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ニンジャスレイヤーTRPG:データ概論『体力と回避の関係あれこれ』

始めに

 当記事では『ニンジャスレイヤーTRPG』第2版における回避と体力の関係について思考実験を絡めた検証を行い、それぞれの特徴などについて考察を行っていく。当記事の考察がPCを育てたりNPCのデータを作成する際、読者の皆様の助けとなれば幸いである。

シミュレーション条件

・当記事では耐久力を行動不能にならず攻撃を耐え続ける能力と定義する。

・攻撃側のデータは攻撃判定や回避難易度を増減させる効果の処理を行った後の最終的な火力を示している。

・比較しやすいようシチュエーションは単純化する。

・コストとしての回避ダイス消費はこの記事では考えない。

・行動不能となってから復活するような効果についても考慮しない。

・特に但し書きがない限り回避ダイスが耐久力に与える影響は期待値で考える。ダイスのランダム性によるブレを考慮する場合は個別に明記を行う。

思考実験1『体力と回避がほぼ等価な状況』

基準とするため体力と回避ダイスがほぼ等価となる状況を考える。

攻撃側:『ダメージ1』『連射6』『時間差』『回避:NORMAL』
防御側:【体力】6、回避6

 この状況では体力を6増やしても回避を6増やしても耐久力は倍化する。そこにあるのは体力が倍になるか受けるダメージの期待値が半減するかの違いである。これを基準にシチュエーションの変化が体力と回避ダイスの価値にどのような影響をもたらすか検証、考察していく。

コラム1『体力は盛りやすい』

 体力はニンジャスレイヤーTRPGにおいて特別に盛りやすい数値だ。防具やバイオサイバネを装備するだけで気前よく上がるし、ジツやスキルによる補強手段も充実している。アーチ級生成装束の『標準的な』と『重装な』が持つ数値の差などは回避に対する体力の盛りやすさを示した典型的な例だろう。故に体力ビルドと回避ビルドを比較する場合、体力ビルドの体力での優位と回避ビルドの回避での優位が同じ数の場合は少々不公平となる。例外はあるが、回避ダイスを1個増やすのに必要なコストは基本的に体力を1増やすコストの2~4倍であると考えればそう間違いはないと思われる。

思考実験2『攻撃回数による変化』

合計ダメージをそのままに実験1から攻撃回数を変え結果を見る。

攻撃側:『ダメージ2』『連射3』『時間差』『回避:NORMAL』
防御側:【体力】6、回避6

 この状況で耐久力を2倍にしたい場合、体力の場合は思考実験1と同様に+6する必要があるが回避の場合は+3で済む。『回避:NORMAL』ならそれぞれの攻撃に1個ずつ追加で回避ダイスを割り振れればそれで被弾率は半分になるからだ。このように難易度をそのままに手数が減ると回避型が有利になる。逆も然りであり手数型の攻撃に対する耐久は体力ビルドの得意分野である。

コラム2『持ちつ持たれつ』

 回避ダイスは複数のターンを耐え続けるほど補充機会が増える。しかし耐久力を考える上で問題になるのは自身が攻撃を耐えきれず行動不能になるまでのターンでありシナリオ側の想定ターンではないため、長期間の戦闘が想定されたシナリオほど回避ダイスに注力したビルドが有利かというと必ずしもそうではない。行動不能になるまで戦う場合、どれだけ耐え、回避ダイスの補充機会を得られるかは総合的な耐久力次第と言える。体力が足りず途中でリタイアしたなら回避の機会もそこで終わりだ。逆に言えば体力が多ければ行動不能となるまでに使える回避ダイスの個数も多くなりやすいわけである。故にシナリオ側が想定しているのが短期決戦である場合も長期戦である場合も、結局のところ体力と回避ダイスは持ちつ持たれつの関係であると言えるだろう。

思考実験3『ダメージ量による変化』

実験1から単発のダメージ量だけを変え結果を見る。

攻撃側:『ダメージ2』『連射6』『時間差』『回避:NORMAL』
防御側:【体力】6、回避6

 攻撃一発あたりのダメージ量が増えると1個の回避ダイスに期待できる軽減量もその分大きくなるので一見回避ダイス有利に見えるかもしれない。しかしこのシチュエーションでも+6で耐久力の倍化をもたらすことは体力、回避共に変わらない。原因としては多くの攻撃を倒されずに堪えればその分回避ダイスを補充する機会も増えることなどが挙げられるだろう。

コラム3『緊急回避ダイス』

 緊急回避ダイスは使い切りの回避ダイスという性質上、戦闘中に所持者が危険な攻撃を受けるターンがどれだけあるかによって大きく価値が変動する。例えば毎ターン同じキャラに均等な攻撃が飛んでくる単純化したシチュエーションでは2ターンの攻撃に緊急回避ダイスを均等に割り振れれば緊急回避ダイスは同値の回避ダイスと比較して2分の1程度の価値だが、これが4ターンであれば4分の1程度の価値というわけだ。

