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涌井慎です。
趣味は新聞各紙のコラムを
読むことです。

11月5日のコラムは
各地に「風」が吹いていました。

まず「岩手日報」。
明日は明日の風が吹く
(Tomorrow is another day)
から始まるこのコラムで、
原文には風が吹いていないことを
初めて知りました。

明日は別の日なんだということを
ただ明日は別の日だという英語と
風を吹かせる日本語は
とりあえず、これだけ見れば
前者が叙事的で後者は叙情的と
いえるのではないかしら。

この「明日は明日の風が吹く」は
「今日苦労しても、
明日はうまくいく」という意味だと
思われがちですが、実は違って、
「明日も新たな苦労がある。
今日思い悩んでも仕方がない」
という意味なんだということも
このコラムで知りました。

Tomorrow is another day
明日どうなることか、
わからないものということで
英国のEU離脱に伴う
アイルランド問題に
結びつけています。

そんなEU離脱問題に揺れ、
明日の行方のわからない
英国ロンドン生まれの音楽評論家、
ピーター・バラカンの訳した
ボブ・ディランの
「風に吹かれて」の一節を
引用しているのが「高知新聞」。

人が人と呼ばれるには
いくつの道を
歩かなければならないのだろう
その答えはね、友よ、
風の中に漂ってるんだ

ラグビーワールドカップで
多くの外国出身の選手と
「ワンチーム」を構成した
日本代表や、
「バックグラウンドが違う面々が
一つになることで
素晴らしい結果が得られると
証明できた」と黒人初の主将
コリシ選手が語る、
南アフリカ代表の話題のなかで
ディランの詩を引用しつつ、
最後、
「大切なのは人種や国籍に
かかわらず、人を人として
尊重する価値観でまとまること。
その模範的な答えを、
ラグビースタジアムを漂う
風の中に見つけた」と
括っています。

それが誰もが願う理想郷であると
私は信じたいけれど、
世の中、同じ願いを
抱く人間ばかりではないみたい。

「信濃毎日新聞」には
菌糸類に似た植物が猛毒を放出し、
人はガスマスクなしで生きられない
『風の谷のナウシカ』に出てくる
「腐海」が「実在」すると
書いていました。

どこに。

ウクライナ本土と
クリミア半島の間に
存在するらしい。

こちらは広い浅瀬で、
夏に強い悪臭を放つことから
「腐海」と
呼ばれるようになったそうですが、
言葉や宗教、民族の異なる
多様な社会をもつウクライナは
5年前にロシアがクリミアを編入。
いまだ紛争が絶えず、
こちらに吹く風は残念ながら
理想郷とは ほど遠い。

理想郷といえば、
再生可能エネルギーとして、
注目されているのが「風力発電」。
「新潟日報」によると、
新潟から日本海側を北上していくと
秋田に入る辺りから風景が一変し、
そこかしこで風力発電の風車が
回っているらしい。

秋田にとって風力発電は、
人口減に立ち向かう
重要な戦略の一つで、
秋田県は2010年に風力発電の
位置付けを「環境保全」から
「新たに創出する戦略産業」に変更。
再生可能エネルギーの
固定価格買取制度が始まると、
施設整備が急速に
拡大したんだそうです。

ただ、
大型の風車が出す
低周波の騒音による健康被害を
心配する声もあるほか、
風車の林立する姿は
新しい景色ではあるけれど、
本来の景観への影響も大きく、
いやはや、理想郷を創るのは難しい。

こっちを立てればこっちが立たず。

そういえば、
中国と本土に囲まれて、
板挟みになりながらも、
どっちも立てつつ、
理想の国家を築きあげていたのが
琉球王国ではなかったのかしら。

焼失した首里城は
沖縄のシンボルであり、
平和のシンボルでもあったと思う。
いつの日か、
首里城が復興した暁には、
世の中に穏やかな風が吹き、
明日の見えやすい理想郷になり、
その象徴として首里城が建つ、
というような、
そんな世界にならないもんかしら。

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