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〈エッセイ〉たった12時間の話【しょう】

たった12時間の話

みなさん、こんにちは。
今宵はここまでに しょうです。

これは先週のこと
7月23日(日)AM4時、まだ夢の中にいる子供達を揺すり起こす。

30分後にUSJに行くからだ。
まだ完全に醒めていない目をこすりながら、他動的に強制的に着替えさせられ、出発の時を待つ。

自分の着替えと化粧を終えた妻が急足で玄関へ向かいながら「着いたって!行くよ!」という。

玄関を開けるとそこにハイエースが停まっていて空いた窓から息子と同級生の女の子が顔を出していた。

運転席と助手席に女性が2人、後部座席に子供が3人。
いそいそとチャイルドシート、ジュニアシートを取り付け、妻は荷物を運び入れる。

「じゃ、ご主人2日間、妻と子供を預かりますね。あ、いやお借りしますね。」
「そうよ、誘拐じゃないんだから」と挨拶もそこそこに早朝にも関わらず明るく笑いながら私の目の前を走り去っていった。

大人3人、子供6人、朝4時半出発。きっと運転していた人は一組と妻たちの2ヶ所へ迎えにきたことを考えるともっと早く出発したに違いない。すげぇ根性だ。

朝5時、1人取り残されたリビングでコーヒーを淹れる。
コーヒーを啜りながら1日の行動計画を立てる。

そうだ。映画を見よう。

行動範囲にある映画館を片っ端にスマホで検索する。
決めた。これにしよう。

場所はシネマクレール丸の内。
岡山県唯一のミニシアターだ。

最近運動不足が祟って体力低下が著しい。
特に抱えてもいない罪悪感を払拭するために自転車で移動することを決める。

Bluetoothイヤホンを両耳につけYouTubeを流す。
洗濯機に洗剤、柔軟剤を投入し、稼働させる。
寝室の散らかった布団を整える。
散らかったおもちゃ達を全て所定の場所へ戻す。
掃除機をかける。クイックルワイパーで床拭きする。
髭を剃る。洗顔する。オールインワンクリームをつける。
前日から干しっぱなしにしていた洗濯物を全て取り込み所定の場所へ戻す。
洗濯終了まで残り20分。
雑巾を硬く絞り、自転車を一通り拭く。タイヤに空気を入れる。


ついでに家族の自転車全部に空気を入れる。拭くまではしない。
脱ぎ散らかされた靴を片付け玄関マットを箒ではたく。
土間、玄関を箒ではく。
洗濯終了まで残り5分。
映画館付近で早朝から開店しているカフェを検索する。
洗濯物を干す。

ここまでで1時間ちょい。AM6時半。
敏腕家政婦かもしれない。普段妻がこれをやってると即座に想起し、敏腕家政婦かもしれないと思い上がった思考を取り消す。

検索してカフェが7時半から開店しているため、家を出る支度をする。
大人用のリュックがないことに気づき、長男のリュックの肩紐の長さを限界まで伸ばし、その中に読みかけの本、次に読む予定の本、iPad、一昨年海で水没させたが奇跡の復活を遂げたiPhone、メインのAndroid、Bluetoothのイヤホンとキーボードを詰め込み、汗拭き用のハンドタオルをポケットにねじ込み家を出る。

ほぼ開店と同時に入店する。
店内は店主1人。
日曜日の早朝、開店と同時に入店する客など私くらいだろう。

アイスコーヒーを注文し席につく。
読書しながら過ごすこと2時間と少し。
読みかけの本を読み終え、インスタ投稿のキャプションの下書きを済ませた。

支払いを済ませ退店し、すぐ近くの丸善書店へ。
先日、第169回芥川賞を受賞した市川沙央さんの「ハンチバック」が開店直後に関わらず、残り1冊だった。確保。

先日のハンチバック読書会の余韻に再度浸る。
少し物色した後、レジへ並ぶ。

私の前に並ぶ女性がレジに立つ書店員に
「市川沙央さんのハンチバック、次いつ入荷しますか?」と確認していた。
「あっ。」思わず声が出てしまった。
その女性も私の手元を見て同じように「あっ。」という。

