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そうだったのか! ニコン消去ボタンUX
先日の記事で、ニコンの消去ボタン(ニコンでは「削除」と呼びます)の動作についてざっくりと概要を書きましたが、ユースケースについてもう少し詳しく分析してみたいと思います。
尚、この記事の内容はニコン関係者でもユーザーでも無い私の妄想ですのでご了承ください。
ニコンの消去ボタンの動作には、一眼系とコンパクト系があると書きましたが、今回は一眼系の話です。
<ニコン一眼の消去ボタンの動作>
① 再生ボタンで再生モードに入る
② 消去ボタンを押す →消去ガイドが出る
③ もう一度消去ボタンを押すと消去される
メニューボタンを押すとキャンセルされる
この動作の理由を「消去実行を優先したUI」としていましたが、もう少し具体的なユーザーの利用状況について想定してみます。
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ユーザーはプロのカメラマンです。
被写体はモデルや商品です。
カメラでの再生確認は、撮影プロセスの一部でリズム(スピード)が大切です。
失敗写真はその場でどんどん消していきます。
消すことによって、何を改善しなければならないか自分の中で明確にしていきます。
そして現場で改善し、OKになるまでそれを繰り返します。
もし誤操作でOKカットを削除してしまっても、まだ現場にいるので(撮影途中なので)もう一度撮り直せば良いだけです。
そして、撮影を終了したら(モデルさんを帰してしまったら)絶対にカメラで再生モードは使用しません。
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このストーリーで重要な点は次の4点です。
① 再生が撮影プロセスの一部である (リズムが大切)
② 誤操作して消去してしまっても撮り直しがきく
③ 撮り直しがきかない状況では、再生しないので誤消去することもない (撮影プロセスの一部なので再生確認する意味もない)
これがニコンの本当の凄さです。
ほとんどのメーカーが、コンパクトカメラのユーザーを想定した、「人生に一度しか無い大切な瞬間の写真を間違って消さないように」の発想から出発しているのに対して、
プロカメラマンの撮影ワークフローを知り尽くし「リズム」という無形のUXに対して最大限のリスペクトをしているのです。
これは長いプロカメラマンとの付き合いの中でしか分からないことですし、そのことをUIを通してブランドの主軸に置くCXO(実際は開発主査とか言うと思う)がいてこそできることなのです。
カッコ良すぎですニコンさん!