
サウダージ
突然語りだすけど
ポルノのサウダージの歌詞はあまりにもドラマティックすぎる。
場面がおそらく、恋人が別れたと思しき所からスタートするんだけど、別れる決断をした決め手を
「私は私とはぐれるわけにはいかないから」
と表現したのがまず天才。
「あなたの事は好きなんだけど、これ以上恋人関係を続ける事は自分を見失ってしまう。それは互いに良くないから別れる決意をした」
ということなんだろうけど、そんな複雑な状況と心理描写をこの一言で受け手に冒頭から想像させるのすごすぎんか。
そしてそこで
「いつかまた会いましょう その日までサヨナラ恋心よ」
とつなげるんだけど、この「恋心」というのがこの曲の中でずーっと出てくる。最初にサヨナラって言ってんのに最後まで出てくる。
つまり、恋心の対象である彼氏とは別れる事を決めて、別れの描写からスタートしているのに、ずーっと自分の中だけにくすぶり続ける「恋心」にどう向き合ってどう決着をつけるのかという葛藤がサウダージの歌詞の中では連綿と紡がれているのだ。バチクソにエモい。
…という総論を書いて一度終わりにしてから、
個人的には1番の歌詞の思い入れが強いので勝手に1番を解説していく
「嘘をつくぐらいなら
何も話してくれなくていい
あなたは去っていくの
それだけはわかっているから」
もうAメロの入りからしてもうアレよ。悲しいよ。
彼氏さん、いっそほんとの事言ってやれよ。美しく別れようなんてのは振る側の綺麗事だよ。
ここで主人公にマッハで感情移入。凄い入り。
続いて
「見つめ合った私は
可愛い女じゃなかったね
せめて最後は笑顔で
飾らせて」
ほらー!彼女さんもウソの笑顔作ってるじゃん。突き合わせんな彼氏!そんなヤジを飛ばしたくなる描写。
…そして一つの恋が終わり、ここから怒涛の「恋心」との内面の葛藤の幕開けとなる。
「涙が悲しみを溶かして
あふれるものだとしたら
その雫も もう一度
飲み干して しまいたい」
ここ!!!!
ここ1番辛い描写。
悲しみそのものの涙が溢れているのに、それすらも大事な恋の一部なのだからまた飲み干して自分に戻したいってなんだよそれ。涙の無限ループ。永久機関の誕生だ。
とても立ち直れそうにない。
「凛とした痛み胸に
留まり続ける限り
あなたを忘れずに
いられるでしょう」
痛みが留まり続けるってことは何もしなくても痛んで、楽な体勢も見つからない状態だから相当苦しい。
ちなみに「のたうち回る」という言葉があるけど、アレは少しでも痛みを逃がせるポジショニングを探すのだけど、それが見つからなくて体を七転八倒させている状態を表した言葉らしい。怖い。
そんなわけで、苦しい状態だけど、それすらも元恋人を忘れずにいられるために受け入れますよと。ここまで心の奥に入り込んでしまうと、他人にはもうどうにもしてあげられない。
そしてサビに入って
「許してね 恋心よ
甘い夢は 波にさらわれたの
いつかまた 会いましょう
その日まで サヨナラ恋心よ」
そんな辛い思いをしてる中、満を持して恋心が出てくる。
いや冒頭でサヨナラって言ってなかったっけ?いいえいるんです。だって元を正せばその痛みの元凶だもの。
自分が手放せなかったから痛みが出ているんだけど、しかし同時にそこを拠り所にしてしまっている。悪者にしつつ、それを頼る自分の身勝手さ、弱さ。そこを認めて「許してね」と許しを請うてる。
そして自分からすんなりサヨナラできなかったから、今度はちゃんと理由を話すんですね。
「甘い夢は波にさらわれたの」と。
これはおそらく、別れた場所が浜辺なんでしょうね。
そして、恋心とサヨナラしなくちゃいけなくなったのは彼氏のせいでも自分のせいでもなくて「波にさらわれた」のだと。
誰のせいでもない、誰も責められないけどこうなってしまったから、だからサヨナラしましょうと。丁寧な説明をしてお互いに納得しましょうと提案する場面で1番が終わるんですね。
まぁ、主人公は自分の恋心とほんとはサヨナラしたくない気持ちが見え見えなので2番でまーた角度を変えて出てくるんですけどね恋心。
そんな行ったり戻ったりしながら、恋心をどう昇華させて、どう自分の心に決着をつけていくのかという人の姿がサウダージという曲には凝縮されている。
ドラマなら何話もかける内容をわずか数分で駆け抜ける。
何年経っても何回聴いても聴き手はその内容の濃さに圧倒させられる。
また時間があったら2番の歌詞についても書いていきたい。
とにかく