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カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則 (英治出版)


「カスタマーサクセス」と聞いて、以前品質部門のプレゼンテーションで「3つの品質を向上させる。製品・商品・用品」という話をしたことを思い出しました。
製品は「作れるモノの品質」、商品は「売れるモノの品質」、用品は「使えるモノの品質」という話です。この3つが揃っていなければ「良いモノ」とは言えない訳です。

これまでメーカーは、作ることの品質や、売るための品質ばかりに気を掛けてきましたが、最近では複雑な製品が増え、サポートコストが上がってきたため、ユーザビリティの重要性などが重視されるようになってきました。(それでもメーカー系は色々と遅れています)

Webサービスのように、一部を無料で体験してもらい、その上で深くまたは長く使い続けてもらう場合にだけ収益が上がるものが出てきたことでユーザーの体験品質(UX)が注目されるようになってきました。
ここでは利用品質が死活問題になります。

本書は、そのように買ってもらったり、使い始めてもらうだけでは、収益を上げることができないビジネスモデルにおいて、重要なゴールとなる「カスタマーサクセス」について書かれたものです。

ユーザビリティ⇒カスタマーサクセス

この記事でも「ユーザビリティ」と「カスタマーサクセス」を同じように扱っています。両者の違いは、ユーザビリティがマイナスをゼロにするのに対して、カスタマーサクセスはゼロからプラスにユーザーの成功体験をサポートすることにあります。

例えば、Photoshopというアプリがありますが、単に操作できるだけではカスタマーサクセスを提供できたとは言えないでしょう。よりユーザーが思い描いたイメージを、より速く実現できることが求められます。


誰のためのデザイン?

某メーカーで、デザイン部門とユーザビリティ部門が対立しているという話を以前聞いたことがあります。これなどは旧来の(「本来の」ではない!)デザインが、デザイナーが自分の作品としてカッコイイものや個性的なものをデザインしたと考えていたところに、文字を大きくハッキリと。とか一般的な表現の方がユーザーに分かりやすい。などユーザビリティ部門の人が口を出すことで起きたものだと想像します。

つまり、カッコいいのは「製品やメーカーであり、それをデザインしたデザイナーである」という考え方がメーカーやデザイナーの中に残っているのです。

カッコイイのはユーザーであってほしい

「ブランドの服が歩いている」とは、中身の人間よりもブランドの方が上と言っているのですが、これをブランドの人が喜んではいけないと思います。

服は着ている人をイキイキと輝かせて、自信をもって行動できたり、自分の意見を堂々と言えるようにしてくれるものであり、それがユーザーの内面から出てくるものでなければならないと考えるからです。

ブランド服を着る人の中には、その権威を利用して自分を偉く見せたいという人もいると思いますが、それが何かのチャンスを得るためのものであれ、ブランドに相応しい人間になろうと思っているのであれば、それは服が人の心を動かし、行動させているのですから、素晴らしいUXデザインだと思います。

衣服でも、クルマでも、電気製品でも、製品やブランドがユーザーの価値に「下駄を履かせる」時代は終わり、ユーザーがそのブランドを使うことで「気持ちが変わり、行動が変わり、結果が変わる」体験価値を提供する時代になりました。

受動的受益か 能動的受益か サクセス感が大切 

私が大好きなデジカメUXの話で考えてみると、AUTOモードでカメラ任せに撮った写真はカメラのお手柄とい面が多くなります。それに対して設定を変えて難しいシーンを撮ったのであればユーザーの貢献が大きくなります。
ユーザーはそれによって自己表現、自己実現ができたと感じることができるはずです。

ところがカメラの場合、ユーザーに設定を任せると、それに応じて失敗するリスクが高くなるという面もあります。
能動的受益でユーザーの貢献度を上げるということは、同時にユーザーが失敗するリスクも高めることになります。

そのような失敗経験も含めて、成功した時の嬉しさがUXにとって重要という考え方もありますが、これからのUXデザイナーの大きな課題の一つだと思います。

カスタマーサクセスを目指して ダイナブック/BTRON

アラン・ケイ氏が提唱した「ダイナブック」のオブジェクトの再定義という考え方や、坂村健氏の「BTRON」の化身/実身モデルも、ある意味でカスタマーサクセスを実現するための装置だったのかもしれません。

受動的メディアという面だけでなく、情報をユーザーが自由に扱い自分自身の表現として利用できる能動的メディアであることが、従来のメディアと違うことに気付いていたということだと思います。


この記事は、書籍のタイトルと目次から内容を空想し、あたかも読み終わった興奮を伝えるように推薦文を書くという「ネタ記事」です。実際の書籍の内容とは「たぶん」違っていますので、興味を持った方は是非本物の書籍をお読みください。けっしてこの記事で「読んだつもり」にならないでください。

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