忘れたくない記憶ありませんか?
私は普段
介護士として働いています。
介護士なので当然
たくさんの高齢者と接するのですが
その中には
認知症の方もたくさんいます。
認知症の方は
最近のことや直近のことは
記憶に留めておくのが難しく
ごはんを食べてない
お風呂に入っていない
家に帰らないといけない
など今の状況を理解できず
同じ話を繰り返すことも多いです。
でもフシギなことに
イヤなことや怖かったこと
痛かったことなどは
最近のことでも
覚えていることがあります。
こんなことがありました。
いつも
「娘が全然会いに来てくれない」
と言っていたおばあちゃん。
実際には頻繁に面会に来てくれていて
面会しているあいだ
おばあちゃんはとても楽しそうに
娘さんと会話しています。
でも娘さんが帰られて
5分もしないうちに
面会していたことを忘れてしまうのです。
そのおばあちゃんが
お風呂に入っていたときのこと。
浴室で足を滑らせて
転倒してしまいました。
おばあちゃんは認知症があるから
転倒したことをすぐ忘れてしまうと
思っていたのですが
それからお風呂に入るたびに
転倒した場所に来ると
「私、ここで転けたんやよ」
と毎回思い出すのです。
娘さんが来てくれたことは
すぐ忘れてしまうのに
転けたことは
いつまでも覚えている。
覚えていてほしいことは
すぐに忘れて
忘れてほしいことは
いつまでも覚えている。
一体なぜなのか?
これは私の個人的な見解ですが
忘れてしまうことと
忘れないで覚えていること
この違いは
生きていくうえで必要な記憶かどうか
だと思います。
自己防衛というか危険回避というか
そういう類のものなのではないかと。
赤ちゃんは
お母さんの声を聞き分けられるし
子どもは苦い味が苦手。
怖い思いをした場所には
二度と近づきません。
同じように大人も
危険を回避できるように
痛かったことはいつまでも
覚えている。
ってことは、ですよ。
うれしかったことや幸せなことって
忘れやすいってことですよね。
安全に生きていくためには
1番重要な記憶ではない、ということ。
しあわせな気持ちや
うれしい体験は
放っておくと忘れてしまう。
それってさみしくない?
思い出すだけでうれしくなる
そんな記憶ばかりが残っていたら
どんなに幸せだろうと思うわけです。
だから
うれしいことがあったとき
楽しい体験をしたときは
しっかりその感情を味わって
その時の風景や匂い
聞こえてくる音、皮膚の感覚など
五感も敏感にして
できればその感覚を声にして
おおげさなくらい
幸せな瞬間を満喫すれば
忘れにくくなるんじゃないのかな。
思い出すだけで幸せになれる
そんな記憶でいっぱいだったら
辛いときだって
一瞬で幸せに戻れるもんね。
道具も要らないし
自分1人でできるし
お金もかからない。
ならやってみる価値アリですよね。