デジカメUI入門2

デジカメUI入門《まとめ》02

このnoteは過去の記事をまとめたものです

撮影時に必要なUIについての《まとめ》です。
長い歴然を持つ撮影作法の中に、デジタルテクノロジーが融合するカオスでエキサイティングな世界をお楽しみください。

《まとめ》02_撮影現場でのUI
4: フォーカス
5: ドライブ
6: 画質と画調


デジカメUI入門:4 フォーカス

現在のデジカメで競争が激しいのが、フォーカス関連の技術です。
フォーカスとは取捨選択であり、フレーミング、シャッタータイミングと並んで写真表現の根幹です。
新しい概念やUI技術も登場してきていますので、長文ですがお付き合いください。


フォーカスに求められるレベルが上がってきた

明るい単焦点レンズの登場や画素数が増えたことに加え、再生環境の高画素化とピンチ操作による簡便な拡大表示などでフォーカスの精度が求められるようになってきています。

さらに、連写スピードの高速化に追従できる俊敏な動作が必要であったり、自由な構図のためにフレームの中を広範囲に動き回る性能も必要になってきています。


位相差かコントラストかはもはや問題ではない

オートフォーカスの技術としては、一眼レフが採用してきた位相差方式がスピードの点で優れているとされてきましたが、ミラーレスで採用されてきたコントラスト方式でも「空間認識AF」などによって十分なスピードと精度がだせるようになってきたため、両者の技術的な議論は重要なことではなくなってきました。

またミラーレスでも「像面位相差AF」ができるようになり、一眼レフとミラーレスの差もなくなってきています。


物体認識と空間認識

従来はフレーミングの中のXYポイント(多くの場合は中央部)に対して、ピントを合わせることがフォーカス機能の役割でありましたが、
近頃は最適な撮影をおこなうために物体と空間を把することに役割が変わってきているように感じます。

ピント以外にも、被写体が人物かどうか、女性か男性か、年齢はという風に認識し画像処理をおこなうことができたり、
空間把握によって流し撮り中のブレ補正制御やピント位置追従など高度なサポートをおこなうことができるようになってきています。

この2つの認識は、画像認識技術がディープラーニングなどによって飛躍的に向上したことが深く関係しており、クルマの自動運転技術と兄弟の関係にあたるものです。

Pnasonicの空間認識技術は、複数の技術の統合であるが、その中でも、フォーカスのゆらぎ変化と被写体の動き変化から空間を正確に把握していることが分かる。



フォーカスのUI

では実際のカメラでのフォーカス関連のUIや機能をみていきましょう。

フォーカス機能の設定は、ユーザーの好みというよりも撮影被写体や撮影状況によって選択するものです。そのため撮影中の被写体や状況の変化に応じて変更できるよう操作がしやす場所にUIが置かれることになります。

グリップ後ろの親指の位置に集中させたフォーカス関連UI (Panasonic Lumix G9)



フォーカスモードの選択
フォーカスモードフォーカスモードを考えるときには「トリガーと時間」を考えると理解しやすくなります。

シングルAF(S-AF、AFS)はトリガーがあったときに一度だけピントを合わせ固定され、コンティニアスAF(C-AF、AFC)は常時ピントを合わせ続け固定されません。

多くのカメラでは上記の2つに加えて、マニュアルフォーカス(MF)を切り替えるものをフォーカスモードと呼んでいます。


フォーカスエリアの選択

フォーカスモードと組み合わせてユーザーが選択するのがフォーカスエリアです。

広いものでは、画面全体をフォーカスエリアにしてカメラが状況を判断して適切な位置にピントを合わせます。
逆に小さいものではピンポイントのターゲット枠をユーザーが合わせたいところに移動させフォーカスをおこないます。

そして、この大きいものと小さいものの中間が沢山でてきているのが最近の流行です。
完全にカメラ任せにするのはいやだが、動いたりする被写体を人間が追いかけることも難しいという状況で、中間の範囲でユーザーが被写体を捕らえ、それに対してカメラが適切な位置にピントを合わせる人機一体の動作をおこなうようになっています。