3秒ほど間が空いて「良かったらどうぞ。」と確保したハンチバックを差し出す。

誘拐犯の手から、家族の元へ帰される子供のようにハンチバックはその女性の手元へうつった。

違うだろ。笑

とりあえず良いことした、と心の中で自分に言い聞かせながら書店を後にしようとすると先ほどの女性が追いかけてきて、譲っていただいたお礼にと、図書カードを渡してきた。

「え、良いんですか?いや悪いです。」
「いえいえ譲っていただいたお礼ですので。」
「いや本当に悪いです。」
「受け取ってもらわないと気がおさまらないので。」
「はぁ〜、ではありがたく。」
と、感謝と遠慮のラリーを台本通りに終わらせ、その女性は去っていった。

さっきの書店で買ったのだろう。
財布にしまうため、横長の封筒に入れられた図書カードを出すと1000分の図書カードだった。

300円分、お礼が足りひん。
いやいや気持ちやがな、文句いいなや。
ほなあの人は気持ちが300円分足りひんかったってことやんな。

ほんっと自分のこうゆうとこ、大っ嫌いやわ。

っていうここまでのことをnoteの記事にしようと思い立ち、別のカフェに入って、iPadとキーボードを取り出して打ち込もうとすると、店主が「すいません、うち、パソコンの使用はご遠慮いただいてるんです。」と。

ほな目の前のコンセント差し込み口は何のためにあんねん。

そう思いながら、iPhoneのメモ機能にフリック打ちするが早々に疲れてやめた。

次に読む予定として持ってきた本を読み始める。

アイスコーヒーにサービスで、きび団子がついてきた。
東京都民が東京ばな奈をわざわざ買って食べないように、私もきび団子は買って食べない。最後にきび団子を食べた記憶は全くない。

iPadを使わせてくれないことはきび団子のサービスで相殺された。
なんそれ。

そして上映時間が迫ってきた為、退店し映画館へ向かう。
今話題の「君たちはどう生きるか」でもなく「実写版リトルマーメイド」でもなく「怪物」でもなくミニシアター。

北アイルランドの小学校を舞台にしたドキュメンタリー映画「ぼくたちの哲学教室」を観た。

日々、子供達と哲学対話し続ける校長先生と担任教師達。
その校長先生がずっと携帯していて事ある毎に読み返していた本が「ストア派哲学入門」だった。

鑑賞後、足りなかった300円分を取り返すかのように
(まだ言うんか。おい!)
再度書店に向かったが在庫はなかった。

そして今、15時、暑さをしのぐべくコメダ珈琲に入店。
本日3杯目のアイスコーヒーをたっぷりサイズで注文。
一人前が規格外で有名なコメダ。
「今、かき氷もオススメしております。」と言う店員の声は無視した。

水を固めた氷を削ったものがかき氷って考えると、ただの水やんと思った時からかき氷にお金を払うのが虚しくなった。

ガムも一緒。ツバ飲んでるだけやん。
そう思った日からガムは食べなくなった。

あーこの歪んだ性格どうにかならないかしら。

そんなことを思いながら帰宅し、時計を見たら16時半を回っていた。

そう。たった12時間の話。
閉園まで全力で遊び尽くすと意気込んでいた妻と子供達は今頃楽しんでいることだろう。

私も行けば良かったな…
でもそのあと別の本屋でちゃんとハンチバックGETしてきましたよ!

そういや、今日の当番はゆかこさんじゃなかったっけ?
そう思っている方、するどいっ!!

本当はゆかこさんのお当番でしたが、
明日発表のnote新企画のため交代しました
おもしろいことするよーお楽しみに!

では、今宵はここまでに

しょう

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