らしからぬ美学
とあるマッサージ店から、いつもと趣きの異なるメルマガが届いた。
タイトルはこうだ。
”【注意!】お祭りで賑やかな日があります!”
要は、「お囃子なんかがお店の中まで聞こえてくるので、いつものように静かではないですが、それでも良ければ来てくださいね」というお知らせなのだった。
へえぇ、と唸ってしまった。
メルマガといえば、「キャンペーン中!」「〇〇日までの期間限定!」といったふれ込みで、お客を呼び寄せるものだと思っていたから。
たしかに、波の音のBGMに包まれてうとうとしたいのに、お祭りの喧騒が気になってしまったら、月に一度のご褒美が台無しである。
お祭りは毎年のことだけれど、昨年まではこんなメルマガは来ていなかった気がするので、もしかしたらちょっとしたご意見が寄せられたのかもしれない。
それにしたって優しいな、と思う。「騒がしい」じゃなくて「賑やかな」という言葉のチョイスもよい。
メルマガらしからぬ美学を感じた。
「キャンペーン中!」「〇〇日までの期間限定!」というメルマガも、耳寄り情報にはちがいないので必要なのだけれど、やっぱり押せ押せの売り文句ばかりだと疲れてしまう。
そして、受信トレイのなかであっさり埋もれる。
でもこんなふうに、お店の本来の存在意義みたいなものがみえると、すっとミントを噛んだときのような心地になって、空気が澄む。きりっと印象に残る。「いいでしょ、これ」って誰かに伝えたくなる(このノートのように)。
いいお店のお客さんでいられてよかった。
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