Lumix G9のフォーカスエリアカスタム機能では、任意の領域を指定することでができます。



ターゲット移動

全面以外のターゲットサイズではフレーム内でターゲット枠を動かすということが必要になってきます。

手動で動かす方法は、これまでは十字キーを使ったりダイヤルを使うものが主流でしたが、最近の上位機種では、ターゲット移動専用のジョイスティック背面タッチパネルを使ったものが増えてきています。
このことはターゲット移動が撮影の中で重要になってきていることを表しています。

手動でのターゲット枠の移動UIが重要なことは変わりませんが、一度捉えた被写体の動きに合わせて自動で枠を動かす「追従」という技術があります。
Z方向への追従とXY方向への追従が組み合わさり機能します。

上位機種では、追従感度や予測レベル、移動範囲を細かく撮影シーンに応じて調整できるものもあり、適切に設定できると本当に気持ち良く撮影できカメラへの愛着が増します。

Lumix G9のAF特性のカスタマイズ画面この辺りを使いこなすのはかなりの実験が必要なので、プロカメラマンのセミナーなどでヒントをもらうと良いかもしれません。



ターゲット選択

ターゲット移動の新しいUIとして、被写体選択、瞳選択が登場しました。
これは、複数の人物認識をカメラがおこない、その中から主要被写体をユーザーが選ぶという機能です。(瞳選択も同様にカメラが瞳を検出し、ユーザーが選択する)

Pnasonicの人物認識とタッチによって選択している様子。一般には中央にいる人物や正面を向いた手前の人物にフォーカスを合わせるところであるが、簡単な操作で子供を主役にした写真にすることができます。

この方式は、フォーカスレコメンドというUI作法の登場を予感させます。
これまでのユーザーが枠を選択しカメラがそれに従っていたものから、カメラが枠を複数提案しその中からユーザーが選択するという大きな変化です。

将来はユーザーの好みをAIが学習し、最初の提案(枠の初期状態)がほぼ正解ということになっていくと考えられます。



フォーカスリミット

フォーカスターゲットがフレーミングのXY位置の選択だったのに対して、フォーカスリミットを使うことで、Z方向の選択(限定)をおこなうことができます。

例えば撮影したい被写体が10m前後にあり、手前の物体や奥の背景にピントが迷ってしまいそうなときは、フォーカスリミットを被写体の前後に合わせることで無駄な迷いやレンズ駆動がなくなります。

OLYMPUS OM-D M1markIIでは、ボディ側でフォーカスリミットを設定できる



MFも進化している

ここまでAFが進化したのだからマニュアルフォーカスなど必要なくなったように思えますが、クルマにもマニュアルミッションが残っているように、やはりMFが使いたい、使わなくてはいけない状況が残っています。

そんなMF派にも新しいUIが登場してきています。MFアシストです。
光学的なファインダーを持つ一眼レフでは、AFが無かった時代から画面中央にピントが確認しやすくするマイクロスプリットを置くものから、画面のどこでもピントが確認しやすい全面マットまでいくつかの光学的な方法がありましたが、最近ではファインダー像のピントが合った場所にLED枠を重畳させるようになっています。

さらに進化しているのがミラーレスです。
電子的なファインダーのメリットを生かして、フォーカスリングを動かしている間だけフォーカスエリア部を拡大したり、フォーカスが合っているエッジ部に色を付けたりして、素早く厳密なピント合わせができるようになっています。

Lumix G9のMFアシスト機能
上段はPinP拡大表示 下段はピーキング表示


選択から全部撮りへ

ここまでは、ユーザーやカメラが多くの選択肢の中から選択しフォーカスを合わせるUIについて説明をしてきましたが、最近の技術の進化により高速・大量撮影が可能になったことから、フォーカスセレクトやフォーカスブラケットができるようになり、後からすきなピントの画像を選択したり、深度合成によってすきなピント範囲の画像を作ることができるようになりました。

Lumix G9のフォーカスセレクト撮影は、フレームのXY方向に移動しながら全部撮りするイマージで撮影される。そのため再生時にどの位置をタッチしてもピントが合った画像を得ることができます。
※フォーカスを後から変えられる技術には他にもライトフィールド技術などがあります。




