チェット・ホルムグレンはバスケットボールに革命を起こせるか
みなさんこんにちは。今日もなんてことない記事を見てくださりありがとうございます。オールスターウィークエンドを楽しみながら記事を書いているのですが、コール・アンソニーのダンクコンテストの結果が振るわず、少し落ち込んでいます。それでも今回紹介するプレイヤーを推しチームがドラフトされる未来を想像するとその憂鬱さも少し和らぎそうです。
チェット・ホルムグレンといえば、若手好きな方はピンとくるでしょう。約7ftとは思えないスキルに広いウィングスパンを有し、大学バスケ界を席巻している1人です。体重の軽さと身体能力の低さから「素材型」さらには「ギャンブル」いう声が聞かれることも事実です。果たして本当にそうなのか、ゴンザガの試合を何試合か見た所感を踏まえながらお伝えできれば、と思います。因みにU19の大会を観た時から、僕は彼の虜になっています。そのため、熱量が強すぎるかもしれませんが、他の選手を不当に卑下したり、過大評価したりしないようにお伝えしていきますので、ご安心ください。
プロフィール
【名前】チェット・ホルムグレン
【生年月日】2002年5月1日
【身長・体重】7フィート0インチ(約213cm)、194ポンド(約88kg)
【ESPNランキング】1位
【ポジション】センター
【所属大学・学年】ゴンザガ大・1年
【成績(2/19時点)】26.2MPG、14.6PPG、9.6RPG、2.0APG、0.6SPG、3.3BPG、2.0TO、63.2FG%、46.2 3P%、75.0FT%
7ftとは思えないシュートレンジ、ハンドリングスキルと長いウィングスパン(7ft6in=約229cm)から繰り出されるブロックショットで高校時代から他を圧倒してきたホルムグレン。ESPN、ライバルズ、247スポーツのリクルートランキング主要サイトではどれも1位で、鳴り物入りでゴンザガ大に入学しています。この説明だけだと「最近流行りのストレッチビッグみたいだけど、細いしNBAでやっていけるの?」という声もあるかもしれません。その疑問の解決につながるよう、実際に彼のプレーから魅力・伸び代をご紹介していきます。
魅力
オフェンス
FG%、3PFG%がそれぞれ60%台、40%台とシュートの決定率が非常に高いことが数字からも分かると思います。実際の試合でもインサイド・ミドルレンジ・3Pどこからでもオフェンスを展開することができます。ハンドリングスキルも豊富でビハインドザバックで相手をかわす姿もよく見る光景になりました。更には相手ディフェンスとの駆け引きがうまく、相手に止められてから次のムーブを選択するのではなく、先手を打って動き、非常に滑らかなフェイドアウェイジャンパーやフックショットを披露します。無理矢理打開する姿はあまり見られません。
ローポストでは逆サイドのウィングまで見渡せる視野で、簡単に相手ディフェンスを掻き乱すパスを出してしまいます。アシスト数は少ないですが、チームオフェンスを円滑に回すパス能力は非常に貴重です。また、トップでボールをレシーブした時にもカレッジ屈指のオフェンスビッグマンであるドリュー・ティミーとのハイローを最も簡単に完成させ、非常に効率の良いゴンザガのオフェンスプレーの1つになっています。この時の彼の高い打点から繰り出されるオーバーハンドパスは、ほぼ止めることが不可能な技に見えます。勿論、ティミーのポジションどりの微妙な角度の違いにも問題なくパスできているからこそHCのマーク・ヒューもセットオフェンスとして組み込めていることを忘れてはいけません。
3Pやジャンプショットの精度が高いにも関わらず、それらのスキルに依存することなくビッグマンらしいプレーができるのも彼の魅力です。ポストプレーについてはパワーで押し切ることはあまりありませんが、長いストライドを生かしたフットワークやフィジカルコンタクトを嫌わない姿勢で、フィニッシュさせる力を持っています。個人的にはコンタクトを恐れないでゴールに立ち向かう姿勢はインサイドプレイヤーとして大成するには必須な条件であると感じているので、非常に好感が持てます。(実際ダーク・ノビツキー(元ダラスマーベリックス)も初めてスパーズに勝てたシリーズではティム・ダンカンに果敢に勝負を仕掛けていましたし)
