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デザインとは「分解と統合」である

以前からシステムデザインについて色々な切り口で記事を書いてきました。そこから「分解と統合」というキーワードが見えてきたのでまとめてみます。

一般には、設計は作りたいもの(製品)を実現するために要素に分解し、製造によって統合していく行為と考えられていますが、もう少し視点を上げ「作りたいもの」を考えるフェーズに目を向けてみてもビジョンからシステムデザインを作り上げるまでのプロセスで分解と統合が行われていることが分かります。

これまで使ってきた言葉

私がデザインの対象としているものは、人とモノ、複数のモノやサービスの連携といった複数のものからなる大きなシステムをデザインする「体験設計」から、その大きなシステムの中で使われる製品、その中のハードとソフト、様々なインタラクションや機能といった小さなシステムを作り上げる「製品設計」です。

体験設計から、製品設計まで
大きなシステムから、小さなシステムまで

CosmicDesignから、AtomicDesignまで
上流デザインから、下流デザインまで
コトのデザインから、モノのデザインまで
UXデザインから、UIデザインまで
全体デザインから、詳細デザインまで

このようにこれまで実に沢山の表現を使ってきました。ちょっと軸がズレているものもありますが、共通の関係性を感じます。

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開発者、デザイナーが多く関わるのが、体験設計の統合と製品設計の分解ですので、その部分についてもう少し詳しく書いていきます。

体験設計は「統合」する

UXや体験は、必要な要素を見つけ出し大きなシステムとして連携を最適化し「統合」することで作り出します。最小単位で見てもユーザーと製品の連携があります。

無関係だと思っていたものに繋がりを作ったり、ある要素を成り立たせるために必要な要素を見つけ出す作業によって、生態系のように一つに結びつけるものが体験設計です。

要素の中には人が含まれます。直接的なユーザーはもちろんのこと、そのユーザーに製品、知識、サービスを提供する人などです。さらに未来の人たちも重要です。現在の行為が未来にどのような影響を与えるのかは体験設計にとって重要な視点だからです。

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必要な要素を見つけ出すのには2つのパターンがあります。ビジョンに共感した仲間が持っているものが結びつく場合と、実現したいものが見えてきた段階で必要な要素として仲間に引き入れる場合です。特に前者の組み合わせがシステムデザインのコアになることが多いと思います。

システムデザインで統合するものは実際には技術や部品(モジュール)、サービスですが、それを持っているのは企業であったり人ですので、システムデザインとして統合される前に出会うのはやはり仲間づくりなのです。

デザイン思考によるプロセスでも、多様なステークホルダーが集まってプロジェクトを推進することが重要視されていますが同じ意味合いです。

製品設計は「分解」する

製品設計は、システムデザインを具現化するために機能要素から機構要素、モジュール、部品へと徐々に「分解」し実現可能にしていく行為です。

どんなに複雑で難しいことも、適切に分解しこれまでに実証できていた要素まで分解できれば実現するという考え方にもとづいています。

製品設計の前半では、要求を仕様に置き換えていく作業をおこないます。1つの要求を達成するのに関係する複数の仕様を決定していきます。また1つの仕様が複数の要求を達成する場合もあります。

製品設計の後半では、仕様を製造可能なものにさらに分解していきます。ここでは実績・信頼のある汎用部品(ネジやオープンソースソフトウェアなど)を使っていくことが多くなってきています。

これまで専用部品を設計することが、故障のしにくさなど差別化につながっていた時代がありましたが、いまは体験設計(システムデザイン)による経験価値が差別化の中心になっています。

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今回の話は特別に新しいことではありませんが、既存製品のモデルチェンジばかりやっていると、視野が狭くなってしまいますので、ときには新しい関係性に目を向けてみようという話でした。

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