フォーカスについて最後まで読んでくださりありがとうございます。
ようやくフォーカスが整理できたという人がいる一方で、新しい概念や言葉がでてきて3つくらい???が付いた人もいるのではないでしょうか。

フォーカス機能を向上させるには、メカニカルにも、メカ制御処理/画像処理にもコストがかかるため、エントリー機や中級機では搭載していない機能が沢山あります。

本当に理解するためには、実際に撮影で使ってみるしかなく、一度使ってしまうと戻れなくなる魅力があります。

連写性能などは筋肉質な体力性能ですが、フォーカス性能はカメラの知性を感じるところでUIとしても面白い分野だと言えます。



デジカメUI入門:5 ドライブ

ドライブとはカメラの中でいまいちピンとこない用語です。
動きを感じる言葉だから連写とかを想像する場合にはピッタリですが、私の解釈では「ドライブ=シャッター」という意味でとらえています。

そのなかには、じっくりと時間をかけて撮るようなシャッターも含まれます。
自動露出(AE)ができても、オートフォーカスができても、シャッターだけは自動にはならないように思っている人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

シャッターは写真にとって「時間」をコントロールする機能になります。
どのタイミングでシャッターを切るかはとても重要です。
ドライブはそのシャッターの世界を広げる役割を持ちます。

実際のカメラでドライブの中にはいっているのは、単写、連写、セルフタイマー、ブラケットくらいで、後は独立した撮影機能となっています。
ただ大きな概念でドライブの仲間ですから、同日使うことができない排他関係になってる場合が多いと思います。

ただし解釈次第では、セルフタイマーと連写や、インターベル撮影とブラケットが同時に設定できるなど、必要な画像を効率的に撮影できる機種もあるようです。

ドライブのUIというのは具体的に説明しにくのですが、多彩なドライブ機能を持つLumix G9のドライブモードダイヤルを代表して説明しておきます。



丸(全部)撮り
上の表でもいろいろな機能の名前がついていますが、デジカメ時代のドライブの本質は、より多くの出来事を丸撮り(全部撮り)することにあると言えます。

多くの撮影をすることで、それを組み合わせることや、その中から選択することで、より満足する写真を作り出すことが可能になります。

全部撮りの進化は、まず1枚の写真から始まり、ブラケット撮影、連写撮影と少しづつ適切な露出の写真、適切な瞬間の写真という風に贅沢な撮り方になってきました。

デジカメになってからも、カメラ内で画像合成などができない時代は、単に沢山の画像を撮ってその中から選択するという目的で撮影されてきましたが、技術の進化によってカメラ内で複数画像の合成ができるようになり、HDR、コンポジット、インターバル動画など新しい表現に進化してきました。

これからも、時間(高分解、長時間)、空間(高精細、広角360度)、画像+データなど関連性(コンテキスト)をもった画像群として広がっていきます。
そして、撮る技術の進化と同時に、見る・見せる技術が追い付いていかなければなりません。

UIデザイナーは、新しい撮影機能やドライブを考えるときにはぜひそれを再生したり活用するシーンも合わせてデザインして欲しいと思います。

何年か前に3Dテレビがはやったときにはデジカメでも3D画像の撮影機能が搭載されましたが、いまいち盛り上がりませんでした。

こんどのVRゴーグルの登場は、全部撮りの再生環境として新しいプラットフォームになれるでしょうか。



マルチ撮影で”文脈撮り”
マルチ撮影とは、ユーザーの撮影行為の前後や、複数のカメラを連動させたりして、時間・空間を丸撮りするものです。

望遠と広角を同時に撮影したり、複数の方向から撮影したり、静止画と動画を同時に撮影することで、画像同士の関係から文脈(コンテキスト)をもった画像群ができます。そのような画像群は単独の画像よりも多くの情報を含んでおり、それらのデータもカメラが扱う情報の一部となっていきます。

言うまでもなくカメラは情報が多ければそれだけ適切な制御やアシストができるようになるため、ユーザーの意思とは関係なしに情報収集のために画像を取得することが考えられます。