身体能力は決して高くはないホルムグレンですが、速攻で置いてかれない脚力は持っています。リバウンドからボールを運ぶ姿も珍しくありません。彼のIQを考えれば、ボールキャリーをさせるとどんなプレーが待っているかワクワクが止まりません。
多彩なスキルを有しながらも、ビッグマンとしての基礎もお墨付きのホルムグレン。NBAでどのプレーで存在感を示すか、それを考えるのも1つの楽しみです。
ディフェンス
オフェンスで随分長くなってしまいましたが、彼の売りはディフェンスです。もっと文が長くなるのかよ!と思うかもしれませんが、簡潔に伝える努力をしますのでお許しください。
彼は現在カレッジの最優秀ディフェンシブプレイヤーの注目すべき候補15人に選出されています。(詳細こちら)彼の他にフレッシュマンで選出されたのはタイリース・ハンター(アイオワステイト)、ケネディ・チャンドラー(テネシー)の身で、2人ともガードの選手です。つまり、ホルムグレンは多くのファンが今年の1年生ビッグマンの中で最高のディフェンダーという認識をしているといっても過言ではありません。(これで終わらせたいのですが、もう少し詳細を書かせてください。申し訳ありません泣)
平均3.3ブロックを残している背景には彼のディフェンスポジションの優秀さが関係しています。大学でショットブロックが得意なプレイヤーの中には類稀な身体能力でゴールまで到達してしまう者も多いのですが、彼の場合はボールと自信のマークマンを細かく把握し、ポジションを微修正しています。オフボールで自分のマークマンの足が止まっている時でも、ボールマンのドリブルの移動で細かく位置どりを変えるほどです。この細やかさでリムアンカーとしても、対人ディフェンダーとしても対応できることができています。このポジショニングにより、アウトサイドからのドライブにも付いていき、一定のプレッシャーをかけられています。
ショットブロッカーにありがちなのが、平均リバウンド数が少なくなるということです。しかし彼の場合は、ほぼ2桁リバウンドを残しています。対人ディフェンスでもブロックが難しいと判断した時には打たせにくい体勢にし、その後のリバウンドをもぎ取っています。また、ボックスアウトも多くの場合相手をしっかりボディチェックをすることで動作を遅くさせています。高い跳躍力がなくても、相手を飛ばせない・飛ばせるタイミングを遅らせることで難なくリバウンドを取ることができるのも彼の魅力でしょう。
広い視野と献身性を生かしたディフェンスはNBAでも期待が大いに持てると思います。
伸び代
オフェンス
何度も挙げていますが、彼の華奢なボディシェイプの改善はオフェンス・ディフェンス両面にさらなる好影響をもたらすことが考えられます。
ポストプレーやドライブでは相手に押し負けてしまった場合、ドリブルを止めてしまうことがあります。多くの場合は彼の身長とパス能力で、オフェンスをサイドデザインできているのですが、ショットクロックが24秒になり、ディフェンスの寄りが早くなるNBAではターンオーバーになる可能性があります。ビルドアップやリトリートの種類を増やすことで、リスク回避につながることが期待できます。
パワー不足はパスにも影響が及ぶ場面が見られます。ドリブルからのパスやオーバーハンドパスのような大きめの予備動作があるパスはスピードがあるのですが、ノードリブルのチェストパスは、スピードや軽い球質になることがよくあります。特に、ディフェンスリバウンドから味方へのパスで多い印象のため、マーカス・スマート(ボストン・セルティックス)やパトリック・ビバリー(ミネソタ・ティンバーウルブズ)のような曲者ディフェンダーにはスティールからのカウンターを狙われるリスクがあります。現在の体重でもうまくパスに力が乗るような体の使い方を習得するとより安心してプレーを観られるかもしれません。
