【1000字小説】The Small World
少年がふと穴から出てきた。
その少年が、すぐそこで遊んでいる。
何故か私は、声を掛けなきゃと思った。
そして声をかけようとした途端、大きな”波”が押し寄せる。
このままだと流されてしまう。
私は急いで少年をジャングルジムの上に引っ張り上げる。
ジャングルジムと言っても、10mはあるほどの、外では考えられない大きさだ。
そこで早1時間ほどたっただろうか。
波は引いたが、私と少年は衰弱しきっていた。
そこに、例のパトロールの二人が自転車を漕ぎやってくる。
二人に助けられ、やっと地面に降りれた。
さっきの”波”の影響は強く、川は増水していた。
だが、外に出るには川を下るしかない。
私はさっきの少年と、パトロールの”流木車”に乗って川を降りていく。
川の流れはとても激しかった。
流木車はとても不安定で、目が回ってしまいすごく酔った。
もう一生乗りたくないと心から思った瞬間であった。
しばらく川を下った時、突然、近くの倒れて中が腐り穴が開いた大木の中まで物凄いスピードで落ちてしまった。
私たちは驚きと衝撃に耐えきれず、慌ててなんとか流木車の端にしがみつく。
何があったのか。
そうパトロールの二人に問いかけようとすると、もうそこにパトロールの二人はいなかった。
とりあえずここから出ようと、流木車を一生懸命押す。少年は未だに衰弱しきっているから、「手伝って」とは言えないだろう。
その時、赤く眩しい閃光が私の視界を遮った。
「ま…眩しい…!!」
咄嗟に眼を隠すが、既に眼はだいぶやられていた気がした。
10分くらい、経っただろうか。
やっと眼を開けると、そこには途轍もない大きさの怪物が倒れていた。
「ここは危ない。早く下流にいかなければ。」パトロールの一人が言う。
さっきよりも少し速度を上げて、降りていく。
そして、遂に出口に来たと思ったが、今度はそこに大きな電車の車両が止まっている。これでは出口から出れない。
どうしようと考えていたら、その車両がだんだんこっちに近づいてきた。
やばい。潰されてしまう。
パトロールの二人に問いかけようとした時、またそこにはいなかった。
そして、大きな轟音と共に、車両が砕けた。
一体何が起こっているのか、さっきから訳が分からないが、とりあえず出よう。
そう思い、トンネルをくぐる。
暗いトンネルを抜けると、そこには扉があった。
扉を開けると、駅の人混みのようなところに出た。
「あれ、ここってーー」
そう、言って後ろを見た時、そこにはただの壁しかなかった。
そして私は口にする。
「なんでこんなところにいるんだ?早く家に帰らなきゃ。」
私はその駅の時刻表と行き先をを確認し、家に帰る電車に乗るのであった。
後ろの壁の中からは、二匹の鼠と一匹の小さい鼠がそっと見つめていた。
1000字小説
――― 作者:樋口 今宵
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