もちろん電池問題やプライバシーの問題がありますのでやみくもにカメラが撮影する訳ではありませんが、ユーザーが撮影しようとする前後は特に情報収集の頻度があがるはずです。

そんなカメラの活動の中から「せっかくだから画像として保存しておこう」というものが現われます。これがユーザーからみると自動撮影の始まりとなります。

もう一つは、初めからユーザーは自分で撮影する意思が無いライフログカメラが、現在のゴミのような写真を大量に撮るものから、適切なタイミングに適切なアングルで見るに堪える写真を撮るように進化していくことになると考えられます。


自動撮影の夜明け前(いや、もう明けてますよ)
ドライブの進化の方向として、カメラが自動で撮影する機能があります。
AIや自立して移動できるドローンの登場によって本格的に開花する技術になりますが、デジカメではかなり以前から自動撮影は沢山の事例があります。

人物を認識してフォーカスを合わせる機能とほぼ同時期にから「スマイルシャッター(ソニー)」という機能が登場しています。
名前の通り、笑顔になるとシャッターが切れるものです。

それ以降も二人が近づくと撮影される「カップルタイマー」、設定した人数がそろうと撮影される「グループタイマー」などの自動撮影が誕生しています。

そして登場してきたのが、ソニーの「パーティーショット」です。

このように各社の工夫をみていると、デジカメUIをデザインすることが楽しかった時代を思い出します。

それに比べて、最近の進化は性能アップに寄り過ぎていて、その高性能を使いこなすためにUIが使われている状態です。

この先もう一度、カメラと人との新しい関係をデザインするときに、カメラUIが楽しいものになっていくと信じたいと思います。



デジカメUI入門:6 画質と画調

デジタル技術で最初に取り上げるのが「画質設定と画調設定」です。

デジカメが誕生した当初には2つの設定の受け入れられ方には違いがありました。

まだメモリーが少なく、メールを送る通信回線も細かった時代には写真のデータサイズを変えられる画質設定はとても大切な機能でした。

一方の画調設定は、デジカメを玩具ではなく本物のカメラとしてフィルムカメラの置き換えにしていきたい理由から、デジタルで色が変えられる機能は積極的に展開されませんでした。

ところが現在では、その立場は逆転し、画質設定を積極的に使くユーザーは減り、逆に画調がメーカーを代表するカメラの個性になり、ユーザーがカメラを選ぶ理由の一つになっています。


画質ってなに? 画調ってなに?

写真には、品質のレベルと、画像のトーン(調子)があります。
それぞれ「画質」と「画調」とここでは呼ぶことにします。(画調は一般的な表現ではありません)

2つは別の概念で、画質は「良し悪し」で評価され、画調は「好き嫌い」で評価されます。

そしてこの2つと、写真の良い悪い好き嫌いはまた別のものです。
ただし、写真と画質と画調の関係は強く関係していることも事実であり、これらを上手くコントロールできれば作家としての作風を作ることもできます。


画質設定

画質を良くするためには、レンズとボディ(撮像素子)を良いものにしておくことが重要です。

これは機材を買う前であればユーザーが選択できるということでもありますが、求めるレベルによってはお金が沢山必要になります。

次に選択できるのが、カメラの中の画質設定です。
画質設定は「画素数」と「圧縮率」の組み合わせで選ぶことができます。
画質とはもっと広い意味ですが、画質設定といえばこの2つです。

記録メディア(メモリー)の容量が少なかった時代には、撮影枚数を増やすための設定やメールで送信するなどデータサイズによる選択をおこなっていましたが、

最近では、連写スピードとの関係によって選択する方が使われ方としては多くなっているかもしれません。(連写設定で画総数が切り替わるものもあります)

画質設定以外にも画質項目として言われるのがISO感度によるノイズの問題です。
ISO感度を上げていくとノイズが増え画質が落ちていくという風に表現されます。

ただし、ISO感度は購入後に選択できますが、ノイズを減らしたければ、明るいレンズ(非常に高価)や大きい撮像素子(非常に高価)の機材を選択しておくと結果的にノイズを減らすことができるので、こちらも購入前の選択と言えます。

