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逆鬼舞辻無惨になろう
これはこやけが今より2センチ低かった頃、こやけは変化を何より嫌っていた それはもう チャプチェに絡まるピーマンくらいに
そんないじわるで見栄っぱりな小宅と当時いちばん親しい仲であり、小宅に対して何度もひとくちを要求してきた最強の図太さをもつ友人 堀内くんに言われた
コヤケってなんかマジで
鬼舞辻無惨みたいだよな
返してくれてない堀内くん
鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)とは、某鬼滅の刃に出てくる某ラスボスである めちゃくちゃ強い奴である
さいしょは物凄く大きな「…なんで?」に見舞われたがしばらく考えてみて あれ、そうかもしれない に割とあっさり変わった
鬼舞辻無惨は変化を嫌う 変わりゆくものより何より、そこにずっと在る という確証がほしくてあんな感じになってしまった寂しがり屋さんである
たしかにそれ、小宅かもしれない…と頭を抱えた 言われた直後の衝撃が少し引いたあと、余韻の残るくちもとで 「いや でも 鬼舞辻無惨かっこよくない?こやけは別にいいけどね」なんて零した 今になって考えると負け犬の遠吠えでしかない まず遠吠えすらできてない、チワワのキャンキャン吠えぐらい
その日から今日に至るまでずっと 逆鬼舞辻無惨になるのが目標である
逆鬼舞辻無惨とは、身の回りや己に起きる変化に喜ぶ人たちを指す こやけは早くそれになりたくて逆鬼舞辻無惨修行を計らった
まず、衣替えをしてみる 鬼舞辻無惨系にとってはかなりの難関だ だって袖のながさが変わっちゃうから
衣替えは想定よりもすんなりクリアした 歯を食いしばってはいたが
次に、素朴なところが好きだったアーティストがきんきらのアクセサリーをつけ始めて曲調もなんだか変わってしまった事実を 2週間かけて飲み込んだ
ひっそりと愛していたアーティストが流行りものとして消化されてしまうのとかも、受け止めるのに時間がかかる
彼らは小宅にひかりをくれたのだ、流行りのことばやリズムよりもっと長く生きてほしい これまた変化とは違う 小宅の人間味だろう
その他諸々たくさんの修行をして、今も尚している 今はアルバムを見て過ぎ去ったものと今との変化に血涙を流さず耐える、ということをしている
修行をして分かってきたのが、チャプチェに絡まるピーマンは意外と大事だということだ あんなみてくれをしているがチャプチェを美味しそうに見せるためにみどりは不可欠なのである
2センチ低かった小宅にはまだ何も分からなかったのだ ピーマンの無いチャプチェはその本質に欠けることを、変化のない人生もまた その本質に欠けることを
でもまだ残しちゃうよ、ピーマン