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アエロトレン、死の淵から生還した南米王者
ウルグアイのアエロトレン(Aero Trem)が、南米産馬として史上初めてサウジ・カップに出走します。どんな馬なのか知っている人はまだ少ないと思いますが、開催が近づくにつれてプロフィールが明かされていくことでしょう。ブラジル産まれのシャンハイボビー産駒、ウルグアイの2冠馬、GⅠ5勝馬、南米王者、ダート2000mで2分を切った馬などなど……。
しかし、アエロトレンを語る上でもっとも重要なのは、血統や競走成績ではありません。彼が生死をさまよった馬だということです。
話は2018年、アエロトレンが3歳の頃にさかのぼります。
アエロトレンはウルグアイの2000ギニーにあたるGⅠポージャ・デ・ポトリージョスと、3冠競走の第2戦目であるGⅠジョッキークルブを連勝し、3冠に王手をかけました。しかし、ウルグアイのダービーにあたる3冠目のGⅠナシオナルでは、序盤に引っかかったこと、距離が不向きだったことなどから、勝ち馬から14馬身も離された9着と大敗しました。
レース後、失意のアエロトレンをさらなる悲劇が襲います。疝痛を発症したのです。症状は重く、緊急手術が行なわれました。なんとか一命は取り留めたものの、今度は腸内感染症に罹ってしまいました。疝痛と感染症のダブルパンチにより、馬体重は150kg近くも減ってしまったそうです。点滴を受ける日々が続き、アエロトレンは明日生きられるかどうかも分からない死にかけの状態でした。
その後は、懸命な処置のおかげもあって無事に回復。調教に復帰できるようになりました。ダービーから約1年後の2019年10月には、まるで何事もなかったかのようにピンピンしてレースに復帰しました。
それからの活躍は冒頭で書いたとおりです。GⅠを勝ち、競馬の南米選手権であるGⅠラティーノアメリカーノを優勝して南米王者に輝き、サウジ・カップへの招待状を手に入れました。ほとんど骨と皮だけで死にかけていた馬が、南米競馬の歴史を作ったのです。
正直、アエロトレンがサウジ・カップで上位に来るのは難しいと思います。競走能力は出走馬の中でもっとも劣るだろうし、最下位に沈んでもまったく驚きではありません。しかし、死の淵から蘇った精神力と根性は、出走馬の中で間違いなく一番です。一発やってくれると信じています。地獄を見てきた者達は面構えが違うんです。
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木下 昂也(Koya Kinoshita)
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