この他にも、画像を劣化させるレンズ/ボディの乱反射問題や、ボケ味などもひっくるめて、画質として扱っている場合が多いので、画質に関しては、機材としての画質と設定としての画質があると理解しておいてください。
画質設定は別に楽しいものではないので、この程度の説明で終わりにします。

それに対して画調コントロールは、写真の楽しさを大きく変える可能性があるもので、その世界を詳しく見ていきます。


画調コントロール

こちも画質と同様に、レンズやフラッシュの前に付けるフィルターなどの機材によって違いを出す方法もありますが、カメラ内で画調のコントロールは比較的自在におこなえます。

従来の物理的な機材による表現と、カメラ内設定での表現のどちらも楽しむことができます。画調をコントロールするUIはメーカーごとに考え方も用語も大きく違っていますがいくつかのタイプに分けてみていきましょう。

大きく分けて、アートフィルターを代表とする「表現効果」的なものと、フィルムシミュレーションを代表とする「味」に近いものがあります。

オリンパスは、アートフィルターを独立した撮影モードして、複雑な設定なしに簡単に個性の強い表現を提供しようとしています。

また「ピクチャーモード」の体系の中に、アートフィルターやカラークリエーターを含め彩度の違いからアート表現までを並列して配置することで画調としも広く利用してもらおうとしていますが、いづれも排他的な選択肢のため、それ以上の画調内での組み合わせはできません。

良くも悪くもアートフィルターの強力な個性をそのまま使いこなすことが基本の使い方になります。(それだけでも凄い作品を生んでいる写真家の方はたくさんいます)

特にアートフィルターモードでは、アートフィルターの選択が第一のUIになっており、シーンに応じて積極的に切り替えることが想定されています。

オリンパスのアートフィルターUIと多彩で上質なアートフィルター
画面下部の作例をタッチするだけでライブビューに反映して撮影することができます



一方、富士フィルムの「フィルムシミュレーション」は表現が特徴的で普段使いしにくいアートフィルターと違い、玄人好みの「味」にこだわり、銀塩フィルムの時代から長年使い続けてきたユーザーが「自分の」個性として全ての写真で固定して使うことができるものに

フィルムシミュレータには歴史ある富士フイルムの実際のフィルムを背景にもつものがあり本物感を強く出している

アートフィルター的な機能と、フィルムシミュレーション的な機能の両方を持つメーカーは多く、
ニコンは「エフェクトモード」「ピクチャーコントロール」
キヤノンは「クリエイティブフィルター」「ピクチャースタイル」
ソニーは「ピクチャーエフェクト」「クリエイティブスタイル」
などの分類でそれぞれ提供しています。


セレクト型とカスタム型(チューニング型)

個別シーンに応じた演出としての画調と、日常使いする味としの画調があることを説明しましたが、UIの視点で見てみるとセレクト型とカスタム型(チューニング型)があります。

画調を良い感じに仕上げるのは、いろいろなパラメータの組み合わせであるため大変複雑な作業です。そのためアートフィルターもフィルムシミュレーションもメーカーが作り込んだモードを選択するセレクト型になっています。

しかし感性で選んでいるユーザーからも「もう少し弱くしたい」などの要求がでてきますし、理論で考えているユーザーからも「もう少し彩度を落とした方が良い」と思われるのは当然の流れです。

そのためいくつかのメーカーでは、セレクト型とチューニング型を組み合わせたようなUIにしています。そのためいくつかのメーカーでは、セレクト型とチューニング型を組み合わせたようなUIにしています。

ユーザーがこのUIをどのように使いこなしていくのか(楽しむのか)、メーカーがどのようにUIを整理してくのか今後の楽しみです。


個性の時代だからこそ手間を掛けて普段使いを

「インスタグラムに投稿する写真のトーンを全て揃えて自分のブランディングをしている」といった記事を読むと、単にエフェクトを掛けまくったり、インパクトの強い写真を並べるだけでなく、全体として醸し出す雰囲気が大事なのだなと感じます。

