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スーパーボウルの結果を米国で一番遅く知るのは誰か
令和3年4月5日の日記
3月30日の「福井新聞」のコラム『越山若水』に「スーパーボウルの結果を米国で一番遅く知るのは誰か」という一風変わったゲームについて書かれていました。アメフトの優勝チームを極力耳にしないよう、参加者は情報から逃げる人になるんだそうです。仲間とは交流せず、ニュース番組は見ず、とにかく情報を入手しないようにするそうなんですが、スーパーボウルの人気というのは、すさまじいものらしく、アメリカ人の3分の1が試合を観戦するそうです。
このゲームほどではありませんが、日本国内でも「ワールドカップの日本戦の結果を俺が見るまでは頼むから誰も教えないでくれ」「M-1グランプリは録画してるから誰が優勝したかわからんようにTwitter遮断してるねん」というようなことをよく耳にします。最近ですと「シン・エヴァンゲリオン」のネタばれがそこかしこで炎上しております。
私は未だに「半沢直樹」の録画を繰り返し繰り返し飽きもせずに見るくらい、結末がわかっていようがドラマを楽しめるタイプなので、どうしてそこまで結末を知りたくないのかが正直わからない、というのが本音であるのですが、昔、とある女性がワールドカップの決勝戦を楽しみにしていたのに、その日に仕事が入ってしまい、私や私界隈の人間はその女性から「頼むから結果を知っても私の前では言わないでほしい」と執拗にお願いされたので、正直わからないとはいえ、その熱意は十分に伝わりましたから、そこまで言うならわざわざ伝えるような意地悪はしないですよ、と思っていたところ、仕事が終わった頃、我々の紳士協定を知らない無邪気な後輩が「いやー、ドイツ勝ちましたねー!」みたいなことを平然と言ってのけてしまったときの、その女性の荒れ狂いぶりはすごかったね。刺し殺すんじゃないかと思いました。露骨に不機嫌になっちゃうし、そうなってくると、人情としては無邪気な後輩の肩を持ちたくなりますよね。なにせ、本来私は結末を知りたくない人の気持ちがわからない側の人間ですのでね。
そんなことを思い出しつつ、いま、私は山崎豊子の傑作『白い巨塔』の2巻を読み進めており、あと70ページほどで読み終わるのですが、この本に限らず文庫版の小説って裏面にあらすじが書いてあるでしょう。2巻のあらすじを読んでみたら「現教授の東は、学会のボスから学外候補の推薦をうけ財前にぶつける。政界まがいの生臭い多数派工作のすえ、かろうじて勝利した財前に、国際学会から招聘状が届く。栄光に満ち多忙をきわめる日々のなかで財前は、同僚の第一内科助教授・里見脩二から相談された患者の早期噴門癌を発見し、見事に手術を成功させる。だが、財前がドイツに出発する日、その患者は呼吸困難に陥っていた。」って書いてあります。
先ほども書きましたが、私、いま「あと70ページ」くらいまで読み進めております。詳しく書くと全編403ページで、私は327ページ読んでおります。全体の80%以上読んでおります。しかし、8割方読み進めているのに、裏面のあらすじに書いてある「だが、財前がドイツに出発する日、その患者は呼吸困難に陥っていた。」の部分はまだ出てきていないのです。これについて、あのワールドカップでドイツが優勝したことを知ったとき、気狂いのようにキレまくった女性は、どのように考えるのでしょうか。やっぱり、あらすじが見えないようにブックカバーで包み込むんでしょうかね。
サッカーにしろ小説にしろ、結末至上主義が悪いことではないと思うんですが、それがいちばんの楽しみになってしまうと、一回目の楽しみを二回目以降は越えられない気がするんですよね。いや、楽しみ方が違うんでしょうけど。そうか、確かに楽しみ方が違うのか。「結末を知らずに見る」ことができるのは最初の一回だけなんですもんね。その何もない状態で見る、ということに賭けているというわけか。
それならそれでわかる気がしますけど、それを身の回りの人たちに強要して、そのことを知らない人が無邪気にバラしてしまったことについて、露骨に不機嫌になってしまうくらいなら、仕事なんかずる休みでもなんでもして休んでリアルタイムで見たらいいのに、って思ってしまうんですよね。それをできない程度の思い入れなら、紳士協定を知らない人に対してまで当たり散らすのは、いかがなものかしら。
という随分昔のことを思い出させるコラムだったのですが、その「スーパーボウルの結果を米国で一番遅く知るのは誰か」というゲームは、コラムによると、最短だと8秒、大半は数時間か長くて数日で結果がわかってしまい、脱落するそうです。報告された情報源はというと、ルームメイト、客室乗務員、友達との雑談、妻が叫んだなどなどいろいろで、「あちこちに罠があるのは、自分の意思だけでは避け難い伝染病の「感染」と似ている」そうです。
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