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GRでモノクロ写真をストイックに撮ってみて考えたこと
なんどかモノクロ写真についての記事を書いていますが、今回はRichoのGR Digitalのことについて書きます。
GR Digitalは2005年に発売された、いわゆる「高級コンパクトカメラ」です。現在ほどデジカメの機能が豊富ではなかった時代においても、機能よりもGRレンズの性能を中心にした独特な雰囲気をもった存在でした。
noteでデジカメUXの記事を書くようになり、20年のデジカメの歴史を振り返る中で、改めてその魅力を味わってみることにした
ストイックさが撮影を面白くするか?
最近のデジカメは、大量撮影、高速撮影、多様機能、と物量作戦で、これまで撮れなかったシーンを撮れるようになっていますが、その結果撮影することがカメラ任せになり過ぎて、つまらなくなっているのではないかとい仮説を立てました。
私自身はLumix G9Proを購入するなど物量作戦でどこまで撮影領域を広げ楽しめるかということをテーマにしていますが、その反動として逆の仮説を検証してみることにしました。
GRを3つの「縛り」で使ってみる。スタートです。
「モノクロ縛り」
カラーで撮ると解像感や画像処理の「古さ」が目立つためモノクロで使ってみることにしました。これがストイックに使ってみる切っ掛けでした。
10年以上前の設計ですが、当時にモノクロで使われることを重視して作り込みをしっかりとやっていたお陰で今でも十分に通用するクオリティの写真が撮れます。
モノクロの魅力分析は既にありましたし、モノクロで写真を始めた世代の開発者がまだ残っていたタイミングというのも影響しているのかもしれません。
明るいシーンでの「シルキー」な表現から、暗いシーンでISO感度が上がってしまったときの「ノイジー」な表現まで、光の状況によっていくつかの表情を出してきます。それらを上手く活かすことができれば、よりアーティスティックな写真が撮れるはずです。
「広角・単焦点縛り」
GRレンズは「広角・単焦点」と決まってるので、それをどう使いこなすかが”GR使い”になれるかどうかの分かれ道になります。
10年前の私は馴染めず、「やっぱり望遠好き」ということを自覚して使わなくなってしまいましたが、今回はGRレンズの「マクロに強い」というもう一つの特徴で楽しんでいます。
広角のため被写体にカメラを向けた瞬間に「小っちゃ」とまず思います。そこで諦めずカメラを前に出して被写体に近づけていきます。そうすると広角マクロの面白さが顔をだしてきます。
背景が写り込みながら、小さな被写体が存在感を増していくのです。
背景の柔らかなボケと粒状感が、ピントが合った部分の解像感をより強調し存在感を増すような写真になります。
「通勤写真」の定番である、「こんな場所にも自然のガウディ建築がある」という道端感が出しやすいのが広角マクロの魅力です
「内蔵メモリー縛り」
SDカードを同梱しなくても購入後に直ぐに撮影できたり、カードがいっぱいになってしまった時の緊急回避などいくつか理由で、昔は内蔵メモリを持つ機種が結構ありました。GR Digitalもその一つです。
画質を通常のものにしておくと、ちょうど24枚が撮影できます。この枚数を見たときに「内蔵メモリー縛り」を思い付きました。昔のフィルムの24枚撮りと同じ数字だったからです。これが10枚や60枚ではきっと素直にSDカードを入れていたと思います。
当時のUIデザイナーが「24」という枚数にストーリーを込めていたのかもしれないと想像してしまいます。
まとめ
「制限があることでクリエイティビティが上がるか?」という仮説は、しばらくやってみましたが、やはり「可能性と自由によってのみ本当のクリエイティビティが上がる」と感じました。
制限内でそれに対応するためのアイデアは、制限そのものを否定して超越していくアイデアと同じではありません。「縛り撮影」はゲームとして制約を楽しむことはできても、よりチャレンジしていくことには繋がりにくいと思います。
カメラがデジタルになったことで、さまざまな制約から解放され、多くの人が写真を楽しめるようになりました。カラー写真とモノクロ写真の両方を切り替えながら撮れることもその一つです。
今回GRでの「縛り撮影」実験で、デジタルの有り難さも改めて感じ、考えることができたのはとてもよかったと思います。
そして、モノクロ写真が表現として面白いこと、何かを伝えるという意味でプラスに働くことは確かです。デジタル時代にはモノクロを制約と考えるのではなく、エフェクトの一つとしてもっと活用していきたいと思います。