これからの写真の楽しみ方を考えたときには、少しづつパラメータに手を入れながら、シーンに関係なく、何となく好きな感じに仕上がるような、マイ画像処理を作って、それについて熱く語るというのが良いのではないかと思います。

ほどんど言われないと気付かないような違いでも、自分で設定すれば、写真を自分の作品として語りやすくなるし、なによりも使い続けることで作品全体のトーンが揃ってきます。

もちろん作るのが難しければフィルムシミュレーションのようなものから始めても良いと思います。そうすればどんな特徴が好きでそのフィルムを選択しているか意識することができるよになり、それも語りの一部にできるからです。


「私の作品」と感じる自己所属感と画調UX

自分が写っている写真や自分が写した写真は一般に自分の写真という認識を持つことができます。ただそれが自分の個性を表しているか?自分の「作品」か?と問われると、それだけでは十分ではないと考えてしまいます。

被写体を決め、フレーミングとタイミングを選ぶだけでも十分にユニークな写真になりますが、シャッターを押すだけで綺麗な写真が撮れてしまう現在では、さらにプラスアルファとして設定操作をおこなうことで、写真が自分の一部であるような自己所属感が一気に増し、
そのことが、写真をシェアして、イイネをもらったときの喜びをより大きなものにしてくれます。

このプラスアルファのUI操作をどのようなものにするのかが、カメラの個性であり、ユーザーが期待しているものだと言えます。

基本機能の優劣では、ほとんど差がなくなっていますが、このUX/UIの考え方はとても多様で、自分のやりたいことにマッチしているカメラもあれば、全然合わないカメラもあります。
このデジカメUI入門を読んでいただくことで、この部分のマッチングを購入前に判断できるようになって欲しいと思っています。

オリンパス PEN-Fではクリエイティブダイヤルを回すことで、カラープロファイルやモノクロプロファイルを調整することができる



演出表現の「4F」

多くのデジタルカメラ、スマホアプリを俯瞰してみたとききに見えてくる新しい設定項目である、「フィルター」「フレーム」「フィルム」「フォーマット」の4つの頭文字をとって「4F」と呼びます。

フィルター
色調や粒状感など画像そのものの表現です。ジオラマや特殊な色調への変換など強い表現のものが含まれます。

フレーム
明確なフォトフレームから、周辺光量を調整するものまでいろいろなレベルのものがあります。

フィルム
フィルターとの区別が微妙ですが、彩度やコントラスなどを好みに調整し、一連の撮影をおこなったり長期間に、撮影者の個性として利用するものです。

フォーマット
アスペクト比と呼ぶ場合もあります。特に1:1(真四角写真)などは演出的に利用する場合があります。

この4Fは、組み合わせのパターン/バランスによって写真を全く違う雰囲気にしたり、微調整にしたりできます。
そのため、4つを同時に調整できるUIが望ましいですが、長期演出と短期演出に分けて設定のタイミングを分散することもできます。

シャッター速と絞り(またはいづれかと露出補正)、ISO感度の連動設定UIが忠実記録の基本設定だとすると、4Fは演出表現の基本設定となっています。



撮影前か、撮影中か、撮影後か

画質・画調の設定は、撮影設定の一部として考える時代から、撮影前のカスタマイズとして、または撮影後の画像編集としてもトータルで考えるべきものになってきました。

それに応じてUIも進化してきており、撮影前に作画テーマとして設定しておく方法、撮影中にファインダーを見ながら演出する方法、そしてカメラ内RAW現像など、ユーザーの表現したいというより多く答えられるようになってきています。

シーンごとに変更する必要がない長期演出の「フィルム」などは撮影前に設定しておくことができます。

そして特に重要なのは、撮影中にファインダーを見ながら被写体やシーンに最適な表現を見つけることができる「撮影中設定」の方法です。シーンに合わせて表現をコントロールすることができます。

登山やツアーでの旅行など他の活動の中で写真を楽しんでいる人にとっては、撮影現場でじっくりと写真を撮ることができない場合のあるため、撮影後に演出する方法を試してみるのも良いかもしれません。


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