デジタルツインを活用した交通マネジメントの海外事例
デジタルツイン×交通マネジメントで最新動向を整理してみました。英語圏以外の海外事例もありますので、関係者の方には有益な情報になると思います!
事例1:バーチャルシンガポール
機関:NRF(National Research Foundation:シンガポール国立研究財団)主導
目的:デジタル世界の中に、実験可能な仮想のシンガポールを作ることで、人の動きや交通状況、建物の変化などのシミュレーションを可能にするため。
概要(対象フィールド): 自然・建築物・道路・人や車・交通機関などのあらゆるデータ を統合し、仮想空間上に3Dモデルとして本物そっくりの国を再現するプロジェクト。国の「Smart Nation」構想に基づき、NRFが研究開発プログラムの一環で7,300 万シンガポールドル(約60億円)を投入して2018年に完成
手法: 政府機関からのデータ、3Dモデル、インターネットからの情報、IoTデバイスからのリアルタイムの動的データなど、さまざまなデータソースを統合して再現した。
成果:
シンガポール政府はこのデジタルツインを活用して、都市計画を行っている。
デジタルツイン上に新しい道路を作ることで、本当に交通状況が改善されるかを事前にシミュレーションすることが可能
新しい道路設置が、結果として交通渋滞を悪化させてしまうリスクも事前に予測可能
建物の高さ、屋根の表面の素材、温度、日射量などのデータの入手により、都市計画者は、どの建物が効率的にソーラー発電できるのか分かり、ソーラーパネル設置などの計画に役立てられる。
更に日照量を分析することで、通常の日にどれだけの太陽光エネルギーを生成できるか、またエネルギーとコストの節約もシミュレーションが可能
障害者や高齢者のためのバリアフリールートを識別して表示するために使用可能
課題:(2021年時点)
技術面では、データ更新をどう実施していくかが大きな課題。
運営面ではユースケースの実装。概念的なレベルではなく、エンドユーザである政府機関が、自身のデータを加えて使っていけるように調整していくことが重要で、これがなければデジタルツインの運営根拠、すなわち予算も続かない。
研究開発ステージから実運用ステージへの移行は、まだ時間がかかると考えている
参考URL
①https://www.dlri.co.jp/pdf/ld/2019/wt1912.pdf
②https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bunyabetsu/machizukuri/pdf/digital04_san02.pdf
事例2:クラウドとAI技術を活用した都市管理システム
機関: 中国杭州市、アリババグループ
目的: 市内の交通渋滞と交通事故の課題を解決するため
概要(対象フィールド): アリババグループと2016年に契約した杭州市は、「ET City Brain(都市大脳)」と名付けられたクラウドとAI技術を活用した都市管理システムを導入した。
ET City Brainは、あらゆるリアルタイムの都市データを活用して都市のオペレーション上の欠陥を即座に修正し,都市の公共リソースを全体で最適化する
これにより,都市の行政モデル,サービモデル,産業開発の分野に数多くの飛躍的な革新がもたらされた
手法:
事故や渋滞の検出とスマートな対応
ビデオ映像から交通事故や渋滞を認識することで,インターネットデータとアラームデータを統合し,都市全体の交通事故を即座に包括的に把握する
交通渋滞と信号制御
AutoNavi,交通警察のWeiboアカウント,ビデオのデータを統合することで,高速道路や一般道の交通状況を包括的に評価する
公共交通機関と配車
AutoNavi,Wi-Fi プローブ,キャリアなどのソースデータを 利用して,特定地域の乗客の遅延率を監視し,収容キャパシティのニーズを推測する
成果:
ET City Brainは、映像解析テクノロジーを用いて渋滞や事故の検出を速やかに行い、リアルタイムで信号を最適化することで都市の渋滞緩和に貢献している
緊急時には警察や救急車両が優先的に走行できるよう、配車指令や信号調整も対応
救急車の到着が早まるだけでなく、事故の特定精度が92%を超えた
自動信号制御により,道路上の平均移動速度が 15 %アップし,平均移動時間は 3 分短縮された。緊急車両の対応時間が 50 %短縮され,救急車の到着を 7 分早めることができた
パイロットのバス経路の乗客数が 17 %増大した
参考URL
①https://dx-consultant.co.jp/overseas-china-smart-city-four-case/
②https://www.agi.or.jp/media/publications/report/report2020-08.pdf
事例3:大学キャンパスの交通フローのデジタルツインによる可視化と予測
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