 もちろん多くの場合、個人に飛んでくる火力はターンごとにばらつきがあるだろうし、緊急回避ダイスの配分が必ずしも最適な形で行えるとは限らない。だが狙われる回数に応じて回避ダイスに対する有用性が変わってくる都合上、緊急回避ダイスの価値が『戦闘がどの程度のターン続くか』『NMはどのように敵が攻撃するPCを選んでいるか』などによって変わってくることは事実だろう。

 そのように不安定な緊急回避ダイスだが、そこを考慮しても低コストの防具や防具生成系のジツスキル1つで大量に確保が可能なそのコストパフォーマンスには目を見張るものがあり、加えてカウンターを狙う際や大技が飛んできた際などに温存していた分をまとめて注ぎ込むなどの工夫も可能であるため油断ならない存在なのは確かだろう。その性質を理解し、うまく運用すればビルドの幅を大きく広げてくれるはずだ。NMとして用いる際は『戦闘が想定以上に長期化するリスクを抑えつつボスをタフにできる』データとしても利用できる。

思考実験4『回避難易度による変化』

実験1から回避難易度だけを変え結果を見る。

攻撃側:『ダメージ1』『連射6』『時間差』『回避:HARD』
防御側:【体力】6、回避6

 他の条件をそのままに回避難易度が上がると『回避ダイス』1個あたりの価値は落ちる。思考実験1~2のような『1個ずつ追加で回避ダイスを割り振れれば被弾率が半減する』状況ではなくなるため回避ダイスの増加により2倍の耐久力を得るには思考実験1よりも多くの回避ダイスが必要となる。このような火力が主要な脅威となる状況では体力型の方が有利だろう。

コラム4『大技を耐えよう』

 相手の攻撃1発でダウンしうる状態というのは基本的に避けたいものである。特にアトモスフィアが上がった状態でのヒサツ・ワザは回避能力を盛っても安定して避けることは難しく、こういった場面で『1発は耐えられる』体力の数値を持っていることは高い重要性を持つ。ヒサツ・ワザが飛び交うようなレベル帯でなくとも重要になるラインは多いだろう。低ダメージだが回避の難しい攻撃などで削られる可能性を考慮するとその数値から多少+αしておくことも大いに有効なはずだ。

 このように体力には単純な『耐えられるターンの期待値』だけでは測れない、ランダム性がもたらす事故を防止するという役割も存在する。体力をあまり重視しないビルドを行う場合も、そのレベル帯におけるメジャーな大技を1発耐えられる体力を確保しておくと安定感がグッと増すはずだ。上記のような視点で見た結果として体力が不足していると感じた場合は、普段目を向けないような能力、装備で体力を補うことを検討してみても面白いかもしれない。うまくいけば新たなビルドの可能性が開けるだろう。

思考実験5『体力に頼ることが困難な状況』

体力に頼ることが困難な状況について考える。

攻撃側:『ダメージ12』『銃器』『回避:NORMAL』
防御側:【体力】3、回避4
防御側:【体力】6、回避3

 上記の例のように、大量のクローンヤクザによる一斉射撃のような極端に大きなダメージを前にした場合は多少体力を上げても焼け石に水となることがある。そこまで極端な状況でなくとも『サツバツ!』が飛んできた場合や『精神力ダメージ』で攻められた場合など体力に頼ることが難しい瞬間というのは往々にして発生する。

 ただしそのような場合でも体力で受けることができる攻撃が他に来ていればそちらへの回避ダイスを節約することで間接的に体力に頼ることが可能である。しかしアトモスフィア上昇後、最後に残ったボスがヤバレカバレで放ったナムアミダブツ!狙いの単発攻撃が飛んできた場合など間接的な形で体力に頼ることさえ困難な状況が存在するのは事実であり、このようなシチュエーションでの安定感は回避型ビルドの明確な強みと言えるだろう。

コラム5『サツバツ!耐性やジツ耐性による補強』

『★★★◉欠損部位再生』『★筋肉の鎧』などの強固なサツバツ!耐性を持っている場合は思考実験5で触れたような『体力で頼ることが困難な状況』は大幅に減る。『●即死耐性』を持っているだけでも安定感の上昇は相当なものになるはずだ。このような能力を持っているキャラの体力と持たないキャラの体力は同じ数値でも前者の方が頼りになると言えるだろう。

『★★イビルアイ』などに対しても攻撃性能を『★◉ひねりつぶし』やビッグの脚力上昇を活かした『◉ランスキック』で確保し『◉◉タツジン:ジツ』を取ることで回避難易度を下げる、『◉◉戦闘兵器化』で精神攻撃への耐性を得るなどの対策を行うことは可能だ。『☆巨体化の秘儀』や『☆謎めいたニンジャソウル』を軸とし自発的に精神力を使うことの少ないビルドが組めればそれも間接的な精神攻撃耐性として見ることができるだろう。

体力と回避の関係

 ここまでの検証結果を見る限りでは、体力と回避ダイスはそれぞれに強みのある持ちつ持たれつの関係であると考えられる。タフなニンジャを産み出したいなら、結局のところはバランスが重要になるだろう。当記事の検証や考察はこれで以上となる。

参考資料:「ソウルワイヤード」ダイハードテイルズ

ヘッダー:「Midjourney」

「Midjourney」のドキュメント:
https://midjourney.gitbook.io/docs/

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