしまい、
元には戻れなくなる。

おやすみプンプンを思いだす

アンパンマンとチリンの違いは、
行為自体には無いともいえる。

チリンは家族や仲間を殺されたから、
殺した。
アンパンマンは仲間にいじわるをされたから、
懲らしめる。

それはただの程度問題なのだろう。

チリンはかつて仲間だった者が
変わらず仲間だと思っていた。

アンパンマン(の歌)は、
愛と勇気だけが仲間だと思っている。

それぞれの違いは
他者に期待しない姿勢。

期待して
期待どおりにいかないと
裏切られたように感じる。

アンパンマンは
チリンだったころの教訓から
学び取ったのかもしれない。

その他のもの(詩、他の話)

詩部分もすごいイイ。
七五調語感は
宮沢賢治をも想起させる
リズムの良さ。

ハッピーエンドではない話も多い。

一方を助けたら、
のちに敵に復讐され大きな代償を払うお話。
これは因果応報でもあり
ポジションを決めると言うのは
味方をつくるということ
ではありつつ、
敵もはっきりしてしまうということ。

売れることをやるのか、
やりたいことをやるのかの葛藤のお話。

日中戦争や戊辰戦争の
メタファーかなと思ったら、
やはりそうだったお話。

極限メンタル化での
利他性のお話も
おもしろかった。

ただし、
利己的に振る舞っても
決して間違いで無いのだと思う。
が、この利他性の美しさ。

少数派に対してや
見た目がちがう者を
迫害してしまうのは
人間の構造的な問題というお話。

コミュニケーションだけが
それを越えられる示唆も見て取れる。

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