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「あす」

明日子は、都会の片隅で一人暮らしをしていた。毎日同じ時間に目覚め、同じ道を歩き、同じオフィスで仕事をこなす。彼女の生活は機械のように規則的で、無感情だった。だが、誰もそのことを気にしない。明日子自身も、ただ無表情で日々を過ごしていた。

ある晩、帰宅途中に立ち寄った小さな書店で、彼女は一冊の古びた日記帳を見つけた。表紙には金色の文字で「明日」とだけ書かれている。その言葉に引き寄せられるように、彼女は日記帳を手に取った。

家に帰り、明日子は日記帳を開いたが、中は白紙だった。彼女はペンを握りしめ、何かを書こうとするが、言葉が出てこない。彼女の中にあるのは、空虚な毎日が積み重なるだけの、無機質な記憶だけだった。

その夜、明日子は夢を見た。夢の中で、彼女は広大な草原に立っていた。風が吹き抜け、遠くに明るい光が見える。彼女はその光に向かって歩き出すが、足が重く、一歩進むごとに足元が沈んでいくようだった。

目が覚めた明日子は、ベッドの中で夢の余韻に浸りながら、初めて自分が何かを求めていることに気づいた。だが、何を求めているのか、彼女にはまだ分からない。彼女は日記帳を再び手に取り、そこに一言だけ書き込んだ。

「明日」。

その文字を見つめながら、明日子は静かに、しかし確かに、自分の中で何かが変わり始めたことを感じた。明日は、今までと同じ「明日」ではないかもしれない。それが希望か、それともまた別の絶望か、彼女はまだ知らない。だが、その未知の感覚が、彼女の心に小さな波紋を広げていた。

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