ディフェンス
パワー不足はディフェンスの方が顕著に表れています。シーズン序盤のテキサス大戦では押し込まれ、なすすべなく沈黙してしまいました。増量が難しい場合は、クリフォード・ロビンソン(ポートランド・トレイルブレイザーズ他)のような引くディフェンスも効果的かもしれません。(まあこれは経験と共に得られるものだと思いますが)
プレー時間はこれまで紹介したドラ1候補の中では最小となっています。チーム層の厚さによるものも理由だとは思いますが、身体能力の面からもスタミナは未知数です。オフェンスにも影響すると思いますが、ゴール下での肉弾戦を制し切るには、スタミナも必要な要素となってくるでしょう。
パワー不足を補うのを増量にするか・新たな技術の習得にするかで、ディフェンダーとしてのタイプが変わってくるでしょう。
僕がホルムグレンを革命につながると思う理由
何故こんなに僕が彼を推すかについて書かせてください。プレーに魅了された以外にも、彼の大成により、今後のアメリカのビッグマン育成に大きな意味を持つと考えているからです。現在のNBAではスキルフルなビッグマンは数多くいますが、能動的な得点能力と周りを見る力を両方持っているのはニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)とジョエル・エンビード(フィラデルフィア・76ers)程度で、アメリカンビッグマンは遅れを撮っている印象があります。(強いて言えばバム・アデバヨやジャレン・ジャクソン・ジュニアくらいでしょうか)。勿論偶然外国出身ビッグマンが大成してるだけかもしれません。しかし、ホルムグレンがNBAで両者のような活躍を残せば、ビッグマン育成のトレンドになることは容易に想像できます。仮に彼が支配的でないプレイヤーになったら引き続き現在のトレンドのスモールセンターや「使われる」側のビッグマン育成が続くかもしれません。
バスケット大国アメリカの育成を左右するのがホルムグレンだと思っていることが、僕が彼を楽しみに思う理由の一つです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。愛が強すぎて読みにくい部分があったら申し訳ありません。この記事で言いたいことは、彼は現時点でネクストユニコーンであること、ロマン枠ではなく、スキルもしっかり兼ね備えていることからロールプレイヤーとしても活躍の道があること、フィジカルが弱くても逃げることはない、ということです。細くてもパウ・ガソル(元ロサンゼルス・レイカーズ他)は新人王、アンドレイ・キリレンコ(元ユタ・ジャズ他)やマーカスキャンビー(元デンバー・ナゲッツ他)は名ディフェンダーとしてプレーしましたし。
ネクストユニコーン枠のプレイヤーはクリスタプス・ポルジンギス(ワシントン・ウィザーズ)がユニコーンとして羽を開いた姿を見せてしまった故に、それ以上の驚きを残す必要があります。ホルムグレンはユニコーンとして大きく羽ばたくことも期待できるでしょう。仮にユニコーンでなくとも、持っているスキルにより、名馬として大地を駆け抜けることでしょう。個人的には彼を1位で指名しない理由はないかな、と思います。
【予想順位】1~3位
【プレイヤータイプMAX】(OFF )3Pも打てるパウ・ガソル、(DF)マーカスキャンビーのハイブリッド
【プレイヤータイプmin】ディフェンスができるキース・ヴァン・ホーン
【フィットチーム】ORL、DET、OKC、HOU、SAS、WAS
以上になります。今日も長々と書いてしまい申し訳ありません。けれど、それだけ魅力的なプレイヤーだとわかっていただければ嬉しいです。
次回からは注目プレイヤーだったり、NBAまではわからないけれど楽しみなプレイヤーだったりをある程度まとめて紹介していきたいと思います。
それでは、また。