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言葉遊び企画「如月の集い」に参加して感じたリポグラムの可能性
今年の2月、ネット上で言葉遊びをテーマにした企画「如月の集い」が行われていました。
企画内容を簡単に説明すると、抽選をもとに毎日ひらがなが1文字ずつ禁止され、その日に残っているひらがなしか会話に使ってはいけないというルールで人々と交流していくといった企画です。
Discordサーバーを拠点とした企画で、参加者はこのルールをもとに雑談や言葉遊びをしていました。
主催者であるダブリングさんは受験の関係で4月からTwitterやDiscordをログアウトしているのですが、企画の大まかな流れは上のnote記事にまとまっています。
自分もリアルタイムで参加しており、体験型コンテンツの枠組みと言葉遊びが融合した最高な企画だったと感じています。
そんな「如月の集い」ですが、企画内でけっこう革新的なものが生まれていたのではないかと思い始めてきたので、遅ればせながら記事として掘り下げてみることにしました。
リポグラムという言葉遊び
限られた文字だけで文章を作る遊びのことをリポグラムと言います。
筒井康隆さんの小説『残像に口紅を』や西尾維新さんの小説『りぽぐら!』が代表的な例です。
ネット上では以下のようなものがあります。
文字制限昔話
— ARAMA (@aramatypo) March 26, 2018
「輝夜姫」
かぐやひめの「か行・や行・は行・ま行」しか使えない制限です.#リポグラム #文字制限昔話 pic.twitter.com/u6u6OR9k65
母音がaしか使えない千鳥のノブさん#リポグラム pic.twitter.com/lb5bozgrWQ
— ンバヂ@新曲投稿しました (@nbaji9) October 25, 2020
回文やアナグラムと比べるとややマイナーな言葉遊びかもしれません。
「如月の集い」でのリポグラム
如月の集いもそんなリポグラムを題材にした企画でしたが、この企画では少し変わった特徴のリポグラムが現れました。
その特徴について紹介していきます。
言葉の規則が崩される
まずは、次のような特徴です。
・文法が軽く崩される
・本来とは違う似た音の文字が代用される
・単語の意味が転用される
うりよしきばしばりに怪文書投稿した怪文書
— たららん (@onajianamusica) February 7, 2023
「良馬場」と「石橋脩<バシシウ>」を言いたかっただけのとこある。 pic.twitter.com/NQ1lSGwCs2
う、り、よ、し、き、は だけで書かれた鶴亀算、「牛鴫式」です
— こーやん (@koyan97) February 10, 2023
(気に入ってるので単体でも上げちゃう)#うりよしきばしばり pic.twitter.com/E0oapuxi0K
一般的なリポグラムでは、先ほど挙げた例のように (多少違和感はあっても) 文章として破綻していないものが多いのではないかと思います。
前提として、なるべく自然な文章を目指しているからでしょう。
それに対して「如月の集い」では、リポグラムでがっつり対話する場を設けた結果、文章の自然さよりも意味の伝達が重要になるという特殊な状況が生じていたと言えるのではないでしょうか。
その結果、こういった珍しいリポグラム様式が生まれたのだと考えられます。
![](https://assets.st-note.com/img/1683469071252-QKKyUDnG01.jpg?width=1200)
ちなみに、ここで挙げたツイートやスクショの例は「う(ぅ)、り、よ(ょ)、し(じ)、き(ぎ)、は(ばぱ)」だけで会話する「うりよしきば縛り」というチャンネルに投稿されていたものです。 (のちのチャンネル名: 「うりよしき様式」「り式」など)
参加者に謎解き制作者のうりよしきばさんがいたことからこのチャンネルが作成されました。
このチャンネルでは、如月の集いサーバーの中でもさらに厳しく文字制限を課しています。
対話による語彙の発展
如月の集い内でのリポグラムには、対話形式ならではの特徴がもう一つありました。
それは、新しい単語が発言されるとほかの参加者もその単語を使い始め、周囲に浸透していくというものです。
例えば、先ほど言及したうりよしきば縛りのチャンネル内では、
「料理洋式?」「洋式良き」「箸は利用?」「箸利用洋式料理…?」
といったように、前に使われた単語を受けて以降もその単語が使われていく傾向がありました。
また、この単語普及の仕組みにより、会話が進むにつれて各々の発言者が使える言葉が徐々に増えていき、話す内容が豊かになっていく といった特徴も見られました。
うりよしきば縛りの語彙で言うと、物事の良し悪しを表現する言葉が「良し」「憂し」だけだった初期の状態から、だんだん「至上」「少々憂し」「ギリギリ許容」といった細かいニュアンスの表現が使われ始め、物事を前よりも的確に表現できるようになっていった という具合です。
この現象は、うりよしきば縛り以外でも、ほんの数種類の文字しか使えないルールを設けた場において特に見受けられました。
こういった語彙の発展は、まるでわずかな単語しかもたない民族が少しずつ文化を築いていくかのようで不思議な感覚でした。
「如月の集い」外への影響
如月の集いで見られたリポグラム様式が使われる場は、企画内だけには留まりませんでした。
自分は如月の集いから着想を得て、「か行と濁点しか使えない図形問題」や「母音とんしか使えないワンピース主題歌」といったリポグラムをツイートしています。
文字がごく少数しかないリポグラムにおいて、先ほど紹介したようなあえての文法崩しなどの手法が威力を発揮しました。
ほかにも、別の方による後続企画や一部の企画参加者によるTwitterでのリポグラムで、今回紹介したリポグラム様式は受け継がれていました。
まさにリポグラムの新たな可能性が見出されたのではないでしょうか。
というわけで、今回は「如月の集い」で形成されたリポグラムの様式を紹介しました。
企画が行われたDiscordサーバーは現在読み取り専用となっており、以下からログがご覧になれます。
今回紹介した「うりよしきば縛り」は、さらに文字が減った「り式」チャンネルから見ることができます。
数文字しか使えないリポグラムチャンネルとしては、ほかには「おいんえんえい / 言い」 (母音限定チャンネル) 、「セクステット / わたす、去ぬさ」 (日替わりの6文字だけが使えるチャンネル) 、「5企画」 (か行・が行のみチャンネル) がおすすめです。
ぜひ覗いてみてください。
ダブリングさん、 (だいぶ遅くなってしまいましたが) 主催お疲れさまでした&ありがとうございました。
またどこかでお祭り騒ぎができる日を楽しみにしています。