SIGMAが撮影レシピに切り込んできた
写真文化を盛り上げコミュニティを活性化することは、どのカメラ・レンズメーカーにとっても共通の目標ですが、ショールームにギャラリーを併設し一部のユーザーに向けての写真教室を開催するというのが昔からの定番でした。
最近ではYouTubeを使って様々なコンテンツを提供したり、SNSを使った話題提供がおこなわれていますが、企業からほぼ一方的なものであったり、個別ユーザーとしての関わりとなっておりそこからはユーザーコミュニティの姿は見えてきていません。
そんな中で、SIGMAからユーザーがコミュニティの中で発信していくための新しい機能が提案されました。
何をシェアするか 写真(モノ)から撮影(行為)へ
写真を記録や作品としてシェアすることは写真の本質的な役割であり、フィルム時代からポケットアルバムで写真を回覧していましたし、インターネット、写メール、iPhone登場による環境変化のなかでも形を変えながら広がってきました。
しかし写真を使ったコミュニケーションのほどんどは写真に写っているものの話題か写真を作品としての話題がほとんどで、写真の撮影テクニックや撮影設定はこれまで重要なコンテンツとして扱われてきませんでした。
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4月25日にSIGMA fp Lが発表され、撮影レシピをQRコードとして保存/読込できる新機能が紹介されました。(fpはファームアップで対応)
個人的な記録として撮影レシピを保存するだけでなく、写真と一緒にシェアしやすいように画像データとなっている点が、同目的で先行しているキヤノンのfotomotiとは違ったアプローチで面白いところです。
画像形式になっていることで、ユーザーは特定企業とは関係なく、これまでのコミュニケーション手段の中で自由に撮影レシピを含むコンテンツをシェアできるようになっています。
SIGMA fpのホームページより(リンク)
もちろん撮影はカメラの設定だけでおこなうものではなく、フレーミングやライティング、撮影意図など総合的に記述しなければレシピとは呼べませんが、その辺りはスマホアプリとの連携によって今後の展開で解決されていくことになると思います。
個性的な写真を撮る「作画表現」
撮影レシピによるコミュニケーションが広がる背景として、まず撮影レシピが特別な意味を持つ必要があります。その前提となるのが個性的な写真を撮る「作画表現」の浸透です。
さらに作品だけでなく、それを実現するノウハウにも広がっています。素敵な作品を見るだけでなく自分でも同じような写真を撮ってみたいという体験指向の時代背景があることも重要なところです。
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過酷な環境にカメラを持ち込み誰も見たことが無いシーンを撮影することとは別の方向として、見慣れたシーンであっても個性的な「表現」としての写真を撮ることが楽しみ方の一つになってきています。
作画表現は昔からありましたが、アナログの時代では失敗のリスクが高く、楽しむためには大きなコストがかかり一般の人には手を出すことができない領域でした。それがデジタルカメラの登場により気軽に表現の試行錯誤ができるようになりました。
撮影側の変化だけでなく、それをシェアする環境もInstagramを始めとするSNSによって整備され機材コスト、操作コストに見合うだけのバリュー(リターン)を得られるようになり写真文化の中で定着してきました。
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フィルムシミュレーションなどのカラーモード、動画のカラーグレーディングなど写真・映像に対するルック(カラーやトーン)への関心が高まってきています。
瞬間的な傾向かもしれませんが、富士フイルムがミラーレスのシェアで3位についているのも作画表現が重視されている結果かもしれません。
そんな中でSIGMA fpにおいても、新しいカラーモードが追加され個性的な作画表現のための入り口になっています。
最近のカラーモードは露出や色によって独特の反応を示すものが流行ってきています。カラーモードに対して露出やホワイトバランスを組み合わせることでダイナミックな変化を起こし、ユーザーが個性的な作画表現を楽しみやすい環境を提供するものになっています。
SIGMA fpのホームページより(リンク)
写真のシェアや活用がより充実することで、こだわりを持った撮影がおこなわれ、そのための機材(カメラ、レンズ)のビジネスが成立するというサイクルが回り始めれば、メーカーにとってもユーザーにとっても楽しい世界になっていくはずです。
今回のSIGMAの撮影レシピに対して、ユーザーがどのような活用方法を見つけ、メーカーが機能をアップデートしコミュニティに寄り添っていくのか今後を楽しみにしたいと思います。
特にスマホアプリがどんなものになるのか楽しみにしています。是非この撮影レシピを中心として、ユーザーコミュニティを盛り上げるようなものになるようにユーザー参加型の企画・開発をやって欲しいと思っています。
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最後に、私が考えている撮影レシピの世界をUX小説にしたnoteを貼っておきます。
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