平凡であることに遠慮がない | イカゲーム | #塚本映画
万人が観れる中道を狙った正統派。
深くも無く、マニアをうならせるトリガーも無いが、万人が感想を持つことが出来る作品。
強いて言うなら、死ぬ残酷さより生きる事の残酷さの描写が秀逸で、選択肢を知らない人の人生の描写は、こちらが見ていてつらいと感じるくらい地獄だった。
黒幕は単純かつ少数で、陰謀論者でも安心してみる事が出来るような安易なプロット。悪は間抜けで正義にはご都合主義も準備されていて、わかりやすいものが大好きな方々にも抜かりない。
主人公はヒーローでもなく、ゲームの参加者自体に卓越した人物がいない分、劣等感を浴びるような鑑賞後の後味もない。
誰でも十二分に悪役をバカにでき、十二分に人生そんなもんだよねと思える設定。
一本筋があると思いきや、その時々に痛みの少ない道を選ぶ主人公は、大衆の思考の最大公約数を狙っているかのようだ。
但し戦慄は覚える。
一見平凡だが、制作側は狙ってここを取りに行っている。僕にはそれが出来ない。多くの人にもそれはできない。そこにこの作品の狂気がある。平凡であることに遠慮がない。