見出し画像

オリンピックとカメラ業界

ニコンが8月23日にフルサイズのミラーレス機を発表するということで一部で大変盛り上がっています。スペシャルサイトでいろいろなネタが投入され今が一番ワクワク想像できるタイミングなので、久々にデジカメUXの記事を書いてみます。

なぜ今年(2018年)なのか

去年の年末から、今年にかけて「ハイエンド」「フラッグシップ」と呼ばれるカメラが各社から登場し、国内のCP+というカメラ展示会を盛り上げました。

そして9月に世界的なカメラの展示会である「フォトキナ」がドイツで開催されるこのタイミングで、ニコンから大きな発表となりました。

タイミングが揃った理由は、言うまでもなく2020年の東京オリンピックに向けて新しいシステムを出すギリギリのタイミングだったからです。

オリンピックで実践投入するためには、単にスペックが優れているだけでは十分ではありません。「信頼性」と「操作性」のために<残り2年>という時間が必要なのです。

<信頼性>
実際に現場で使ってみなければ分からないのが信頼性です。これはハードとしての信頼性対策をおこなうということと、サポート体制を含めた心情的な信頼感が作られるためにも2年という時間が必要です。

<操作性>
カメラは人間が操作して撮影するものです。そのため新しい概念の新機能を導入する場合には、人間側もそのシステムに慣れる必要があります。今年中に基本的な準備をして来年の各スポーツイベントで実践投入していけば、オリンピックまでに撮影プロセスの思考を変え身体の一部として使うことができるようになります。

・・・・・

4年に一度のオリンピックは、プロカメラマンが最高の仕事をする舞台として特別であるだけでなく、カメラの性能や機能が飛躍し、新しい表現に挑戦するのにも丁度よい期間ということで、カメラ業界ではそのサイクルを大切にしてきました。

2020年は5G通信によってコミュニケーションが高度化し、8Kテレビが一般に普及し、自動運転車が一般道を走り、カメラはこれまでに無い瞬間をAIのアシストによって撮れるようになる。

これから10年20年先まで続く技術の入り口にきちんと立つために2020年を大切にしていかなければならないのです。

大胆予測 ニコンのミラーレスのUIを考える

まず今回の製品を考える前に、およそ35年前に起きたカメラシステム大変革のことを思い出してみます。それは一眼レフに「オートフォーカス(AF)」が導入されたときのことです。

このときにキヤノンはマウントを新しくし、ニコンはそれまでのレンズが使えるようにマウント変更を避ける決断をしました。フィルムカメラからデジタルカメラに変わっても、両社はマウントを基本的に変更していませんので、いかにAFの登場がカメラにとってインパクトが大きかったかが分かります。

実際スポーツ撮影などいわゆる「動きもの」の撮影方法は大きく変わりました。連写と組み合わせて「動体予測」を使い、決定的瞬間を偶然ではなく現実的に撮影できるようになったのです。

では、今回のミラーレスは何を狙ってくるのでしょうか?

一つはボディーの小型化です。ただし現在の一眼レフに対してグリップや操作系が窮屈になるようなことはしてこないので、グリップ部とファインダー部が全体に対して大きく感じるバランスの製品になるはずです。

もっとも大きい変化は、ファインダー内の情報表示が自在になり、カメラと人間とのやり取りがより高度化・双方向化することです。AIを活用した空間・被写体認識に対してカメラ側の認識結果と人間の意図を一致させるために重要な役割を果たします。

インターフェイスとファインダーの関係がより密接になってくることで、これまでの「モードダイヤル操作」「固定機能ボタン」のようなカメラらしい外観から、大きく変わる可能性が高くなります。

既に現在の一眼レフの上位機種ではモードダイヤルなどを持たないものが多く、大きなボディということで「上位機種らしさ」を出しているのですが、これが小型のミラーレスになったときにビジネス上どのように影響するのかが興味深いです。(各社のミラーレスではほとんど操作されないにも関わらずモードダイヤルを搭載してカメラらしさを演出しています)

・・・・

ニコンにとって、今度のマウントは2050年まで使えるものでなければなりません。当然NASAの火星ミッションにも使われるはずです。

また一方でフランジパックが短いミラーレスは、マウントアダプターを介すことで過去のレンズの活用という方向にも可能性が広がります。

写真とカメラは<過去><現在><未来>をつなぐ媒介となるものです。2018-2020年におきる出来事をしっかりと目撃し記憶しておきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?