道徳科授業の導入の問いづくりについて
道徳の授業での導入に悩むことは多いと思います。
扱う内容項目について触れようとするあまり、
「最近、周囲の人に親切にしていますか?」
「なかなか友達に親切にできないことってあるよね〜」
など、ストレートに発問してしまい、「(なんだかしっくりこないな〜…。)…と思いながらもとりあえずやり過ごして話を進めていく…経験はよくあるのではないかと思います。自分はあります。
道徳科の授業づくりにおいて、どのような導入だと、子どもが主体的に学びをスタートすることができるのでしょうか。子どもが問いを見出して、自分ごととして学習をスタートしていくことができる。いくつか自分の中でパターンを持っておくと、「指導書通りに流す」という授業から抜け出せるのだと思っています。
導入での問いづくりの例
分かっていても“できない”ことを乗り越える教材を扱うとき
扱う内容が“人間の弱さ”に関わるとき、つまり、「分かっていることなのにできない」ことのときには、子どもの中にずれを生みやすいです。
みんなが当たり前に大切に思っていることを実行するときに難しさを感じてしまうことがある。「正直、誠実」「節度、節制」「規則の尊重」など多くの内容項目に当てはまってくると思います。教材文にスムーズに入っていく「ずれ」を生んでいくために、
例えば、
T「親切にするってなぜ大切なの?」
C「友達と仲良くできる」
C「感謝されると気持ちがいい」
C「自分も相手も嬉しくなる」
C「自分が親切にすると、その人も他の人に親切にしようと思う」
T「そっかぁ、親切にするとたくさんいいことがあるんだね。今日は、そんないいこといっぱいの親切なんだけど、なんだかうまくいかない子が出てくるお話を読んでみよう。(簡単にあらすじを話して…)〇〇がどんなことを考えているかを考えながら聞いていてね。」
…このように、みんなが当たり前に大切だと分かっていることと、教材の主人公との間に「ずれ」が生まれるしかけをつくって入っていくと、子どもの中に問いが生まれていきます。教材を読んだ後、静かに「…どう?」、この一言で子どもたちは自然と話し合いのゴールに向かって語り始めるのではないでしょうか。
C「◯◯は、……が気になってできなかったんじゃないかな。」
C「自分もそういうときあったよ…」
C「そんなのを気にするなんて自分は理解できない!」
そんな声が集まったときに、
T「では、今日はみんなで……について考えてみようか。」
このようにクラスの問いをつくっていきます。
ところで、道徳の教材を子どもに読んでもらうという先生もいらっしゃるかと思いますが、道徳の時間は教師が読むべきです。道徳の時間で教材を読む目的は、物語の読解ではなく、教材の話で起きている問題をクラスのみんなで話し合う土台、つまり共通体験をつくるためだからです。話し合うためには、みんなが何が起きているのか、何が問題になっているのかを掴む必要があります。そのためには、事前にあらすじを子どもと確認すること、子どもが物語の筋を掴めるように教師が範読すること、どんなことを考えながら聞くかの視点を共有しておくことが非常に重要です。
友達との感じ方のずれの正体を探っていくとき
道徳の問題を考えていくときに、自分の考えと友達の考えが異なる場合があります。教科書には、結末が描かれないかたちでお話を終える教材が収録されています。
「主人公は一体どうするべきだったのか」
「自分はどちらに共感できるか」
「どちらがよりよい結果を生むのか」
教材のお話によって、言葉は吟味する必要がありますが、教材を読んだ後に、黒板にチョークのお腹の部分を使って、横いっぱいに線をひき、子どもに自分の立場を表明する場をつくってみると、全員が参加して話し合いに臨みやすくなります。
あえて判断に迷うようなところを「考えて聞いていてね。」と視点を伝えておくことで、
C「ぼくは、Aだと思う。だって…」
C「わたしは、Bだと思う。だって…」
T「考えが分かれそうだね。みんながどう考えているか、一度黒板に貼って見える化してみようか!」
こんな流れで、子どもが自分の立場を表明することで、
「自分と違う意見をもっている子の話を聞いてみたい!」という場面も生まれやすくなっていきます。
話し合いでは、どちらがよいかという結論を出していくこともあれば、お互いの考えを聴き合うことで視野を広げていくこともあります。これも教材のもつ可能性や魅力を考えてある程度の道筋をつくっていくとよいのかもしれませんね。
アンケートを活用してみる
道徳の時間の導入としてアンケートを使うのも非常に有効です。
ただ、このアンケートもただなんとなく取るのではあまりにも勿体無いです。
子どもたちの中に「ずれ」が生じるように取り方をひと工夫する必要があります。
例えば、
「この1週間で友達に嫌な思いをさせてしまったと感じたことはありますか」
「この1週間で友達に嫌な思いをさせられてしまったと感じたことはありますか」
よくある・たまにある・あまりない・ない
このアンケートをとると、十中八九、「させられた」の方に「ある」の子が多くなります。子どもは、友達を傷付けたと感じたと自覚していないことの方が多いからです。アンケート結果をを円グラフにして提示すると、
「どうして、嫌な思いをさせたと感じている人が少ないのに、嫌な思いをしている人がこんなに多いのだろう。」と、自分たちの生活をもとに問いを作っていくことができます。
(ただ、この例だと、一人の子が多くの子を傷付けて回っている可能性もあるのですが…。)
教師の工夫次第でアンケートもとても活用のしがいがあると思います。
時間があるときこそ教材研究を…
冬休み、疲れた体をゆっくり休ませようとしているところでも、どうしても頭の片隅には「これからの授業づくりをどうしようか…」とモヤモヤする先生も多いと思います。そんな時は、いっそのこと時間を決めて、思い切り授業づくりと向き合ってみるのもありかと思います。変なプレッシャーがない分、肩の力を抜いて授業づくりができるのでないでしょうか。
導入に強くなれば、あの初めの5分間が怖くなくなります!
ぜひ「こんな導入の仕方もいいよ!」という方法がありましたら、コメントをいただけると嬉しいです。